セックス体験談|セフレと恋人の境目<第3夜>

隔たりセックスコラム「セフレと恋人の境目<第3夜>」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。

 

セックス体験談|セフレと恋人の境目<第3夜>の画像1
※イメージ画像:Getty Imagesより

『セフレと恋人の境目 〜第1夜〜』
『セフレと恋人の境目 〜第2夜〜』

 挿入よりもキスが好きだ。

 キスをしていると、もう挿入なんてしなくていいと思ってしまう。なんなら、たくさんキスをしたいという理由で、セックスがしたいとさえ思うこともある。

 もちろん、挿入も好きだ。けれど、挿入よりも、キスをしている時の方が相手と繋がっているという感覚が強い。挿入が肉体的に繋がることなのであれば、キスは精神的に繋がっているということになるのだろうか。

 舌に七海の柔らかい舌が優しく絡みつく。優しくねっとりと舌を絡ませるのは、とろけそうなほど気持ちいい。僕は七海とのキスも好きだ。七海と永遠にこのキスを繰り返していたい。

 挿入よりも、ずっとキスをしたいと思ってしまう自分。もしかしたら僕は、七海との精神的な繋がりを求めているかもしれない。

 とはいえ、キスを続ければ続けるほど興奮は高まり、七海の体を触りたいという欲望は膨らんでいく。

 キスをしながら七海の頬に軽く触れる。そのまま僕の方へ引き寄せるようにすると、キスはさらに深くなっていった。

 耳にかかった髪を一度撫で、軽く耳たぶをつまむ。少しひんやりとしている。そのままもみあげを包むようにしながら手を首筋へとおろし、当たるか当たらないか程度の強さでなぞりながら鎖骨を越え、服の上を登ると、柔らかな膨らみにたどり着いた。

 うっすらと目を開く。七海は目を瞑りながら、舌の交わる快楽を味わっているような表情をしていた。

 昨日の18時に、僕と七海は初めて出会った。マッチングアプリの自己紹介文に「ヤリモクは本当に無理」と書いていた七海は、もう僕と二度目のセックスを始めている。

 

「んっ、んっ、んっ」


 服の上から胸を触ると、七海は断片的に喘ぎ声をあげた。体を少しくねらせたが、口は離さず、キスを止めようとはしない。むしろ、舌の動きがより貪欲になっていった。

 七海の舌の動きが淫らになると、それにつられて、僕の舌の動きも激しくなる。激しくなった舌の動きはなかなか止めることはできない。それは、太ってしまうとわかっているのに、甘いものを食べる手が止まらない時の感覚に似ている。

 唯一違うことは、罪悪感だ。甘いものを食べ過ぎた時は、食べ終わった後に体に悪いことをしたという罪悪感に襲われる。だが、キスには罪悪感がない。

 もう自分ではコントロールできなくなった舌の動き。ただ欲求に身をまかせて舌を絡ませる。

 セックスを始める前は、普通の何気ない会話をしていた。少し前までエロとはかけ離れていた自分が、キスをしていくことによって、だんだんと別人に変わっていってしまっているような気がする。

 そんな、セックスに溺れ始めていく瞬間。この瞬間がたまらなく好きだ。

 服の上から胸を揉むと、柔らかいものをつかんだ感触に包まれた。ブラジャーの硬い感触ではなかった。

 七海の胸は、寝ていると下にだらんと垂れてしまうほど、柔らかい。


「もしかして、ノーブラ?」


 僕は重ねていた唇を離す。その動きの中で偶然指先が乳首にあたり、七海がびくんと体を震わせた。しかし、七海は僕の問いかけに反応しない。シャツに浮かび上がった乳首を、今度は意図的につまむ。


「ああぁん」


 七海は体を引くようにして乳首を触る手から逃れたが、すぐに自分で胸を突き出してきた。触って欲しいという素直な欲求が伝わってくる。その動きに、並ならぬエロさを感じた。

 昨日のセックスは、とても優しかった。それは料理の行程をレシピに順ってひとつひとつこなしていくように、教科書にそったキスや前戯を経て挿入するという、とても穏やかなセックスだった。

