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初めまして、ユッコさん。
都内の会社員ショーイチ・39歳です。
先ほど、ユッコさんの書き込みを見つけました。
優しいくらいしか取り柄のない私ですが、是非ユッコさんと楽しくて気持ちのいい時間を過ごしたいです。
今日の夜は予定がないので、夕方以降なら何時でも都合をつけられます。
ちなみに、私も学生時代は「エロそう」ってよく言われてました(笑)
あ!
お返事をもらえたら私の写メを送りますね。
それを見てもらってからで構わないので、検討してもらえたら嬉しいです。
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定型のファーストメールをメモ帳アプリからコピーして、一部分を修正する。
今回はユッコちゃんの応募文章にあわせるため、若干のアレンジを加える。“私も学生時代は「エロそう」ってよく言われてました”という部分だ。
これは、貴女の応募文章をしっかりと読んでいますよ、とアピールするのに大いに役立つテクニック。
いつもは数撃ちゃ当たる作戦を実行しているが、ほんの少しだけ手間をかけるだけで命中率がグンと上昇するものなのである。
そんなテクニックが奏功したのか、ものの数分ほどでユッコちゃんから返信が届いた。
そこから数回ほどのメール交換を経て、あっさりと約束が成立したのだった。
待ち合わせ場所は新宿アルタ前。約束の5分前に到着すると、既にユッコちゃんらしき女性が人目を避けるようにして壁際に立っているのを発見した。
まだ向こうがこちらに気づいていないようだったので、歩調を緩めながらじっくりと観察する。
スタイルは中肉中背で可もなく不可もなしといった具合だ。
肝心の顔は、彼女がうつむいてスマホをイジっていたためはっきりと分からない。
さらに歩調を緩め、「顔をあげてくれ!」と念じながらじりじりと近づいていく。
だが、スマホ画面とにらめっこしながら何やら操作しているようなので、こちらの思いは届かない。
そうこうするうちに、彼女の目の前に到着してしまった。こうなったら声をかけるしかない。
「こんばんは、ユッコちゃんかな?」
彼女を驚かせないよう、声のボリュームを絞りながらゆったりとした口調で話しかける。
「ひっ、ひゃい!」
ビクっと肩をすくめ、顔をこちらに向けるユッコちゃん。
あ! これはヤバい!!
ユッコちゃんの顔は、4人組ガールズバンド「GIRLFRIEND」のボーカルSAKIKAのような感じ。透明感があり、清潔感の塊みたいな美少女風だった。
SPEEDの島袋寛子やSAKIKAのように幸薄そうな美形が大好物の筆者。どこか暗そうな印象がツボに入ってしまうのだ。
これだけ可愛いと、今まで彼女に言い寄ってきた男のレベルもそれなりに高いはず。
だから、筆者のようなブサメンは顔パスされる可能性が高くなるので、「ヤバい」と感じたのだ。
それでも全力投球するしかない。
当たって砕けても命まで取られるわけでないので、覚悟を決めて進むことにした。