「こんばんは、カスミちゃんだよね」
「は、はい」
「待たせてゴメンね。【イククル】で約束してたショーイチです」
「いいえ、そんなに待ってないですよ」
「そっか。良かったぁ」
「だ、大丈夫ですか?」
誠実さを装いながら、走ってきたアピールでわざと呼吸を荒げていたトコショー。ちょっとヤリ過ぎてしまったかもしれない。
「う、うん、大丈夫」
「私が早く来すぎちゃったせいでゴメンなさい」
「そ、そんなことないよ。女性一人をこんなトコに待たせてゴメン。ナンパとかされなかった?」
「フフ、ナンパなんてされませんよぉ」
さもありなん。
会話をしながらカスミちゃんの顔を値踏みしていた筆者。小さくてクリっとした目とオドオドした弱々しい雰囲気が小動物を思わせる顔つき。決して不細工ではないのだが、あまり男性にモてるタイプではないだろう。
だが太平洋並みのストライクゾーンを誇る筆者にしてみれば、打ちごろ食べごろハメごろの真ん中高めの速球だ。
芸能人の誰かに似ているような気もするが、なかなかピンと来る例えが思い浮かばない。ま、リスみたいな顔と表現するのがもっとも適切だろう。
「じゃ、行こうか?」
「は、はい」
いつもなら「こんな俺だけど大丈夫?」と聞くトコショーだが、相手によっては強気になることもある。全人類の女性を分け隔てなく性の対象として見ているつもりでも、テンションに差異が出てしまうのは筆者の修行不足ゆえだろうか?
そんなワケでホテルに到着。グレードの低いホテルゆえ、浴室はユニットバスに毛が生えた程度の広さだ。たとえ寒い冬であっても混浴プレイなんてとてもできそうにない所である。
「じゃ、先にシャワー浴びておいで」
「は、はい」
「一服しながら待ってるから慌てなくていいからね」
いつになく強気モードのトコショー。小動物を思わせるカスミちゃんの顔が筆者の内なるSっ気を刺激しているのかもしれない。
ソファも無いような狭い部屋ゆえ、ベッドに腰掛けながら一服を開始する筆者。そして1本目の煙草を吸い終わり、2本目を吸うか否か検討しているところでカスミちゃんが浴室から出てきた。