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群馬発の日系ブラジル人アイドルグループ、インドネシア音楽ファンコット…アイドルはワールドミュージックの夢を見るか?


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※イメージ画像:『ティッケー大作戦!
~YAVAY』
hy4_4yh/The Label

 今年の4月1日は、ほぼインターネット上にのみ残った文化と言えるエイプリルフールの騒ぎを横目に、Saori@destinyのことを思い出していた。彼女が最後のライヴをしたのは2012年4月1日。それ以降、公式なアナウンスが何もないまま、彼女は私たちの前から姿を消した。春にして君を想う。フリドリック・トール・フリドリクソンの映画、あるいは小沢健二の楽曲のタイトルのような気分だ。
 
 インターネット上では、群馬発の日系ブラジル人によるアイドルグループのリンダIII世が話題を呼んでいる。「群馬発の日系ブラジル人によるアイドルグループ」という文字列の時点でほぼ反則に近いインパクトがあるし、平均年齢13.5歳の彼女たちはルックスにも恵まれている。彼女たちの「未来世紀eZ zoo」のビデオ・クリップを見たときには、うまくバイレファンキやサンバといったブラジル音楽の要素を配している楽曲にも感心した。



 そして思い出す。日本で初めてバイレファンキを取り入れたアイドルはSaori@destinyだったことを。彼女のアルバム「WORLD WILD 2010」を、私は2010年の年間ベスト10の1位としたが(http://www.menscyzo.com/2010/12/post_2135.html)、そのタイトル曲「WORLD WILD 2010」こそバイレファンキを導入した楽曲だった。

 アルバム「WORLD WILD 2010」は彼女の代表曲となる「I can't」も収録した名盤だったが、もう1曲忘れがたい楽曲がある。「Lonely Lonely Lonely(FUNKOT.JP remix)」だ。同じアルバムに収録されているミディアム・ナンバー「Lonely Lonely Lonely」を、インドネシアのダンスミュージックであるファンキーコタ、通称ファンコットの仕様でリミックスして、まったく別の楽曲のように変貌させていた。

 そのリミックスを「DJ JET BARONG aka 政所」名義で手掛けていた人物こそ高野政所だ。渋谷のクラブ・ACID PANDA CAFEの店主にして、自らインドネシアにも赴いて現地のファンコット・シーンを吸収し、日本にファンコットを広めるべく精力的な活動を展開している。2012年にリリースされた9nineの「イーアル!キョンシー feat.好好!キョンシーガール / Brave」はオリコンの週間ランキングで11位を記録したが、キョンシーとファンコットをいきなり融合させた「イーアル!キョンシー feat.好好!キョンシーガール」の編曲も高野政所。アンダーグラウンドからメインストリームへと、日本のファンコットを押し上げるために奮闘してきたのが彼だった。



 さらに高野政所が「高野政所 a.k.a. DJ JET BARON」名義で全曲のアレンジャー、トラッメイカーを務めているのがhy4_4yh(ハイパーヨーヨ)の「ティッケー大作戦!~YAVAY / HYPER TICKEEE QUEENの歌」だ。hy4_4yhとなると、どうしても2008年の「ミミララ未来」をフェイバリットに挙げてしまう懐古厨気味の私も思わず購入した。全曲がファンコットだというのは尋常ではない酔狂ぶりだ。たしかにhy4_4yhにしかできない気もする。

 3曲ともプロデューサーの江崎マサルの作詞作曲で、「ティッケー大作戦!~YAVAY」は「JET BARON」という単語も出てくる明快なファンコット・ソングにして、サウンドもファンコット。適度なオリエンタル風味もまぶされたサウンドに仕上げられている。そして全曲、下から強火で炙られているかのような感覚でテンションが上がる。



 さらに2枚組の「ハイパー・デラックス・エディション」では、前述の3曲収録のDISC 1に加えて、なんと10曲も収録したDISC 2がセットになっている。こちらの「魔改造」と題したリミックスも高野政所の手によるもので、もはやファンコット漬け。なかでも「MUSIC MASTER 魔改造ver.」は、hy4_4yhの甘いヴォーカルとファンコットの容赦ないアッパーさが同居したトラックだ。このシングルはオリコンの週間ランキングでは68位、デイリーランキングでは22位を記録した。

 ひとつ寂しいことは、これだけ真面目にファンコットに取り組んだ作品であるにも関わらず、ワールドミュージック方面では話題にならないということだ。ワールドミュージックのリスナーは高齢化が進んでいるように見えて、実際には「グローカルビーツ」と呼ばれる世界各地から生み出されるダンスミージックを聴いている若い人々も多い。ただ、そうした新旧のワールドミュージックのリスナーの間にはどうしても距離があるのが現実だ。そうした状況の中でファンコットのため奮戦してきた高野政所や、13トラックもファンコットを叩きつけてきたhy4_4yhのイカれ具合が、識者に一目置かれても良いのではないか。ワールドミュージックや民俗音楽の原稿も執筆する音楽評論家として、そんな寂しさを感じつつこの原稿を書いている。

 私は大学生だった頃、インドネシアのジャカルタ、ジョグジャカルタ、バリ島へ貧乏旅行をしたことがある。ジョグジャカルタで知り合った現地の大学生に、1990年のサンディーの大傑作アルバム「MERCY」に収録されていた「Sukiyaki」を聴かせてみた。もちろん原曲は坂本九の「上を向いて歩こう」だが、サンディーの「Sukiyaki」はインドネシアの大衆音楽であるダンドゥットによるアレンジだった。それを聴いた現地の大学生が「なんで日本人がダンドゥットで歌うんだ?」とやや怪訝な顔で言ったことを思い出す。きっと外国人が演歌を歌っているのを聴いた日本人のような感覚だったのだろう、と思う。

 そのダンドゥットのリミックスから生まれたとされるファンコットがダサいと言われようが、アイドルポップスが低俗なものとみなされようが、それに対して正当な評価を与えるのが批評の仕事ではないか……とクソ真面目に書きつつ、ファンコットの聴きすぎでもはや脳がトロトロになってきた。13トラックだもの。今夜は夢の中でもファンコットが鳴っていそうだ。

宗像明将
1972年生まれ。音楽評論家として、日本のロックやポップス、英米のポップス、ワールドミュージックを中心に執筆。その一方、2002年からソニンのヲタに。彼女の歌手活動停止後は、魂の救済を求めてPerfumeとtoutouのヲタになり地下へ。現在は地下から地上までのアイドル・シーンを見守る。http://www.outdex.net/diary/

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『ティッケー大作戦!~YAVAY』


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