「こんばんは。アイリちゃんかな?」
「あ、はい。そ、そうです」
「ショーイチだよ。ゴメンね。待たせちゃったかな?」
「い、いえ、だ、大丈夫です」
追い詰められた小動物のような目でこちらを見つめるアイリちゃん。
スっ…
穏やかな笑みを浮かべるよう心掛けながら、半歩だけ後ろに下がる。
筆者は初対面の女性のパーソナルスペースを犯さないよう、いきなり距離を縮めないように心がけている。
だが、それはあくまでも筆者の尺度だ。個人差があって当然だろう。
そこで、半歩だけ下がって様子をうかがうことにしたのだ。
「まず最初に謝っておくね。ごめんなさい」
「え?」
「送った写メと実物の俺って違うでしょ? いかにもエロオヤジって感じするでしょ?」
「そ、そんなことないですよ」
「送った写メは加工なんてしてないけど、エロさが全然違うでしょ? だから謝っておきたいんだ」
「ほ、本当にそんなことないです」
「無理しなくていいんだよ。急に怒ったりしないからね」
「は、はい。無理してません。優しそうだし、思っていたより若そうなので安心しました」
チクっ!
胸の奥が少し痛んでしまった。サイトのプロフィールでは現在38歳となっている筆者。しかし、実際の年齢はイチローの背番号と同じ51だ。
そんな筆者に対し、38歳よりも若く見えると言ってくれたアイリちゃん。今すぐにでもゲロって本当の年齢を伝えたくなったが、グッと我慢。今更本当の年齢を教えたとしてもドン引きされるだけだろう。
「それじゃあ、このままホテルに向かうってことでいいかな?」
「は、はい」
まだまだ緊張で固くなっている様子のアイリちゃん。歩きながら会話を続け、ふたりの距離を縮めることにした。
「よく新宿には来るのかな?」
「い、いいえ。乗り換えで使うくらいで、ほとんど来ませんね」
「そうだよね。アイリちゃんみたいに若いコはあまり新宿で遊んだりしないよね」
「そ、そうですね。駅のビルで買い物とかしたことはありますけど、こっちの方はほとんど知らないです」
「うん。歌舞伎町なんて、若いコがひとりで来るところじゃないものね」
「は、はい。なんだか怖いイメージで…」
「うん。分かるよ。でも、こうやってカップルみたいに歩いていればキャッチとかスカウトとか寄ってこないから安心してね」
「や、やっぱりそういうのあるんですか?」
「そうだね。アイリちゃんみたいに可愛いコがひとりで歩いてたら、すぐにチャラそうな男が寄ってくると思うよ」
「えッ。そ、そんな…」