セックス体験談|初体験に対する男女の違い…リアル童貞卒業物語<第3章>

隔たりセックスコラム「リアル童貞卒業物語<第3章>」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにて連載コラム「セックス物語」を寄稿中。「隔たり」というペンネームは敬愛するMr.Childrenのナンバーより。


※イメージ画像:Getty Imagesより

※これまでのリアル童貞卒業物語:第1章第2章

 強い風が吹いている。

 窓がガタガタと揺れていて、まるで怒っているみたいだ。

 その音に気を取られた視線を、みずきに戻す。

 みずきの眉間に、シワが寄っているように見えた。 


「ごめん、聞こえなかった。その…なんて言った?」


 なんでもない、とみずきは首を横に振る。その表情は、なんでもないようには見えなかった。

 それでも、もう一度みずきに告げる。


「あのさ、セックス…したいんだ」


 その問いに、みずきは答えない。表情は歪んでいくが、上半身は裸だ。拒んでいるのか、受け入れたいのか、どちらか分からない。


「みずきと、セックスしたいんだ」


 僕とみずきは中学2年生から1年半以上も付き合った。まだ、セックスはしていない。


「ダメかな?」


 歪んだ表情が少しづつ和らいでいく。みずきは姿勢を整え、はだけたブラジャーを直し始めた。


「おれはみずきとセックスがしたい。だって大好きだから」


 「大好き」という言葉に、みずきは少し体を反応させた。そしてブラジャーを整え終えると、はだけた服に手を伸ばしながら、ボソッと言った。

 

「いいよ」


 え、と情けない言葉が口から出る。その言葉を待っていたはずなのに、いざ言われると、動揺してしまう。


「いいよ。セックスしても」


 みずきは冷静な口調で再びそう言った。

 ここは喜ぶべきはずなところなのに、なぜだか素直に喜べなかった。みずきの言葉と行動が合わず、とても不気味だった。

 僕はキスの時のように、みずきが恥ずかしがりながら拒んでくることを予想していた。どちらの返答にせよ、みずきが冷静に返答してくることなど、想定外だった。

 けれど、みずきは「いいよ」と言った。

 それは確かだ。

 これで僕は、みずきとセックスできるのだろうか。

 しかし、現実はそう簡単に行かないということは、


「ただ…」


 中学生の僕でも知っていた。


「今日はしない」


 そう言ってみずきは、脱いだ服を着始めた。僕はその姿を見ながら、なんて返そうかと必死に頭を動かしていた。


僕は今すぐセックスがしたいのか?


