セックス体験談|交際1年半の彼女とベッドイン…リアル童貞卒業物語<第2章>

隔たりセックスコラム「リアル童貞卒業物語<第2章>」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにて連載コラム「セックス物語」を寄稿中。「隔たり」というペンネームは敬愛するMr.Childrenのナンバーより。


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※イメージ画像:Getty Imagesより

※前回までは↓

 やっと今日、童貞を卒業できる。平日の昼間。僕の実家に、彼女とふたりきり。親は遅く帰ると言っていた。だから、時間はたっぷりある。ここに辿り着くまで、本当に長かった。


「隔たりのことが大好きです。付き合ってください」

「俺もみずきのことが大好きです。こちらこそ、よろしくお願いします」


 中学2年生の夏。人生初めての彼女ができた。

 彼女の名前は、みずき。

 僕とみずきは1年生のとき、一緒のクラスだった。同じ班になることが多く、さらに1年生の終わりには同じ委員会に所属していた。気づけば僕らは、お互いのことを意識しあうようになっていた。

 僕は1年生の夏頃から、みずきのことが好きだった。そして、みずきも好意を抱いてくれていることをなんとなく気づいていた。

 しかし、


「これは僕の勘違いなのではないか」

「告白して振られたらどうしよう」


 と不安を抱いてしまい、みずきに告白することはなかった。

 そして、中学2年生の夏。みずきがメールで告白してくれたことにより、僕らは付き合うことになった。

 みずきは顔が小さくて、すらっとしたスタイルの女の子だった。さらには運動神経抜群で成績も良い。非の打ち所のない彼女は、クラスの男子から注目される存在だった。

 そんな子と付き合うことができるなんて、それは僕にとって奇跡のような出来事だった。学校で話す機会が多かったとはいえ、何でみずきが僕のことを好きになってくれたのか分からなかった。


「ねぇ、みずきは何で俺のことを好きになったの?」

「優しいからだよ」


 付き合って間もない頃、好きになってくれた理由を聞いたとき、みずきは当たり前のようにそう言った。

 見た目も良く勉強も出来て、さらには人当たりの良い女の子。みずきはいつも、たくさんの男子に声をかけられていた。その中には、僕が優しいと思う男子もたくさんいた。

 みずきはその中でなぜ、僕を選んだのだろう。他の男子と僕は何が違かったのだろう。「優しい」ということに関しても、他の男子と大きな違いがあったのだろうか。

 けっきょく詳しい理由は分からない。けれども、みずきが優しいと感じるような人間で良かったと、今までの自分を誇りに思った。

 付き合って1週間が経った日、僕はみずきを自分の家に呼んだ。両親はいない。僕はこの日、キスをしようと決めていた。

 付き合ってからしたことといいえば、公園で1度話しただけ。学校で会っても恥ずかしくなってしまい、付き合う前より話す回数は減っていた。

 これは付き合っていると言えるのだろうか。むしろ、付き合う前の方が楽しくみずきと話していたのではないか。

 そう思った僕は、付き合うって何だろう、と考えた。付き合っている男女がしていること。付き合っている男女しかできないこと。答えは簡単だ。

それはキスだ。


 ソファにみずきと並んで座る。横を向くと、整った横顔が見えた。

 そして視線は自然と唇に移動する。薄くキリッとした唇。キスしたい、と猛烈に思った。


「ねぇ、みずき。キスしたい」


 僕は付き合っているというだけで、みずきと同等な人間になったように感じていた。

 本来はそんなことなんてないのに、周りの男子がみずきを好きという中で僕を選んでくれたことは、僕自身の価値をあげた。あれだけ仲良くなりたいと願っていただけの関係性だったのに、付き合った途端、自分が特別になったように感じられた。

 だから、僕はみずきを家に呼んだ。家に呼べばキスができると思った。みずきの気持ちは一切考えていない。僕らは付き合っているのだから、キスをすることは当たり前だと思っていた。

 

「え。ちょっとまだ、はやくない?」


 みずきは驚いた顔をしたが、僕は引かなかった。

 僕には彼女がいる。その彼女がみずきである。そんな自信が、求めるのは当たり前だという強欲に変わる。


「早くないよ。周りのみんなも、けっこうすぐにキスしてるよ」


 僕の頭の中に「周りのみんな」の顔は浮かんでいない。なんとなく、そんな気がしただけ。キスができるのであれば、理由は何でもよかった。

 