 しかし、今日の七海の反応は違った。自分の好きな食材を使い、好きな調味料をかけたいだけかけ、レシピを無視してオリジナル料理を作るように、自分のしたいキスを求め、触って欲しいと体で主張をしてきた。

 おしゃれで、ベレー帽をかぶっていて、可愛らしい照れ笑いをする七海。「ヤリモクは本当に無理」と書いていた七海。そのイメージとはかけ離れた姿を今、見せ始めていた。

 昨日のセックスが穏やかだったからこそ、その豹変ぶりに驚いてしまう。

 服の上からでも分かる柔らかい胸を揉んでいると、七海は手を下にのばし、下着の上からモノを撫でた。すると、すぐに手を忍び込ませ、慣れた手つきでモノを取り出す。


「もうおっきくなってるね」


 七海は自分の元へ引っ張るようにモノを中指と薬指の間で挟み、そして回転を加えながら扱き始めた。その動きは、朝に七海が見せた舌の動きに似ていた。モノはどんどん硬くなっていく。

 ベッドに寝転がりながら、僕らは向き合うようにしてお互いの体を弄っている。目がだんだんと暗闇に慣れ、ぼんやりとだが七海の表情が見えた。何かを欲しがるように、目の焦点は僕の唇へと集まっていた。

 見つめている時とは違う、標的を定めたようなその顔。昨日のただ透き通っていたのとは違う、鋭い瞳。

 なんだか食べられてしまいそうだ、と直感的に思った。先ほどまでは、僕が七海のことを食べてたいと思っていたのに。気づいたら七海のペースに飲み込まれている。

 その直感は的中し、七海は大きく口を開き、食べるように僕にキスをした。唇だけではなく、体全体を舐めるようにして、舌を大胆に動かしていく。その動きに、僕はただ圧倒されてしまった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」


 檻から解放された動物のような七海の吐息。ずっと抑えられていたものが爆発したみたいだった。

 昨日は性欲を抑えていたのだろうか。

 本当は昨日も、今みたいに、自分から求めたりしたかったのだろうか。

 「ヤリモクは本当に無理」と書いていた七海。

 もし七海の中に、性欲を解放させて自分から求めてしまったら「ヤリマン」と思われてしまうのではないか、という考えがあったとしたら、昨日の七海の行動は納得がいく。ヤリモクが嫌いならば、自分がヤリモクと似た響きの「ヤリマン」と思われるのは嫌なはずだ。

 自分から求めたい。でもヤリモクの人たちと一緒にしないで欲しい。そんな葛藤が、彼女の性欲に制限をかけていたのかもしれない。

 僕は初め「ヤリモクは本当に無理」という文章を見た時、セックスが苦手な子なのかなと想像していた。嫌いではないかもしれないが、少なくとも好きということはないだろう。好きではないから誰かの性の対象になるのが嫌なのではないか、と思っていた。

 しかし、それは間違っていた。ちゃんと自分の中に性欲が存在しているからこそ、七海はそれを誰かに利用されるのが嫌だったのだろう。

 そんな七海が今、自分の性欲を解放し始めている。

 いったい何が、彼女の心を溶かしたのだろうか?

 僕は胸を触ることをやめ、ただ七海の攻撃を受け入れた。僕が力を抜いたのと同じタイミングで、七海は僕の上に覆いかぶさった。そして食べるようにキスをして、引き寄せるようにモノをしごき続ける。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 キスをしながら漏れる吐息。その音が卑猥ながらも心地の良いテンポで響き、僕の脳内を刺激する。なんだか僕も壊れてしまいそうだ。

 七海は唇を離し、自分の手でしごいているモノをじっと見つめた。

 何を考えているのだろう。見てるだけならもっとキスをしてほしい。そう思ってしまうが、すでに受け身状態になっている僕は何も言えない。


「舐めて…いい?」


 七海は僕の方へ向き、軽く微笑んだ。朝に「私が舐めたいの」と言った表情と同じように見えたが、僕にはほんの一瞬だけ、人を喰らってしまいそうな長髪の魔女の姿にも見えた。七海はショートカットなのに。

 断ることなんて出来るはずがない。今の僕が出来るのは、ただ身を委ねることだ。

 何も言わなかったことを肯定と捉えたのか、七海は体を起こし、そして移動はさせずに、起き上がった勢いそのままにモノを咥え始める。首から伸びている背骨が、背中に浮かび上がっていた。