 淡々と着替えているみずきを見る。セックスはしたいけど、ここから無理やりするのは嫌だと思った。


「じゃあ、次会ったとき、する?」

「うん、それならいい」

「まじで?」

「うん。緊張するけど」

「ほんとに?」

「うん」


 今日はセックスできない。でも、次に会ったときはできる。自分の顔がどんどん綻んでいき、頬が緩んでいくのがわかった。

 もうすぐ僕は卒業できる。

 みんなと同じに、なれる。

 その翌日、僕の家で再びみずきと会った。みずきは私服を着ていて、なぜかそれがものすごくエロく感じられた。

 会話もそこそこに、僕はみずきにキスをした。

 今まであんなにキスをしていたはずなのに、なぜかとても緊張する。いつもは何も考えず舌をぐるぐるしていたのに、今日は頭の中から「セックス」という文字が離れない。

 そんな自分の頭の中の緊張に反し、僕の下半身というものは本当に素直だ。今日みずきに会った瞬間から、うずきが止まらない。

 僕はキスをしながら胸を触り、すぐに手を服の中に忍ばせ、下着の上から揉みしだいた。ブラと胸の隙間に指を入れて乳首に触れる。みずきの口から、甘い吐息が漏れた。


「みずき、脱がしていい?」

「…」

「みずき?」


 みずきは顔をうつむかせている。緊張しているのだろうか。僕はみずきの頭をなでる。


「みずき?」

「あ、ごめん」

「緊張してるの?」

「うん、緊張してる」

「そうだよね。おれも緊張してる」

「…」

「みずき?」


 顔をのぞきこむと、みずきは今にも泣き出しそうな顔をしていた。それは緊張ではない、激しく心の揺れた感情のように見えた。


「大丈夫?」

「…大丈夫」

「どうしたの?」

「ちょっと、怖くなっちゃって」


 みずきは処女で僕は童貞。ふたりともセックスするのは、初めてだ。

 童貞の僕に「怖い」という感覚はなかった。むしろ、「うまくできるだろうか」という不安の方が圧倒的に大きい。

 けれど、処女のみずきは「怖い」と言った。僕はその「怖い」を、新しいことを始める時の怖さと、同等の怖さだと思った。


「初めは怖いよね。でも、この怖さを乗り越えたら、幸せが待ってると思うんだ」


 最初は怖かったが意外に大丈夫だった、ということがよくある。

 水に入るのが怖かったけど、今では泳ぐのが楽しい。塾で知らない人に会うのが怖かったけど、今では友達になれてとても嬉しい。

 付き合うことに関しても、今までの良い関係性が壊れるという恐怖がつきまとう。僕とみずきはそれを乗り越えて、今、付き合う喜びを感じているはずだ。

 セックスも同じだと思う。

 周りのたくさんセックスしてる女友達たちは、セックスが楽しいと言っている。公園とかトイレでヤったということを、楽しそうに話している。

 そんな彼女たちから「セックスが怖かった」という言葉は、一度も聞いたことがない。

 みずきも彼女たちのように、いつかは「楽しい」と言うようになるだろうと、僕は思った。

 みずきの気持ちなんて、考えもせずに。

 もうすでにセックスしている女友達もみずきも、どちらも「女」だ。でも、それぞれ違う「人」でもある。楽しいと感じることも、怖いと感じることも、それぞれ違うはずだ。

 僕はその複雑さを理解できず、みずきを「女」という存在で括っていた。そして、その「女」という価値観は、セックスしている女友達の行動から作り上げられたものだ。

 その女友達は、たった2人しかいないというのに。

 僕は「セックスしたい」という自分の欲望を肯定するために、自分にとって都合の良い「女」像を作り上げていたのだ。

 分かっていても、セックスからは逃れられない。

 

 怖がるみずきの頭をなでながら、僕は声をかける。


「そうだよね、怖いよね。でも、みんな、してるから」


 その「みんな」は、自分が都合よく作った「みんな」。


「だから、みずきも大丈夫だよ」


 何が大丈夫なのだろうか。


「とりあえず、やってみようか」


 自分がセックスしたいだけではないか。


「ね。服脱いで」


 ずっと黙っていたみずきが、顔をあげた。

 そして、深刻なことを打ち明けるように、言った。


「ごめん、やっぱ怖い」


 とりあえずやってみようよ、と言おうとした僕を制すかのように、みずきは少し大きなボリュームで、再び言う。


「ごめん、怖いの」


 みずきと目が合う。


「自分のここに、何かが入ると想像するだけで、ものすごく怖いの」


 そんなふうに訴えられても、どうしたらいいか分からないよ。


「痛い、血が出る。そういうのを聞くたびに、ものすごく怖くなるの」


 みんな、最初はそうじゃないか。


「だから、怖いの」


 今日セックスしようって、言ったじゃないか。


「私、怖いの」


 いつかは子供が欲しいって、話してたじゃないか。


「だから」


 言わないでくれ。

 

「今日はセックスできない」


 タイミングを見計らったように、強い風が窓に当たる。

 飲み込まれるような深い風の音に、心が暗くなる。

 頭の中に生まれた言葉は口から出ることなく、行き場をなくした状態で、僕の頭にとどまったまま。


1年半、付き合ったんだよ?


 なぜか、この1年半が無意味なように思えてきた。


1年半、付き合ったのにセックスできないの?


 みずきと付き合いたての頃の気持ちなんて、消えてしまっていた。


セックスしていいっていう信頼は、1年半じゃ足らなかったの?