 キス。唇と唇が重なるだけの行為。

 それだけなのに、その行為は相手への愛を伝えるものだとされている。

 しかし僕はキスという行為を、ものすごく卑猥なものと捉えていた。

 中学の先輩にこっそり教えてもらったエロサイト。そこで行われているキスは、相手に愛なんか伝えていなかった。僕にはパソコンの画面に映っている男女が、「ただキスをしたい」だけにしか見えなかった。

 ただキスをしたい。今の僕の気持ちは、エロサイトの中の男女と変わらない。

 付き合ったばかりで「愛」なんてものは分からない。付き合ってどれくらいの期間が、キスをするべきベストタイミングかなんて知らない。僕はただ、あのエロサイトで見たキスをしてみたい。そう思っているだけだ。

 そのキスを、みずきなら受け入れてくれるだろう。

 「恋人同士」という無条件で対等になってしまう関係。恋人であるみずきなら、僕の要望を受け入れてくれるはず。


「みんなって言っても、みんなはみんなでしょ」

「そうだけど、俺ら付き合ってるんだし」

「うーん」

「キスさせて。お願い!」

「えーどうしよう」

「このとおり!」


 僕は両手を合わせてお願いした。どんなことをしようが、キスをしたかった。

 みずきはとても戸惑っていた。キスは早い、という彼女自身の思いと、彼氏にお願いされている喜び、というものの間で揺れているように見えた。

 運動もできて成績も良いみずきは、先生や友達に対しても、いつもハッキリと意見を言う女の子だった。少なくとも、僕はそう思っている。自分の意見が言えない僕にとって、みずきは尊敬の対象だった。だから、彼女を好きになった。

 そんなみずきが悩んでいる。もう少し押せば、いけるかもしれない。

 

「そしたら10秒だけ!」

「10秒…うーん」

「なら5秒!」

「…」

「そしたら1秒!」


 1秒だけのキス。たった1秒で、満足できるわけがないのに。キスができるなら、なんだって言える。

 

 自分の意見が言えない僕はこの頃、よく「嘘をつく」ということについて考えていた。

 僕は「嫌だ」がなかなか言えない。何かを頼まれて嫌だなと思っても、今まで「いいよ」としか言えなかった。嫌と言うことによって、相手を傷つけてしまうのではないかと恐れていたのだ。僕はこういう嘘を何度もついていた。

 しかし、この嘘は相手を傷つけていない。むしろ、相手の思い通りになっている。これは相手を喜ばせるための嘘だと、僕は自分に言い聞かせた。

 この考え方は、だんだんと僕の思考を歪めていった。相手を喜ばせる嘘なら何でも言っていい、と。

 僕はみずきとキスがしたかった。そしてキスをすれば彼女も喜んでくれると、勝手に思い込んでいた。

 だってエロサイトの中にいた女性は、あんなに激しくキスをしているのだから。キスが好きと、舌をベロンベロンに出してしているのだから。みずきだって、キスをすればそうなるはずだ。

 これは回り回ってみずきを喜ばせるための嘘だ。1秒だけで終わらす気なんてない。思ってもいなくても、キスをするためなら何だって言える。滑稽な姿すら見せることができる。

 キスをした結果、みずきが喜んでくれると信じているから、僕は嘘をつく。


「1秒だけ! 1秒だけでいいから!」


 1秒じゃ絶対に足りない。5秒、10秒としていたい。いや、もっともっとしていたい。あのエロサイトの中の男女のように。


「ね、お願い?」


 僕のキスをしたいという圧に、みずきはずっと戸惑っていた。

 キスしたいという彼氏。それを断れば、罪悪感が生まれてしまう。自分のルールと、彼氏の望みで揺れているように見えた。

 人は初めてする未知のことに怖がってしまう。中学校に入学することや、部活に入ること、塾に行くことですら初めは怖い。それと同じように、カップルだからこそできる憧れのものですら、未知で怖い。

