エスコートしながら、チラチラと横目でユッコちゃんの様子を探る筆者。
キョロキョロと視線を動かし、瞬きを何度も繰り返していた。
やはり緊張感がかなり残っているようだ。
こうなったら時間をかけてアプローチするしかないだろう。
「今日は会社の帰りなんだよね?」
「は、はい。そうです」
「今日は金曜だけど、明日はお休みなの?」
「そ、そうですね。休みです」
「休みの日は何して過ごしてることが多いのかな?」
「うーん、あまり外出はしないんです。テレビでスポーツ観戦したりとか…」
「え? スポーツ観戦? どんなスポーツが好きなの?」
「い、色々ですけど、バスケとか好きなんです」
バスケという単語を聞いた途端、閃いてしまった。
女性にしては珍しい趣味だ。この分野で共感してあげれば、ふたりの距離をぐっと縮めることができそうだ。
ここから脳内をフル回転させる。
筆者のバスケの知識は、漫画「SLAM DUNK」や「黒子のバスケ」で身につけた程度のものにしか過ぎない。
それでも、「俺もバスケ好きなんだ」と暗にアピールするため乏しい知識で会話を続ける。
「あ、そう言えば、高校生以下のバスケ大会ではなぜ背番号の1から3が使用禁止なのか知ってる?」
どうでもいい小ネタを披露して、会話を盛り上げることに成功。
やはり、会話で重要なのは瞬発力だろう。
相手が何気なく口にした単語を拾い上げ、そのキーワードからどれだけ話を膨らませることができるのかが重要だ。
淀みなく会話を続け、50メートルを全力疾走するノリで畳みかける。この会話の瞬発力も、長年の出会える系サイト遊びで培われたものなのだ。
この雑談でかなり距離が縮まった。少しずつ笑顔も見せてくれるようになったのである。
ラブホテルに到着し、部屋でふたりきりとなってから会話をエッチな方向に導くことにした。
「ね、ユッコちゃんって相当モテるでしょ?」
「そ、そんなことないですよ」
「いやいや、そんなことあるって! 今まで何十回も告白されたことあるでしょ?」
「そ、そんな経験ないです!」
「え? ホントに? 俺の周囲にユッコちゃんみたいなコがいたら、絶対にコクってると思うんだけどなぁ」
「わ、私なんて全然です」
「今までどれくらいの男性と付き合ったことがあるの?」
「お、お付き合いですか。大学の時に1回あっただけです」
「え? ってことはエッチの経験人数は?」
「そ、その人とだけです」
「そ、そうなんだぁ! それは予想外だったなぁ」
「や、やっぱりおかしいですか?」
「ううん。いい意味でビックリしただけだよ。凄くモテそうだから、経験人数も多いのかと思ってたよ」
「本当にモテないんです。よく暗そうって言われてましたし」
「それは周りの男に見る目がなかっただけだよ。さっきからたまに見せてくれる笑顔は本当にキラキラしていて可愛いよ」
「あ、ありがとうございます」
まさか経験人数がたったひとりだけだったとは! こんなの四捨五入したら処女みたいなもんである。
ますますテンションが上がってしまう。しかし、ここで本性をさらけ出すわけにはいかない。