セックス体験談|元カレが忘れられない女:後編

隔たりセックスコラム「元カレが忘れられない女:後編」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。


※イメージ画像:Getty Imagesより

『元カレが忘れられない女:前編』

 ラブホテルの延長をしたのは、人生で初めてだった。初めての出来事を体験した時は、その内容がどうあれ、自分が少し成長したように感じる。自分の成長を実感できるのは気分が良い。

 そんな僕の気持ちとは対照的に、マリは不安そうな顔でこちらを見つめていた。先ほどセックスを了承してくれたはずなのに、もう心が変わってしまったのだろうかと不安になる。


「延長のお金、大丈夫?」


 なんだお金の心配だったのか、とホッと胸をなでおろす。高級そうなバックを持っていても、1000円程度の延長料金を心配してくれるのだなとぼんやり思う。


「全然大丈夫だよ、気にしないで」


 しかし、仮に大丈夫じゃないと僕が言ったら、マリは延長料金を払うつもりだったのだろうか。「大丈夫」という言葉は難しい。大丈夫と聞かれて、素直に「大丈夫じゃない」と答えられる人はどれくらいいるのだろう。「大丈夫?」と聞く側は、相手が「大丈夫だよ」と返してくれるのを前提に聞いているような気がしてしまう。


「大丈夫ならよかった」


 マリがベッドに腰掛けたので、僕はその横に座った。横から見ると、胸の膨らみがよりくっきりと分かる。ニット越しの胸ってなんでこんなにエロいのだろうか。触りたい衝動が簡単に身体中に広がっていく。

 さっきは無言で触ろうとして手を弾かれたが、今はもうセックスの了承が取れている。なので無言でも触っていいのかもしれないけど、マリの気持ちを確かめるために念を押して聞いてみる。


「今度は触っていい?」

「…」


 マリは何も言わなかったが、ほんの少しだけ軽く頷いた。それを肯定の合図と捉え、僕は綺麗な曲線を描いた胸に手を重ねる。


「あっ…」


 胸に触れた瞬間、マリは少し体を縮こませた。まだ服の上から軽く触れただけだ。もしかしたら、感じやすいのかもしれない。


「マリ、顔上げて」


 そう言ってマリの顔を上げさせ、僕はキスをした。もう涙のしょっぱい味はしない。マリの涙は完全に乾ききっていた。

 舌を口の中へと差し込むと、マリはすぐに激しく舌を絡ませ、僕の口の中を円を描くように犯してきた。そして僕の舌をフェラするようにしゃぶり始める。

 さっきとは全く違うキスだ。興奮が高まってくる。女性の方から求めてくるキスはたまらなくエロい。

 僕は興奮を抑えきれずに、胸を揉んだまま、マリをベッドに押し倒した。そして激しくキスを交わしながら、大きな動きで胸を揉んだ。マリも僕の首の後ろに手を回し「はぁはぁ」と言いながら舌を動かしている。互いに体をくねらせ、呼吸が激しくなる。もう止められそうにない。

 僕はマリのニットをまくった。ブラ越しの胸があらわになる。上にまくられたニット、下にブラに挟まれた胸はなぜかものすごくエロい。ブラを少し下にずらすと、茶色くて丸い可愛らしい乳首があらわになった。それを人差し指で弾きながら、舌をより激しく絡ませていく。


「あっん…」


 吐息を漏らしたマリは顔を下に動かそうとしたが、僕は逃さまいとキスをした。胸を揉んだり乳首を触ったりすると、マリの呼吸音があからさまにいやらしくなった。しかし僕はそれを塞ぐようにキスをする。なぜだか、マリとキスをしたいという欲望が止まらなかった。

 覆いかぶさりながら胸を触りキスをしていると、マリは首に回していた手をほどき、僕の股間を撫で始めた。あっという間に僕のモノはギンギンになった。女性の方から何も言わずにモノを触ってもらえるのはやはり嬉しい。もしかしたら、マリは元カレとたくさんセックスしていたかもしれない、そう思った。