 しかし、乗り越えなければならない。乗り越えたものたちは、楽しんでいる。

 僕も早く越えたい。

 顔の前で「お願い」と手を合わせ続け、みずきの返答を待つ。しばしの沈黙があった後、


「じゃあ1秒だけね」


 と、みずきは折れたような形で答えた。

 

 勝った。

 勝ち負けではないけれど、ひとつの壁を越えれたような気がした。


「じゃあ、するね」


 そう言って、みずきの顔を見る。なぜだろう、心臓の鼓動が止まらない。さっきまで、あれほど勢いよくお願いしていたというのに。目の前に可能な状況が現れた瞬間、急に緊張という波に襲われた。

 

 目的が了承を得ることになっていた。

 了承を得た先に、どうするか全く考えていなかった。

 

 緊張してみずきの顔が見れない。頬がものすごく熱い。

 みずきも少し俯き加減で、何も言わない。

 ふたりとも急に黙ったせいで、心臓の音が部屋中に響いている気がした。

 キスは唇と唇を重ねるだけ。簡単だと思っていたのに、本当は難しいことなんだと気付く。

 それでも、キスしたい。

 ただその欲求に従いながら、緊張に打ち勝つ。それしか方法はない。


「じゃあ、するね」

「うん」

「緊張、するね」

「うん」

「…」

「目、つぶって」

「ん?」

「恥ずかしいから」

「分かった」


 みずきが目をつぶったことを確認し、僕も目をつぶる。暗い。彼女の肩に手を添えて、顔の位置を把握する。

 ただ暗闇の中に向かって、顔を前へ、動かす。

 みずきの息が、僕の顔を撫でる。


ちゅ


 触れた。味はしない。唇の先端に、微妙な振動だけが残っている。

 初キスはレモンの味と言うが、そんなメルヘンなものではなかった。

 僕にとって初キスは、爆発ボタンのスイッチを押すような感覚だった。心臓のバクバクが止まらない。触れた瞬間に、体が飛んでしまいそうなほどの高揚を感じた。

 これが、キスか。

 もっとしてみたい。今度はちゃんと味わいたい。

 欲望はどんどん疼いていく。

 

「もう1回お願い!」

「え、1秒って言ったじゃん」

「でも、もう1回したいんだ! お願い!」

「え、でも…」

「3秒だけ!」


 仕方ないな、とみずきは笑う。その笑顔を見て、大好きだ、と思った。こんな僕の滑稽な姿すら、彼女は笑ってくれる。好きだ。

 再び目をつぶって、ゆっくりと顔を近づける。先ほどよりも緊張はしていない。

 唇が触れる。

 1、2、3…。3秒過ぎたが、僕は離れなかった。みずきも、動かない。

 動きのない、唇と唇が、ただ触れているだけのキス。めくったページが前のページに隙間なく優しく重なるような、ふわりとしたキス。

 エロサイトで見たキスとは違う。でも、僕は今まで体験したことがない種類の「幸せ」を感じた。好きな人と唇と唇を重ねるだけで、こんなにも幸福な気持ちになれる。僕は今、とても幸せだ。

 その後、僕らはたくさんキスをした。キスと言っても唇と唇を重ねただけの、ぎこちないキスだ。それでも、たくさん重ね合わせた。

 10秒、次は30秒と僕が時間を伸ばすたびに、みずきは笑ってくれた。けっきょく僕の要望は5分まで伸びた。1分過ぎてからは、さすがに時間なんて数えていない。みずきと唇を重ねている時間は5分どころか、永遠のように感じられた。

 その日から、僕らはたくさんキスをするようになった。僕はみずきと会う約束が決まると、キスをするのが楽しみで楽しみで仕方なかった。

 公園、住宅街、マンションの階段。僕らは至るところでキスをした。

 両親が家にいない時は、毎回のようにみずきを呼んだ。

 みずきは「まだ早い」と拒んでいたのに。僕は心臓が飛び出るほど緊張していたのに。

 僕らは気づけば舌を交わらせて、深いキスをしていた。

 2時間以上キスをする日もあった。全く会話をしないで、ほとんどキスだけしかしないデートもあった。僕らはまるでキスに溺れているようだった。大きく口を広げ、口の中をかき回し、唾液を交換する。芽吹きかけた欲望を無理やり開かせるかのように、僕らはその欲求に従い、キスをした。