 「信頼」という言葉が、強く頭の中に響いた。

 「信頼できる人とセックスしたい」という女性の言葉をどこかで聞いたことがあった。1年半という期間は、その条件に値するものだと僕は思う。

 僕らは1年半付き合ってきた。それは信頼し合っている証拠だ。

 だから、セックスを求めてもいいんだ。

 僕は「信頼」という言葉を都合よく使い、思考を歪め、セックスを求める自分を肯定した。

 「信頼」の本当の意味なんて、何も分かっていないのに。


「なんで怖いの?」


 声を荒げないよう、注意して、なるべく冷静に聞く。


「なんで、セックスが怖いの?」


 自分の中の衝動が、ふつふつと浮かび上がっていく。


「今日、セックスしようって言ったじゃん」


 口調は冷静でも、興奮した言葉たちがこぼれ始める。


「俺、楽しみにしてたんだよ?」


 衝動はもう、抑えきれそうにない。


「みんなしてるじゃん」


 僕は。


「なんで1年半も付き合ったのに」


 童貞を卒業したい。


「なんでセックスできないの?」


 今はそれしか、考えられなかった。

 

「ごめんなさい」


 か弱い声でみずきが謝る。その声を聞いて、自分が感情のままに言葉を出してしまったことに気がついた。


「あ、いや。俺こそ、ごめん」


 急いでそう謝るも、みずきの表情は曇ったまま。


「みずき、ごめん。その…忘れて、さっきの言葉。なんか俺、おかしくなってたわ。みずきといれるだけで嬉しいのにね。焦ってたわ、ごめん」


 先ほどの自分を誤魔化すような言葉が、スラスラと口から流れ出す。

 セックスをしたいという言葉も、ごめんなさいという言葉も、どちらも本心なのに、謝罪の言葉は自分でも嘘のように聞こえた。

 それでも、今は謝ることしかできない。

 「怖い」と言ったみずきに対して、僕は「なぜ?」と言った。恐怖を感じている彼女に、怖がる理由の説明を求めた。彼女は理解して欲しいわけではなく、安心が欲しいはずなのに。

 スラスラ出てくる僕の謝罪の言葉を、みずきは「うん」と相槌を言いながら聞いていた。少しずつ表情が明るくなっていくようにも見えた。もう少しで、いつもの関係に戻れそうだ。

 そう思ったとき、みずきは純粋な疑問という形で、僕に問いかけた。


「ねぇ、隔たりは、私のこと好きなの?」


 僕はみずきのことが大好きだ。


「…好きだよ」


 そう思っているはずなのに、「好きだよ」という言葉は変な間が空いたあと、ぎこちないリズムで部屋の中に反響した。

 僕は即答できなかった。

 その事実が、自分の心を突き刺す。

 突き刺さった事実は、疑問文に形を変え、僕の心を蝕んでいく。

 

 僕はみずきのことが好きなのだろうか?

 本当はセックスしたいだけなのではないか?

 好きになったのも、セックスしたかったからではないか?


お前…本当はセックスしたいだけなんじゃないか?

 

「俺、みずきのこと、本当に大好きだよ」


 心の中の疑問を取り払うように、そう口に出す。


「俺、みずきのことが大好きなんだ」


 口に出さなければ、今後もみずきを好きでいれる自信がなかった。


「大好きだから、愛し合いたいって思ったんだ」


 だから口に出す。


「みずきのことが大好きだよ」


 口に出すということは、僕はまだ、みずきのことを好きでいたいということだ。


「愛してる」


 そう言って僕はみずきを抱きしめた。

 愛してる。それがどういう気持ちを指すか、僕には分からない。分からないけど、そんなあやふやな言葉を使ってでも、僕はみずきとの関係を保ちたかった。


「私も」


 みずきの細くて優しい手が、僕の背中に重ねられた。


「隔たりのこと、愛してる」


 僕らが交わした「愛してる」は、意味も想いも何もこもってない、ただ響きだけの「あいしてる」だけど、でも、その響きをみずきの声で聞けたということが、何より僕を安心させた。