 僕の横に座り、体を斜め前に出すようにしているので、七海のしゃぶっている横顔が見えた。ショートカットの髪が、カーテンのように揺れ、しゃぶっている姿を隠す。七海が手を使わずに顔を上下させてモノを咥えているシルエットは、獣が食事しているようにも見えた。

 すると、七海が左手で髪をかきあげ、耳にかけた。そのおかげで、横顔とフェラをしている姿がはっきりと確認できた。昨日、一緒に七海の家に向かっている時に見た、気品を感じさる横顔とはかけ離れた、雌の顔。

 その卑猥な横顔を見た瞬間、血液が勢いよく流れ込み、僕のモノはパンパンに膨れ上がった。

 モノを咥えながら、七海は横目でチラリとこちらを向いた。その顔は少し笑っているように見えた。モノが大きくなったのを口の中で感じたのだろう。それが嬉しくて、笑ってくれたのだろうか。

 七海は軽く微笑み、ジュボジュボと音を立てながら、再びモノをしゃぶった。途中、ズボンを脱いで、体を僕の股の間に移動させた。そして今度は両手も使いながらモノを刺激する。ときおり、上目遣いで僕の表情を確認しながら、朝のフェラと同じように、回転や強弱をつけてしゃぶっていた。

 何もかも吸い取られてしまいそうな気分だ。僕は射精しないようにと、目を瞑って快感に耐え続ける。

 目を瞑ったことに気づいたのか、七海は両手を離し、さらに大きな音を立ててモノをしゃぶった。部屋中に卑猥で粘着質な音が響き渡り、反射して僕の耳に飛び込んでくる。その音に脳を刺激され、僕のモノはさらに硬くなった。痛いと思ってしまいそうなほどパンパンに膨らみ、もう破裂してしまいそうだ。


「やばい…」


 目を瞑ったまま、僕は七海の方へ右手を伸ばした。七海は僕のその手を左手で掴み、指の間に指を入れて恋人つなぎで握った。一瞬、指先同士が触れた時に少しヌルッとした液体に触れたような気がした。しゃぶっている時に、七海の唾液がついてしまったのだろうか。

 しかし僕の意識はすぐに指先からモノへと移る。手を握ったところで、七海のフェラは終わらない。


「ちょ、ちょっと…いったんストップ…」

「…あ、ごめん。痛かった?」


 七海は朝と同じように、僕を気遣う反応を見せた。

 モノが七海の口から解放されて空気に触れると、唾液にまみれているせいか、そこだけひんやりとした。目を開けると、左手で僕の手を握り、右手で僕のモノを撫でる七海がいた。大きくなったモノ越しに見る七海の表情は、親子丼を出してくれた時の優しい表情だった。


「それとも、気持ち良かった?」


 七海は小動物のような丸い目を細くし、白い歯を見せ、いたずらに笑った。それにつられて僕も笑う。


「正解だよ。やばすぎ」


 うふふ、と七海は嬉しそうな顔をした。褒められて嬉しかったみたいだ。


「今日の朝も思ったけど、七海のフェラ気持ちよすぎ」


 えーほんと?と七海はニコニコしている。褒められて喜ぶという事は、七海は自分なりにフェラを研究したのかもしれないな、と思った。人は自然にできてしまうことを褒められるよりも、努力して手に入れたものを褒められた方が嬉しいから。

 親子丼を作ってくれた七海。フェラを褒められて喜ぶ七海。七海は奉仕することが好きなのだろう。

 僕は体を起き上がらせ「今度は俺に攻めさせて」と伝えた。いくら七海が奉仕するのが好きとはいえ、こちらばかりが気持ちよくなってしまうのは申し訳ない。気持ちよくしてもらったら、お返したい。


「うん、攻めてほしい」


 七海は足をM字に大きく開いた。程よく筋肉質な太ももの間で、熟れた果実のような赤黒とした女性器が存在感を放っていた。下着が履かれていないので、おそらくズボンを脱ぐ時に一緒に脱いでいたのだろう。それともノーパンだったのだろうか。