 それだけキスをしていれば、次の行動に興味を持つのは当たり前だった。


「おっぱい触ってみたい」

「え…恥ずかしいから嫌だ」

「お願い! ちょっとだけ!」

「胸はちょっと、本当に恥ずかしいから」


 キスの時に比べて、体を触らせることに関するみずきのガードは固かった。キスをしながら触ろうと試みるも、いつも制されてしまう。面と向かってお願いしても、キスのときのようにうまくはいかなかった。

 そうして時は流れ、中学3年になり、受験も終わり、残すは卒業だけになった。

 相変わらずキスはたくさんしていたが、それより先には進めていない。

 しかし、受験が終わった解放感だからだろうか、みずきのガードがやけに緩くなったように感じた。キスをしながら胸をさすってみても、何も言わなくなった。


「みずき」

「ん、なに?」

「さすがにもう…触っていい?」

「…うん、いいよ」


 ここにたどり着くまで長かった。

 キスは早かったのに、胸にたどり着くまで、約1年半。

 学校帰りなので、みずきは制服を着ていた。うっすらではあるが、胸のあたりが膨らんでいる。

 それを触ろうと、おそるおそる手を伸ばす。

 みずきの胸の膨らみに、自分の手が重なった。


「揉むよ?」

「うん」


 ゆっくりと手のひらを、内側に縮めていく。中心に指を集めるように、同時に、胸を巻き込むように。

 初めてキスをしたとき、ただ唇が重なっただけなのに、心臓が爆発するほどの衝撃を受けた。同じくらいの感情を、胸を触ったときにも感じると思っていた。

 しかし。

 僕の手には何か硬い、女性の胸とは思えないような不思議な感覚が伝わってきた。

 これは「おっぱい」なのだろうか。アニメとか、コンビニの雑誌コーナーで見るような、あの「おっぱい」なのだろうか。


まさか、これ…ブラジャー…?


 僕の手に残ったのは、ただ硬いものを伸縮させた、という感覚だけだった。柔らかいもの、温かいものはなにひとつ残らなかった。


「ありがとう。恥ずかしかったよね」

「うん」

「興奮した」


 相手を傷つけてしまうなら、時には思ったことを飲み込むことも必要だ。でも今回は、嘘をつかなかった。触らしてくれて感謝をしているし、興奮したのは事実だった。

 みずきと別れたあと、家でオナニーをした。

 次に会うときは直接触ろうと、そのとき決めた。

 周りが受験ムードの中、僕とみずきは推薦で1月中に進学する高校が決まった。なので、卒業するまでは学校に行く必要がなくなった。会う時間はたっぷりある。

 次の日も、僕はみずきを家に呼んだ。風の強い日だった。

 僕の家でみずきとふたりきり。今日は直接触る。

 ソファに座り、いつものようにたくさんキスをする。その状態のまま、服の上から胸を揉む。感触は分からなくても、胸を揉んでいるという状況だけで興奮すると気づいた。

 でも、直接触りたい。


「みずき」

「ん?」

「直接触りたい」

「え」

「お願い!」

「…いいよ」


 あの頑なだったみずきは、どこへいったのだろうか。みずきも高校進学が近づくにつれ「大人になる」ということに興味を持ち始めたのだろうか。

 そう考えてしまったら、急に欲が出てきた。

 セックスがしたい。みずきと、セックスがしたい。


童貞を卒業したいーー。


 直接触ったら、ちゃんとみずきに伝えようと決めた。セックスしよう、と。

 中学卒業を前に、周りの友達たちが少しづつ童貞を卒業していった。

 明るい派手な女友達は自らのセックス体験を堂々と語り、僕の親友である男友達も、付き合って1カ月でセックスをしていた。


「隔たりはまだセックスしてないの?」


 皆、不思議そうな顔でそう尋ねてくる。

 皆にとって、「1年半」も付き合えばセックスなんて当たり前なのだろう。そういったものに抵抗なく飛び込める、彼ら彼女らのような人種なら。

 そんな人種といると、セックスしてないことがおかしいことのように思えてきた。皆のセックス体験を聞くたびに、「なぜ俺はまだしていないのだろう」という気持ちがふつふつと沸いてきた。