 僕がみずきと1年半付き合ったのは、何もセックスするための信頼が欲しかったわけじゃない。本当に大好きで、一緒にいると楽しいから、僕は付き合っていたはずだ。

 周りの友達が恋人を取っ替え引っ替えする中、僕とみずきはブレずにずっと付き合っていた。僕の周りの中では、圧倒的に交際歴が長いカップルだった。

 ノリじゃない、ただ恋人が欲しいからという理由でもない、寂しいからという理由でもない。僕はみずきのことが大好きで、みずきも僕のことが大好きだった。

 僕らは両想いだった。それは、付き合っている間ずっと。そしてお互いに。

 当たり前だけど、簡単に忘れてしまう、とてもシンプルで大切なこと。みずきの「愛してる」、そして背中に回された優しい手が、僕に思い出させてくれた。


「ありがとう」


 僕は強くみずきを抱きしめた。1年半も一緒にいてくれて、そして、今日の情けない僕に「愛してる」と言ってくれて、ありがとう。


「あのね」


 みずきがそう言って僕を強く抱きしめ返す。僕もみずきから離れないように、さらに深く抱きしめた。


「あのね、もう少し、待ってくれる」

「えっ」

「少しだけ待って欲しいの」

「何を?」

「…セックス」

「それは…その…いつまで?」

「卒業したら」

「卒業」

「うん、卒業して、高校生になったら。高校生になったら、セックスしよう」


 優しい。なんて優しいのだろう。

 まさかこの状況で、みずきの方から「セックスしよう」と言ってくれるなんて。

 みずきと付き合って良かった。心から、そう思った。

 そして時が経ち、僕らは中学を卒業した。

 卒業式の日、優しい風に吹かれながら、桜は満開に咲いていた。

 僕とみずきは高校入学までの春休みに、久しぶりに外でデートをした。キスを覚えてから、僕の家で会うことが多かったから、遠出をするのはとても新鮮だった。

 食べ歩き、カラオケ、プリクラ。学生らしいデートができて、ものすごく楽しかった。みずきはとてもオシャレをしていて、改めてかわいいなと思った。

 カラオケに入ってキスをしたとき、


「中学を卒業したから、春休みの間にセックスできる?」


 と聞くと、


「高校入ってからって言ったじゃん。一応まだ中学生でしょ?」


 と子供をあやす母親のように、みずきは言った。

 「ごめんごめん」と謝りながら、僕の心は晴れやかだった。


そうか、4月になったらできるんだ!


 その後、みずきが何か呟いたが、頭の中が喜びでいっぱいだった僕は、「そうだね」と返事をしただけだった。

 

 早く高校生になりたい。

 僕の胸は期待と興奮に満ち溢れていた。

 

 そして4月。

 僕らはそれぞれの高校に、無事、進学した。

 そして5月。

 僕とみずきは別れた。

 セックスは、していない。

 春休みのデート以降、僕とみずきは会っていない。

 僕らはメールのやり取りで、別れた。

 理由は喧嘩だった。

 何で喧嘩したかは覚えていない。それくらいどうでもいい内容で、僕らは喧嘩をした。そして別れた。

 僕はみずきに裏切られたような気がした。

 高校生になって、


「いつセックスできそう?」


 と僕はメールで何度か、みずきに聞いた。

 彼女はいつも、


「次会ったときかな」


 と返してきた。


「そしたらいつ会えるの?」


 と送っても、


「高校入学したばかりでまだ慣れてないから、いつ会えるか分からない」


 と曖昧な返事。


「いつ会える?」

「まだ予定わからない」


 そんな同じやりとりを何度も繰り返したあと、僕らはメールで喧嘩をして、別れた。

 高校生になったら、セックスすると言ったではないか。嘘をつかれた、裏切られた。別れたあとの僕の中には、怒りの感情しかなかった。

 なんでみずきは、約束を破ったのだろう。

 セックスを、しようとしなかったのだろう。

 裏切られたという感覚と同時に、そんな疑問が湧いてきた。そして、入学前のデートの時、僕が何気なくスルーした、みずきの呟いた言葉を思い出した。


「やっぱり、一緒にご飯したり、話したり、こういうデートが一番幸せだよね」


 言葉としては当たり前のことだけど、みずきに振られた今、この言葉が重くのしかかる。

 みずきは普通のデートがしたかった。僕はセックスをしたかった。そのズレが、ふたりを引き裂いた。

 僕はみずきがどうしたいかなんて全く考えていなかった。キスを喜んでしてくれるのと同じように、セックスもちゃんとできれば、喜んでもらえると思っていた。

 でもみずきは、セックスよりも普通のデートがしたかったんだ。

 僕がセックスしたいと告げてから、みずきと会う時はほとんどキス以上のことしかしていなかった。何気ない会話や、外へのお出かけなんて、全くしていない。セックスをするための練習みたいなものしか、しなかった。

