【アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~ 第37回】

なんと足掛け10年分! Negiccoが新潟から届けた名曲集『Negicco 2003~2012 -BEST-』

negicco0229.jpg※イメージ画像:『Negicco 2003~2012 -BEST-』/Negicco/T-Palette Records

 新潟のアイドルであるNegiccoのベスト盤『Negicco 2003~2012 -BEST-』は、タイトルの時点で何かがおかしい。そう、足掛け10年にもわたる音源集なのだ。これだけ長期間活動するアイドルはそうはいないし、普通は嫌でも徐々にアーティスト寄りになってしまうものだが、Negiccoは異例の「現役感」を醸し出しているユニットだ。「アイドル」ながら普通の「アイドル」とはこの段階ですでに次元が異なっている。

 私が2004年に全国流通盤のシングル「恋するねぎっ娘」を買ったのはなぜだろうとブログを読み返してみたところ、当時『ポップジャム』(NHK)に出演したのを見たためだった。それから2009年に「圧倒的なスタイル」を聴いてミニ・アルバム『アノソラヘ』を新潟に注文して買うまで、5年も間が空いている。この連載では2010年の年間ベストテン(https://www.menscyzo.com/2010/12/post_2135.html)で「スウィート・ソウル・ネギィー」を次点としたが、それは「圧倒的なスタイル」の完成度の高さがあまりにも強烈だったためでもあった。そしてこの『Negicco 2003~2012 -BEST-』にも「圧倒的なスタイル」は収録されている。

 

 
 ベスト盤なので、聴いていなかった期間についての不明を恥じるにはもってこいだ。プロデューサーでもあるconnieが作詞作曲した「圧倒的なスタイル」は、ソウルフルな昂揚感をもたらすコード進行。ブラスの音色も心地良い。「Party On the PLANET」や「スウィート・ソウル・ネギィー」がディスコ・チューンかと思えば、「ネギさま!Bravo☆」はブラジリアン・テイストだ。「アノソラヘ」や「My Beautiful Life」は、テクノポップなサウンドと楽曲の緊張感のブレンドが絶妙。「Summer Breeze」はNegicco流のシティ・ポップスだ。そして最後に収録されたデビュー曲「恋するねぎっ娘」は、能天気な楽曲だというのに、今となっては胸に迫るものがある。このCDで聴くと、ドキュメンタリーのエンディングのようなカタルシスをもたらすのだ。

 そして自分たちが「やわ肌ネギ」キャンペーンのために結成されたという出自を隠さないアートワークも洗練されている。2月26日のタワーレコード新宿店でのインストア・ライヴでは、白と緑の服装のファンと一緒に撮影をする光景もあった。Negiccoとの握手後に、私はジャンケンを挑んで無事に全員のサイン入りのオリジナルエコバックを手に入れた。正露丸を飲んだとMCで平然と言うNegiccoは、なんとも気取りのないキャラクターだ。

 『Negicco 2003~2012 -BEST-』は、この連載でも何度か言及してきたタワーレコードのT-Palette Recordsから発売されたCDである。辛酸を舐めてきたNegiccoが、嶺脇育夫社長がファンであったためにこうして全国流通盤をリリースできるというのはとても幸運な話だ。ただ、やはりここまで活動を続けてきたことをまず讃えたいし、ベタな「苦労人」的なエピソードに埋もれることなく良質な楽曲を抱えるユニットとしてマーケットに受容されることを願いたい。

 なお、Negiccoは3月21日にhy4_4yh(ハイパーヨーヨ)とのスプリット・シングルをリリース予定だが、この2組が組む状況は数年前には予想すらできなかった。しかもNegiccoがジャケットのものは「TOWER RECORDS盤」、hy4_4yhがジャケットのものは「ローソン・HMV独占盤」として発売されるわけで、CDショップがそれぞれにアイドルを抱えているというわけだ。CD不況に強い商品としてのアイドル、というのは現状において見過ごせないポイントだろう。
(文=宗像明将)

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