グヌヌヌっ!
彼女は、お笑い芸人・柳原可奈子のようなポッチャリ体型だった。後ずさりしたくなる気持ちを堪え、顔を確認してみる。
イラっ!!
どこがどうと具体的には言えないが、人をイラつかせるタイプの顔だった。
これが風俗遊びだったら、迷わず「キャンセルで」と相手に告げていたに違いない。しかし、これは出会える系サイト遊びだ。酸いも甘いも味わえるくらいの心の余裕が必要なのである。
それに、さっきまでのイメージトレーニングの効果もあったので、辛うじてその場に踏みとどまることができた。
よしっ、これも功徳ってやつだ!
無償の愛の伝道師を自称する筆者は、覚悟を決めて彼女に近づいていった。
「こんばんは、ワカナちゃんかな?」
「は、はい」
「さっき【イククル】で約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「は、はい」
うーん、どうにも反応が悪い。ファーストメールを送った際のレスポンスの良さとは大違いだ。
しかし、この程度でヘソを曲げてしまうような筆者ではない。己を殺し、道化に徹してみることにした。
「俺ってこんな感じのエロそうな顔だけど、大丈夫?」
「え?」
「もしワカナちゃんがドン引きしてるなら、ここで断ってもいいんだからね」
「あ、いえ。全然大丈夫です」
「…」
彼女の返事をもらってから数秒黙り込む筆者。これは、向こうから「ショーイチさんこそ、私で大丈夫ですか?」と言ってくるのを待つためだ。
もちろん、そう言われたからといって、断るつもりはない。しかし、彼女からそのセリフは出てこなかった。そう、
不細工やおデブちゃんに限って、こうしたセリフを言わないものなのである。
まっ、これも出会える系サイト遊び“あるある”だ。
それに、優しいくらいしか取り柄がないとメールで伝えてあるので、ここで不機嫌な態度を取るのはマナー違反というものだろう。
これも修行だ、これも修行だ…。
と、無理やり自分に言い聞かせ、ホテル街に向かうことにした。