【アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~ 第1回】

号泣アイドル降臨! ももいろクローバー「未来へススメ!」

momokuro_mirai.jpg「未来へススメ!」Happy Music Records

 地上だの地下だの現場だの在宅だのと、とかくアイヲタ(=アイドルオタク)の世界は騒がしい。今回から始まるこの連載は、元々はロックやワールドミュージックの音楽評論家であるものの、うっかりアイドルにハマったために地下へ堕ちた筆者が、そうしたアイドルの現場の雰囲気をフィードバックしつつ、新しい可能性を感じさせてくれるアイドルの新譜を、音楽面の分析を含めてご紹介していくものにしようと考えている。私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて……。

 初回は、今週のオリコンウィークリーチャートで新曲が11位に食い込んだ「ももいろクローバー」。

 ももいろクローバーというグループをめぐって何かが起きている。そんな気配を感じたのは夏も盛りの頃だった。私の周囲で彼女たちを追いかけるヲタの様子がどんどんおかしくなっていき、そして彼らの表情や言葉は異様な輝きを放ちはじめた。その頃、ももいろクローバーはワゴン車で全国のヤマダ電機を回るというハードコアなツアーの真っ最中。かすかな夏の狂気を感じつつ、8月5日に発売されたももいろクローバーのデビュー・シングル「ももいろパンチ」を買うことになった。

 「週末ヒロイン」と銘打たれたももいろクローバーは、13歳から16歳までの6人組。学校が休みの週末に集中的にイベント活動を行うため、「週末ヒロイン」なのである。2008年春に結成され、メンバーの脱退、加入、卒業、加入を繰り返しながら現在に至る。愛称は「ももクロちゃん」。

 そんなももクロちゃんのセカンド・シングル「未来へススメ!」が11月11日に発売され、オリコンのデイリーランキングでは6位を記録した。初回限定盤A、初回限定盤B、通常盤と3種類もあるのだが、通常盤には気鋭のトラックメイカー・tofubeatsによる「ももいろパンチ」のリミックスを収録するなど、時代の空気への目配せもぬかりない。

 ももいろクローバーは和服をアレンジした衣裳を着用しており、サウンドにも和風のテイストが効いている。平野綾や中川翔子への楽曲提供で知られる黒須克彦が作編曲を担当した「未来へススメ!」でも、和風のサウンドがイントロなど随所で鳴る。とはいえ、そうした部分の音楽的な比重はそれほど高くなく、一種のサウンド・アイコンのようだ。

 アイドルを語るとき、モーニング娘。やPerfumeに顕著なように、「物語性」が強調されることがある。しかし、まだ新しい存在であるももいろクローバーはやや異なり、ブレイクを彼女たちとともに現在進行形で体験できる昂揚感に満ちている。満ち溢れている。だから、とにかく前向きな歌詞の「未来へススメ!」は、現在のももいろクローバーに実にふさわしい。「強い智(きずな)」「愛する仁(こころ)」「知る礼(よろこび)」「運命の孝(いたずら)」など、文字面の強度も半端ない。

 さて、「エロ賢いがカッコイイ」と銘打つメンズサイゾーなので、当然このコーナーにも編集者から「エロを絡めてほしい」という注文が来ている。しかし、youtube公式チャンネル「スタデジ.ch」において公開された映像「ももいろクローバー『未来へススメ!』発売ドキュメンタリー」の冒頭、高城れにの号泣っぷりを見たら、そんなことはもうどうでもよくなってしまうだろう。今にも自我が壊れてしまいそうな号泣。今、この一瞬に弾け散る感情。誰かが彼女を受け止めなければ……と感じさせる、なんとも危うい姿がそこにはある。長い物語を持たないももいろクローバーは、刹那だけが持つ輝きをこれでもかと放つ。エロなんかよりもこっちのほうがはるかに魅力的だよ!

 なお、彼女たちと同じスターダストプロモーションにはクリィミー・パフェ、momonakiなど高いポテンシャルを感じさせるアイドルが所属しているので、今後ご紹介していきたい。

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