 だから、みずきに伝えよう。直接胸を触ったあとに。

 みずきの服を脱がすと、白の可愛らしいブラジャーがあらわれた。僕はこれを揉んでいたのか。少しズラすと、小さくて可愛らしい乳首が見えた。

 エロサイトの中の女性のとは全く違う、まだ発育しきっていない胸。けれどもその胸は、画面上で女性の胸を見ているとき以上に、僕を興奮させた。


「触るね」

「うん」


 みずきの胸の上に手を重ねる。同級生のぽっちゃりした男の方が大きいかもしれない。でも男のものとは比べ物にならないほど、違う。

 温かい。

 柔らかい。

 胸からあふれ出る温かい体温が、僕の手に広がる。少し手を動かせば、胸は形を変えた。

 温かくて、柔らかい。これが、女性の胸。

 僕はじっくり見つめながら、胸を触り続けた。

 この柔らかさはなんなのだろう。なぜこんなにずっと触っていたいと思えるのだろう。揉む、というよりも、探る、という感覚に近かった。

 みずきは目をつぶって横を向いていた。何かを我慢するように、食いしばっているようにも見えた。

 みずきに向けた目線を、胸に下ろす。茶色い可愛らしい乳首と、目があった。

 舐めたい。

 みずきは目をつぶっている。

 みずきにバレないように、胸を触っている手は動かしながらゆっくりと顔を近づけた。口を開け、そのまま乳首に吸い付く。


「ひゃあ!」


 みずきは体を急にビクつかせ、僕の口から乳首をはがした。いきなり吸われたもんだから、くすぐったかったのだろう。そのリアクションはとても可愛かった。


「何してるの?」

「ごめん、我慢できなくて」

「めっちゃくすぐったかった」

「そうなんだ。気持ちいって感じじゃなくて?」

「分からない。なんか変な感じ」

「そっか…舐めてみていい?」

「…少しだけね」


 みずきが再び横を向き、目をつぶる。その姿が恥じらっているようにも見え、とても可愛らしいなと思った。みずきも、みずきの乳首も、可愛い。

 舌を出して、そのまま乳首に当てる。触れた瞬間、みずきが身体を震わした。くすぐったいのを我慢しているのだろうか。何かをこらえる姿が愛おしく思え、さらに舐めたい衝動に駆られる。

 そこから僕は、エロサイトで見たシーンのように、たくさん胸を舐め回した。みずきの反応を気にかけられないくらい、たくさん舐め回した。自分が少し、狂っていくようにも感じた。

 口を離すと、みずきの胸には僕の唾液が付いていた。「汚した」という言葉が頭の中をよぎる。

 けれども、唾液に濡れているというその状態は、ものすごくエロいことであるというのが、童貞の僕にですらわかった。

 いま、告げよう。

 外は強い風が吹いている。その音が少し、僕の心をざわつかす。


「みずき」


 「ん?」と、みずきがこちらを見る。みずきは声を殺しすぎて、疲れたような顔をしていた。


セックスしよう。


 口に出したいけど、緊張して言えない。僕は本当にセックスできるのだろうか。みずきは僕とセックスするということを、少しでも考えたことがあるのだろうか。


「どうしたの?」


 セックスをしたい、その気持ちは確かだ。

 この興奮の先を体験してみたい。


「ん、どうしたの?」


 でも、僕はセックスが分からない。

 セックスで得られるもの、失うもの、何も分からない。


「隔たり?」


 男と女でセックスの捉え方が違うことも、よく分かっていない。


「何か言いたいことあるなら、言っていいよ」


 僕はみずきとセックスしたいのか、ただセックスというものをしたいだけなのか、それが一番分からない。


まだセックスしてないの?


 皆の言葉がよぎる。


「みずき」


 色々なことが分からない。

 でも、確かなことは。


「あのさ」


 この欲求を抑えられないということだけだ。


「セックス…しよう」


 強い風が窓に当たり、部屋に振動を与え、音を鳴らす。

 みずきが何か言ったが、その音のせいで、僕には聞こえなかった。

※続きの第三章は↓↓

 外には強い風が吹いている。窓がガタガタと揺れていて、まるで怒っているみたいだ。その音に気を取られた視線を、みずきに戻す。みずきの眉間に、シワが寄っているように見えた。 

(文=隔たり)

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