「触りたかったの?」


 僕は唇を離してマリにそう聞いた。


「…恥ずかしい…」


 マリは恥ずかしそうに横をむく。長い黒髪が、マリの横顔を隠した。

 僕はズボンだけを脱いだ。そしてベッドの上で膝立ちになり、マリの手を股間に誘導する。


「もっと触って欲しいな」


 マリは黒髪の間からチラリとこちらを見ながら、下着の上から股間をモミモミした。その手つきがいやらしく、モノはどんどん大きくなっていく。


「大きくなってる…」


 主張の強い顔をしたマリの恥じらう姿は良いギャップだった。しかしその言葉や態度とは裏腹に、モノをあつかう手つきは慣れていた。裏筋を下から撫で上げるように触ったり、指先で亀頭を撫でたりなど、バリエーションを加えながらモノをいやらしく触ってくれた。

 さらにマリは、下着の中に自ら手を入れてモノを取り出した。

 マリは顔を未だ横に向けたまま、黒髪の隙間からモノを眺めている。根元の皮を上下に動かしたり、モノ全体を回転するようにシゴいたりと、手コキを楽しんでいた。


「触り方エロいね」


 亀頭の先端から我慢汁が溢れ出た。


「わぁ。なんかでた」


 我慢汁に触れたマリは、子供のような好奇に満ち溢れた声を上げた。そんなリアクションをされたら、もっと要求したくなってしまう。もっと楽しんでいいよ、と言いたくなってしまう。

 僕はマリにモノを触らせながら、ベッドの下に降りた。そして寝転がっているマリの顔の前にモノが来るように移動する。


「マリの好きなようにしていいよ」


 そう言うと、マリはこちらを見上げて無邪気に笑った。僕の苦手な主張の強い顔のはずなのに、今は少女のような可愛らしさを見せている。目が輝いている。セックスというフィルターを通したら、どんな女性でもそう見えてしまうのだろうか。はたまた、これはマリ本来が持っていた特性なのだろうか。


「…好きにしていいの?」


 マリは恥じらいを見せながそう言った。セックス中の恥じらいはたまらない。これはマリがもともと持っていた特性かもしれない、と納得する。


「いいよ」

「…うん」


 マリは舌先で我慢汁をペロリと舐めた。


「しょっぱい」


 そして口を大きく広げてモノを含み、フェラを始めた。

 膨張した亀頭にマリの舌が絡まり、ゾクゾクとした刺激が全身を駆け巡る。マリの口の中は温かかった。寝転がりながら口をすぼめてしゃぶるマリの横顔から性の匂いがダダ漏れしている。どちらかといえば美人系に分類されるマリのフェラ顔はたまらなく美しかった。

 手で軽くしごきながら、マリはしゃぶり続けている。ときおり口からモノを出し、裏筋を舐め上げたりしてくれる。マリの舌は薄めで長い。モノの裏筋を見つめる姿はまるで美しい魔女のようだった。


「マリ、舐めるの上手だね」

「…ほんと?」

「うん、めちゃくちゃ気持ちい」

「…嬉しい」


 褒められて嬉しかったのか、マリは「ふふ」と笑い、寝転がっている体をこちらに向けさせた。そして両手を僕の腰の部分に回してがっしりと掴み、少しだけ顔を浮かして激しく頭を振ってしゃぶり始めた。


ジュボッジュボッジュボッ


 ヒップホップのリズムを刻むように、マリは顔を右、左と傾けながらテンポよくモノをしゃぶる。口の中で舌も激しく動いており、僕のモノはより固くなっていた。限界が近づいてきている。このままマリの口の奥に射精したい気分だ。マリの動きに合わせて、僕の腰も自然と動き始める。


「や、やばい、めっちゃ気持ちいいよ」


 思わずそう声が漏れる。


「きもふぃ?」


 マリがモノを咥えながら上目遣いでこちらを見た。


「やばい、もう出ちゃうかも」


 そう言うと、マリはモノを口から吐き出す。モノは唾液でヌメヌメとテカっていた。


「口の中で出してもいいよ?」


 やはり、マリは元カレと相当セックスしていたのかもしれない。セックスの経験が浅かったら「口に出していい」という言葉は女性の口から出てこないだろう。なぜだか、ザワザワとした気持ちが胸に広がる。

 