 そんな七海のエロさを想像するだけで、興奮は増してしまう。早く舐めたいという衝動が湧き上がり、僕はその中心部に頭を埋めようとした。

 しかし、七海は僕の肩に手を置いて、僕の動きを止めた。


「えっ」

「そうじゃなくて…」


 そうじゃなくて? フェラのお返しはクンニだ。だから、攻めてほしいというのは、クンニをしてほしいということではないのか? 何が違うのかが、僕にはわからない。

 

「今度は俺が舐めようと思ったんだけど…」

「ううん。もう挿れてほしいの。フェラしてる時に、すごく濡れちゃって…」


 僕は手を伸ばして、七海が濡れているかどうか確認した。


「す、すごい…」

「恥ずかしい…」


 七海の女性器は全体に潤滑油を塗ったのではと思うほど、広範囲に渡って濡れていた。熟れた果実にナイフをさした時に、果汁がドロリと垂れて果実全体をベトベトにしてしまうような、そんな状態だった。

 ふと、七海と手を繋いだ時に、指先に液体のようなものが触れたことを思い出した。


「もしかして…フェラしながら触ってた?」

「え、バレてた? 恥ずかしい…」


 七海は恥ずかしがりながら、自分の女性器を両手で隠した。足は大きく広げられたままだった。

 七海はフェラをしながら、左手で自分のアソコを触っていた。自分で触ってしまうほど興奮しながら、フェラをしていたのだ。

 なぜだかわからないが、急に全身が熱くなっていくように感じた。何がどうあれ、早く挿れて欲しいと思われるのは嬉しい。挿れてほしいと、自分でアソコを触りながらフェラをする女性とセックスができるということも嬉しい。もう七海とは一度セックスをしているはずなのに、僕は違う女性を目の前にしている気分になった。


「そしたら、挿れようか」


 僕は机の上に置いてあったコンドームに手に取った。そしてベッドに戻ろうとすると、七海が自然にモノを握って咥えた。話している時に少し萎んでしまったモノは、あっという間に大きくなった。


「七海、大きくしてくれてありがとう」

「うん。硬い方が入りやすいかなって」


 僕は根元までしっかりとコンドームをかぶせる。ゴムを突き破ってしまいそうなほど、自分では見たことがないほどにパンパンに膨らんでいた。

 七海は服を脱いで全裸になり、ベッドに寝転がった。


「それじゃ、挿れるね」


 七海の両足に手を当て、ゆっくりと足を開かせた。食事中に口の周りを汚してしまった赤ちゃんのように、アソコの周りがテカテカと光っている。その中心部分にモノを当てると、気のせいか、早く欲しいというように、むき出しになっているヒダが開いたように見えた。


「痛かったら言ってね」


 うん、と七海は頷き目を瞑った。全神経をアソコに集中させているのだろうか。

 僕も意識を全てモノに集中させ、そして七海の穴の中へ挿れる。


「いぃ…ゔぅ…あぁっ」


 溢れ出た愛液でいっぱいになった通り道を、膨れ上がったモノがゆっくりと進んでいく。膨れている水々しくて柔らかな肉壁をかき分けていく感覚が、先端に伝わった。

 奥までたどり着くと、七海は少し腰を浮かして体を反った。柔らかなおっぱいがいやらしく七海の顔の方へ垂れる。アソコの中は火傷しそうなほど熱かった。

 浮いた七海の腰を両手で支えて自分の方へ引き寄せると、モノは根元までズッポリと膣の中に入った。互いの膨張して熱くなった性器が結合している。僕の興奮は血液となってモノへと流れ込み、はち切れんばかりに膨らんだそれを、もう一度奥まで押し込んだ。互いの股間が隙間なく密着した。

 僕のモノを受け入れた七海は、左を向いて強く目を閉じていた。軽く拳を握ったような形で両手を顔の横の位置まで挙げている姿が可愛いらしい。

 どんな見た目の女性とセックスしたとしても、挿入した瞬間に、なぜだか愛おしく思えてしまう。ルックスのいい七海は、さらに愛おしく思えた。快感に集中している七海の横顔も、柔らかくて少し上に動いた胸も、全てが愛おしい。エロさよりも、愛おしさの方が優っている。


