アルタ脇の階段を降り、サエコちゃんを先導しながら歩く。
「まず最初に言っておくね」
「はい?」
「俺って、精神的な超ドMだから、神に誓ってサエコちゃんを傷つけるような真似はしないからね」
「は、はい」
「あっ! でも、痛いのとか汚いのには一切興味がないノーマルな性癖だから誤解しないでね」
「フフ。分かりました」
ここにきて、サエコちゃんはようやく笑顔を見せてくれた。徹底的に下手に出たのが効いたようだ。だが、まだまだ油断は禁物だ。射精してゴムを処理するまでが、出会える系サイト遊びなのだから。
「サエコちゃんは、どれくらい前にあのサイトに登録したの?」
「え、えっと、今年の夏だったので4か月くらい前です」
「でも、こうやって待ち合わせしたことはなかったんだ?」
「は、はい。いつも直前で怖くなっちゃって…」
「うん、うん。その気持ちよぉぉく分かるよ。シンナーで歯が溶けたようなヤツとか、腕に注射痕があるようなヤツが来るかもしれないしね」
「えっ? そんな人もいるんですか?」
「なにしろメールでしかやり取りしないから、そういう可能性もゼロじゃないと思うよ」
「そ、そうですね」
「でも、今日はちゃんと待ち合わせ場所まで来てくれたんだね。ありがとう」
「い、いえ。こちらこそなんだかすいません」
「今日は怖くならなかったの?」
「は、はい。少し怖かったですけど、ショーイチさんが写メもくれたし、すごく優しそうだったので…」
「そっかぁ。でも、さっきも言ったけど、実物の俺って写メと違ってるでしょ?」
「え?」
「ほら、俺の顔をよく見てごらん? すっごくスケベそうな顔してるでしょ?」
「そ、そんなことないです。真面目そうで優しそうです」
「あ、ありがとう。普段はいい加減だけど、エッチに関してはすっごく真面目だよ」
「フフフ、そうなんですか?」
「うん! 自分だけさっさとイクようないい加減なセックスはできないし、手抜きはしないで女性にご奉仕したいからね」
「え? ご奉仕ですか?」
「うん。女性に喜んでもらえないと、俺が気持ち良くなれないんだ。だから、サエコちゃんが命じてくれれば何時間でもアソコを舐めていられるよ」
「や、やだ」
周囲の人に聞かれないよう小声で話していたのだが、サエコちゃんが足を止めてしまった。
し、しくじったぁぁぁ!
いきなりクンニの話をするなんて、ちょっと焦り過ぎたか。
考えてみれば、これが普通の反応だ。出会って数分しか経っていない男からアソコを舐めたいだなんて言われたら、ドン引きするに決まってる。
出会える系サイト遊びと風俗遊びに首までどっぷり浸かっている筆者は、今さらどう転んでも普通の恋愛はできないのかもしれない。