アルタ横の階段を下り、地下道へと彼女を誘導する。ホテル街に向かって歩きながら会話を再開させた。
「いやぁ、本当にびっくりしたよ」
「えっ?」
「トワちゃんってさ、今までに300回くらいはアイドル系の顔してるねって言われてるでしょ?」
「えっ? そ、そんなことないです」
「本当に? すっごく可愛いし、男性ウケしそうな顔してるから誰にでも好かれると思うよ」
「そ、そんな…」
「それに引き換え、俺の顔って、めちゃくちゃスケベそうでしょ?」
「えっ?」
「送った写メは真面目そうな顔してるけど、実物をよく見てごらん?」
「は、はい」
「ほら、スケベな性格がにじみ出てるでしょ?」
「い、いいえ。いただいた写真と同じですよ」
「そ、そうかな。ありがとう。でも、優しいっていうのは大げさでもなんでもなく、本当のことだから安心してね」
「は、はい」
「それじゃあ、このままホテルに向かうってことで平気かな?」
「は、はい。大丈夫です」
卑下して道化を演じ、相手の女性に優越感を抱かせるのが筆者の常套手段だ。「あ~、私はこの人より立場が上なんだぁ」と思わせることで、ふたりの距離感を縮めるという姑息な作戦だとも言える。
なにしろ筆者はこの不細工ヅラと50年も付き合っているのだ。自分のことはよく分かっていて、相手の女性のレベルにあわせてどれだけ卑下すればいいのかのさじ加減も把握しているつもりだ。
「ところで、トワちゃんはああいうサイトは使い始めたばかりなのかな?」
「え?」
「ほら、トワちゃんの名前の横に初心者マークがついてたからさ」
「は、はい。先週登録したばかりです」
「そうなんだぁ。こうやって実際に男性と会うのは今日で何回目なの?」
「は、初めてです」
彼女の緊張具合からそうではないかと思っていたが、案の定だった。つまり彼女は、
出会える系処女
だったのである。