「七海」


 僕はキスをしようと、体をゆっくり前に倒す。その動きに合わせて七海がゆっくりと足を広げると、膣口も同時に広がっていき、膣内にモノを受け入れる新たな空白が作られた。その新たな空白を埋めるために、体を倒すのと同時にモノを奥まで侵入させる。僕の体と七海の体が重なった瞬間、膣内の空白は埋められ、七海は僕の体を抑えるように足を閉じた。


「七海」


 七海はゆっくりと目を開けた。そして僕の首に手を回し、


「隔たり」


 と囁いた。

 セックス中に相手の名前を呼ぶことは、ただ名前を呼ぶこと以上に意味がある。「好きだよ」「愛してるよ」とストレートに言わなくても、名前を呼ぶだけでそれと同じような意味を成す。

 七海にキスをしたいと思ったら、自然に出た「七海」。

 これからセフレになるのか、恋人になるのかはわからない。それでも、この行為中は恋人のような気持ちで愛情を交わし合いたい。


「七海」


 僕は再び七海の名を呼んだ。「隔たり」と七海が答えてくれた後、僕はキスをした。そして舌を入れ、腰をゆっくりと振っていく。

 上も下も繋がった。肉体的にも精神的にも繋がった。この瞬間が永遠に続いて欲しい。

 愛液を滴らせた膣内がモノに絡まり、しごき上げるような動きをみせる。徐々に締め付けが強くなっていくが、膣内に広がった大量の愛液で濡れているために全く痛みは感じない。モノに伝わってくるのは、ただただ気持ち良いという快感だけだった。

 快感が増していくとどうしても興奮してしまい、腰の動きが早くなる。呼吸も荒くなり、舌の動きも速さを増す。もっとたくさん七海とのセックスを味わっていたいという気持ちを飛び越え、興奮の波が身体中を駆け巡る。

 「んっんっ」という喘ぎ声に、結合部分から鳴る「クチュクチュ」という粘着音。興奮が増していくのと同時に、奏でられた音のテンポも上がっていく。


「あっ、あっ、あっ、アアァン!!」


 これ以上キスを続けるとイってしまいそうだと判断し、口を離すと、七海は大きな喘ぎ声をあげた。その声は七海の体のどの部分から、そしてどの性質から出てしまったのかと考えてしまうほど、僕のいだいている七海の印象に合わないような声だった。

 茶髪のショートカットにベレー帽をかぶったオシャレな七海。ピンクのエプロンをつけた可愛らしい七海。そんな女性らしさを持った彼女が、今、狂ったように喘ぎ声をあげている。このギャップがたまらない。

 初めて会った時の七海のイメージがセックスを経て、どんどん変わっていく。

 ものすごく、良い意味で。

 モノを突くたび七海の胸は揺れ、昨日のセックスの時よりも倍以上はある大きなボリュームの喘ぎ声が部屋に響き渡る。その声が催眠をかけるように、僕のS心を刺激した。


「なんでそんなに大きな声出してるの? 隣の部屋の同じ職場の人に聞かれちゃうよ」


 意識的に声を低くして七海に問いかける。腰の動きが早くなっていくと、ベッドの音も激しくなる。


「はぁ、はぁ、はぁ、い、いいの」


 胸を揺らしながら七海が答えた。


「何がいいの?」


 僕は意地悪な声を出す。


「今日は、と、隣の人、い、いないから」


 七海は目を開けて僕の目をまっすぐ見た。


「なんで隣の人がいないって知ってるの? もしかして、大きな声を出してエッチしたかったから、わざわざ聞いたの?」


 僕は七海の乳首を口に含んだ。


「あん! そ、そうなの! きょ、今日は、隔たりが来るってわかったから!」


 七海もセックスしたいと考えていたことを、セックス中に知るというこの状況。もう興奮の渦に飲み込まれ、溺れてしまいそうだ。自分でも何がしたくて、どうしたらいいかわからない。ただ腰を振り、目の前の七海の胸を貪っている。