 僕はみずきに会うたびにセックスの話題を出した。

 高校に入学してからは、何度も「いつセックスするの?」とメールを送っていた。

 僕はセックスの対象としてしか、みずきを見れていなかった。

 自分の中では、みずきのことが大好きで、セックスの対象で見ていないと思っていても、受け取り側の彼女には、自分がそういった対象としてしか見られてないと感じたことだろう。


あなたはセックスがしたいだけなのね。


 みずきがそう思っていても不思議ではない。そう思われるような行動を、僕はずっとみずきに対してしてきた。

 だから、この別れは仕方のないことかもしれない。

 いつからか、僕らの繋がりは「恋」「好き」といったものではなく、「性」だけになってしまった。そうしてしまったのは、それこそ、僕自身だ。


自分のせいだ。


 そう気づいたところで、みずきとの関係は戻ってこない。残ったのは「みずきと別れた」こと、そして「童貞」であることだけだ。

 僕はみずきとの関係を、その後もずっと引きずった。

 新しい恋人を作るにも、クラスの女の子に全く話しかけることができなかった。僕は、自分が空っぽになってしまったように感じた。

 中学のとき、気軽に女の子と喋ることができた。女友達もたくさんいた。なのに高校生になった途端、話せない。

 それは、みずきを失ってしまったからなのだろう。彼女と付き合っているという事実が、僕に男としての価値があるという肯定感を与えてくれた。

 しかしそれがなくなった今、自分自身を肯定できるものは何もない。

 みずきと別れてから、日に日に彼女の存在が大きくなっていった。

 思えば、中学校生活の半分以上は、彼女と過ごしていた。僕はもう、恋人がいない学生生活のやり方を忘れてしまった。

 そうこうしているうちに勝手に時は流れ、僕は高校を卒業した。彼女は出来なかった。

 女性との思い出といえば、クラスの子と一度ご飯に行ったこと、地元の繋がりで他校の子とラインを交換したこと、それくらいだった。

 

 中学生のとき「セックスしよう」という約束をした。でも、できなかった。

 大学生になって、セックスの手前までいった。でも、できなかった。

 大学生になっても、ずっと僕は童貞のまま。

 そして、彼女から「もうそういうことはしたくない」と言われた。

 僕は中学の頃と何も変わっていない。何も変わっていないから、セックスできなかったのだろう。

 僕はどうすればいいのだろうか。

 童貞を、卒業できるのだろうか。


もう、無理かもしれない。


 その絶望感だけが、自分にのしかかる。恋人という大切な存在を中学、大学と2度傷つけた。もう、彼女とは別れてしまうだろう。

 僕は一生童貞なのかもしれない。でも、それは嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。

 絶望に押しつぶされそうになりながら、童貞卒業に固執する。

 いったい、「セックス」とは何なのだろうか。

 なぜ、男と女はセックスをしなくてはならないのか。

 なぜ、僕はセックスをしたいのか。

 

それはしないと、分からない。

すれば、分かるはずだ。


 彼女との電話が終わり、LINEの画面を見る。彼女の名前ではなく、彼女の下にある「玲」という名前をタップし、LINEを送る。


「今度さ、ホテル行かない?」


 もうどうなってもいい。

 「好き」とか「愛」とか、どうでもいい。

 はやく「セックス」から逃れたい。

 そのメッセージにはすぐ既読がついた。そして、当たり前のようなテンションで、返事がきた。


「いいよ」


 童貞を卒業できるなら、誰だってかまわない。

 すぐに返事を送る。


「エッチしようよ」


 たぶん、心がなくたって、


「いいよ」


 セックスはできるはずだ。

※続きの第4章は↓↓

 玲と出会ったのは、僕が高校3年生の時だった。中学の友達と一緒に地元のお祭りに行ったとき、そこに玲はいた.。玲は僕の友達が通っている高校の、部活の後輩だった。

(文=隔たり)

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