 舌を出し、舐め回しながら言った。


「俺が来るってわかってたから…なに?」

「わ、わかったから、はぁはぁ、ンア、うん。気になっちゃったの」


 感じているのか、七海は落ち着きなく体をくねらせる。

 男が家に来るからと、隣人がその日の夜に家にいるかどうか確認する七海。


「変態だね」


 その言葉に、七海が一瞬、寂しそうな顔をしたのを、僕は見逃さなかった。


「…嫌い?」


 七海は無理やり笑顔を作った。

 今、お互いの性器が繋がっている。そして、先ほどまでずっと浴びるようにキスをしていた。嫌いなわけがないじゃないか。

 性器が繋がっている状況で、そう問いかけられてしまったら、この言葉は無意識に出てしまう。


「嫌いじゃないよ。好きだよ」


 七海は満足そうに笑った。その表情を見て、やはり先ほどの笑顔は無理やり作ったものだと悟った。

 七海がなぜ寂しそうな顔をしたのかはわからない。けれど、七海は結果的に僕から「好き」という言葉を引き出した。僕からの「愛情」ととれる言葉を、引き出した。

 

「もうダメだ」


 体を倒して、再び七海にキスをする。七海は手と足の両方で、僕の体をがっちりと抱きしめた。舌とモノの両方が、奥深い位置で絡まり合う。僕の性欲と快感と幸福と愛情の混じり合った白い液体は、一本の細い管を通り、七海の熱くて柔らかい膣壁に包まれながら、ゴムの中に放出されたのだった。


「どうだった?」


 セックスが終わると、僕はゴムを処理し、そのまま倒れるような形で七海の横に寝転がった。二人とも裸のまま、シミひとつない天井を見上げている。


「今日のセックスはどうだった?」


 「どうだった」と聞かれた時に、「悪かった」なんて答えられないのはわかっているが、どうしても聞いてしまう。七海が喜んでくれたのかどうか、嘘でも、本人の口から確かめたいのだ。


「よかったよ」


 先ほどまで大きな呼吸を繰り返していた七海。今はもう呼吸は落ち着いていた。


「よかった。七海ってさ、意外とへ…」


 セックス中に七海が一瞬見せた寂しそうな顔を思い出し、「変態だよね」と言いかけた言葉を飲み込む。


「ん、何?」


 あの時、なぜ寂しそうな顔をしたかはわからない。もしかしたら、ヤリモクと変態が七海の中でイコールになっているのだろうか。そうだとしたら、七海の見せた表情に納得ができる。

 しかし、それを問う勇気が僕にはない。


「え、えっと、その、隣の人がいないって本当?」


 チラリと横を見ると、七海は天井を向いたままだった。


「うん、本当。恥ずかしいけど、聞いたのも本当だよ。今日は友達の家に泊まるって言ってた」


 七海は隣の部屋の人と知り合いと言っていたが、仲が良いとは言っていなかった。仲良くない隣の住人に、いきなり「今日の夜家にいるか?」と聞かれたら、勘のいい人だったら「男を連れ込むのだろうか?」と疑ってしまうだろう。そのリスクを抱えてでも聞いてくれたということは嬉しかった。それだけ、僕とのセックスを楽しみにしてくれていたということだろうから。

 

「そっか、聞いてくれてありがとうね。俺も気にしないで出来た」

「よかった」


 七海は笑顔で僕の手を握って近づいてきた。柔らかい胸が、僕の腕に当たる。胸は服の上から当てられても嬉しいが、やはり直接の方がもっと嬉しいものだ。


「そういえばさ、七海めっちゃフェラ上手じゃない? 俺、あんな気持ちいいの初めてかもしれない」

「え、ほんと? 喜んでもらえたなら嬉しい」

「他の人に言われたことない?」

「うーん。1人としか付き合ったことなくて、その人としかしたことないから、わからなかった」

「え!? そうなの!?」


 僕は驚きのあまり、思わず大きな声を上げてしまった。七海が体を動かすほどびっくりさせたが、すぐにいつものような照れ笑いを浮かべた。


「そんなに驚く?」

「うん、びっくりした。めっちゃ気持ちよかったから、もっと経験あるのかと思った」

「ぜんぜん経験なんてないよ」

「意外だった」

「でもね」

「ん?」

「経験は少ないけど…フェラは、好き」


 好きこそモノの上手なれ、と言うが、七海のフェラの上手さは経験からではなく、「好き」という気持ちから作られたものだったのか。

 セックスが終わった後も、愛おしさが増していく。


「どれくらい好きなの?」

「うーん。引かないで欲しいんだけど、ずっと舐めたいくらい好き」


 七海の発言ひとつひとつに興奮してしまう。だらしなく萎んでいたモノに、再び血液が流れ込み始めた。セックスが終わった後、賢者モードにならないのは久々だ。


「ずっとフェラをしていたいから、本当は激しく咥えるよりも丁寧に舐めていたいの。ずっと舐めていると、アソコがパンパンになってくるでしょ? それをね、お口の中でずっと味わっていたい」


 七海は僕の右腕を優しく抱きしめ、そして少しだけ顔を上げて、軽く微笑みながらそう言った。

 今日の朝、時間がない中「もう1回する?」と言った僕に対して、七海は「最後までじゃなくてもいいなら」とフェラをしてくれた。僕はあの行動を、素直で良い子な七海だからこその優しさだと捉えていた。

 しかし、七海はフェラが大好きだった。つまり、あの会社に行くまでの短い時間の中で、七海はちゃんと自分が一番好きなプレイを選択していたのだ。そう思うと、やはり七海は性に対してものすごく貪欲なんじゃないかと思えてきた。

「そうしたら、今度ずっと舐めて欲しいな」

「え、いいの?」

「うん。俺が耐えられるか分からないけど」


 そう言って僕は少し笑ったが、七海は笑っていなかった。笑わせるつもりで言ったから、少し恥ずかしくなった。七海の顔はセックス中に一瞬見せた、あの顔に似ていた。


「本当にたくさん舐めても…引かない?」

「引かないよ」

「よかった」


 ほっとしたというように、七海は安堵の表情を見せた。そして、強く僕の腕を抱きしめる。


「もしかしたら私…挿れるよりも、舐める方が好きなんじゃないかって思うことがある」


 お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんのように、七海は身を縮ませて僕の腕の中に入り込んだ。

 僕は体を七海の方へ起こし、七海を包み込む。

 

「その感覚、なんとなくわかるよ」


 フェラが大好きと言った七海。「引かない?」と何度も確認した七海。


「俺も、挿入よりキスの方が好きって思うことがあるから」


 なぜだか、七海の気持ちに共感してあげなきゃいけないような気がした。そうしないと、七海の中の暗い部分が溢れ出てしまう気がしたから。


「だからさ、キスしていい?」


 僕の腕の中にくるまった七海は「いいよ」と顔を上げた。その顔は喜びというよりも、やはり安堵の表情だった。

 僕は挿入よりもキスが好きだ。なぜなら、キスは女性に負担をかけないから。

 硬く膨れ上がった棒を女性の小さな穴の中へ入れる。いくら互いに望んでいることとはいえ、挿入する際には、女性の体にそれなりに負担がかかってしまうだろう。

 そう思うと、なんだか申し訳なくなってしまうのだ。

 だから、僕は挿入よりもキスが好き。

 僕の大好きなキスを交わして、僕らはそのまま眠りについた。

 数時間が経ち、僕は目が冷めたが、まだ朝にはなっておらず、部屋は真っ暗だった。

 隣で寝ている七海は気持ちよさそうに寝息を立てている。顔を覗き込むと、顔の筋肉が緩みきった表情をしていて、僕は思わず微笑んだ。

 再び寝ようと仰向けになり、目を瞑る。


嫌い?


 セックス中の七海の顔がまぶたの裏に浮かび上がった。僕が「変態だね」と言った後、少し不安げに聞いた「嫌い?」。

 その問いかけに対して、僕は「好きだよ」と答えた。

 セックスをしていない冷静な今、そのことを思い返すと、少し心が痛む。

 勢いで言ってしまった「好き」は、七海にどう届いたのだろうか?

 一度考え出してしまうと、その考えは頭の中をぐるぐるして消えず、僕はなかなか眠りにつくことができなかった。

※続きはコチラ↓

 下半身の違和感で目が覚めた。目をこすり、顎を引くようにして顔だけ上げると、裸の七海がベッドに腰掛けていた。七海の手は布団の中に潜り込んでいる。

(文=隔たり)

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