「いや、口の中には出さない」


 ラブホテルに入ってからずっとマリの元カレの影がチラついている。僕はマリと付き合っていないし、マリ自身は無意識だろうが、僕は元カレと比べられているような感覚になっていた。


「じゃあ、脱がすね」


 僕は再びベッドの上に乗り、マリの下半身の方へ回ってズボンを脱がした。白くてすらっとした美脚があらわになる。僕はふくらはぎに舌をあて、ゆっくりとマリのアソコに向けて舐め上げていった。


「ちょっと、恥ずかしいよ…」


 マリはアソコに両手を当てて足を閉じた。偶然にもマリの足に僕の顔が挟まった。両頬にマリのモチモチとしたふとともの体温を感じる。僕は顔をずらし、マリの内ももを舐めた。


「ひゃ!」


 マリが体を起き上がらせて、手で僕の頭を抑えた。


「くすぐったいよぉ」

「ごめん」

「それに恥ずかしいし」

「気持ちよくしてくれたから、お返しがしたかったんだ」

「お返し?」


 僕は視線をマリのアソコへと向ける。


「ここを舐めたい」

「え、舐めるの?」

「うん」


 マリは僕の顔を押さえてない方の手で、自分のアソコを隠した。


「恥ずかしいからダメ」

「でも濡れてないと入らないよ」

「濡れてないと…」


 マリが自分のアソコに目をやる。手が少し動くのを僕は見逃さなかった。


「もしかして…」


 僕はマリのアソコに手を伸ばす。


「だめ…」


 マリの口からそう声が漏れるも、僕はマリの手をどかして、パンティの上からアソコを触った。


「すごい…」


 思わず口からそう声が漏れた。マリのパンティは大雨に濡れた服のようにグショグショに濡れていた。パンティの上から触ったはずなのに、僕の指先はアソコに入れたのかと思うほどヌメヌメしていた。


「濡れやすいの?」

「わからない…」


 マリの顔が微笑みに変わる。


「けど、よく分からないけど、元カレには褒められた」


 マリは少し誇らしそうな表情を見せた。マリにとって元カレがとても偉大な存在であることを痛感する。元カレに褒められたアソコを持っているというのは、マリにとって自慢するほどのことなのだ。マリにとって元カレとはそれほどの存在なのだ。


「そうなんだね」


 それでも、今は僕とセックスしようとしている。だから、元カレのことは忘れてほしい、出さないでほしい。


「とりあえず、舐めていい?」


 話題を変えたくて、セックスをしたくて、そう言った。

 しかし、マリは首を横に振る。


「恥ずかしいから…だめ」


 「元カレじゃないから?」という思いが頭に浮かぶ。

 ここを舐めるのは元カレだけなのか。元カレに褒められた部分だから汚さないよう大切にしておきたいのか。マリの真意は分からないけど、顔も名前も知らない元カレに僕は嫉妬し始めていた。


「じゃあ、もう挿れるね」


 元カレが褒めたアソコ。そこにもう、僕のモノをぶち込んでやりたかった。そうすれば、嫉妬心がなくなるかもしれない。


「…うん」


 僕はマリのパンティを脱がさせずに横にずらして、アソコを露出させた。マリのアソコは指先で少し押せば破裂しそうなほどぷっくらと膨らんでいて、ベチョベチョに濡れていた。

 

「挿れるね」


 僕は枕元にあるコンドームを手に取り、モノに取り付ける。そして元カレに褒められたというマリにとって自慢のアソコに、元カレへの嫉妬心ではち切れてしまいそうなほど大きくなったモノをあてがった。


「うん」


 マリが軽く頷く。ニットがまくられ、ブラが下げられ、乳首があらわになっている。下半身を見るとパンティは履いたまま。真っ裸ではない乱れたその姿が、マリと僕の心情をあらわしていた。


「いくよ」


 ずぶ濡れのアソコに、モノがゆっくりと沈んでいく。


「あっはぁん…」


 体が細いからか、マリの中は狭く、締め付けが強かった。しかし、コンドーム越しにわかるほど濡れていたので、痛みは感じない。

 モノが奥に到達すると、僕はマリに覆いかぶさってキスをした。腰は振らず、モノとアソコの密着感を味わう。上の口と下の口。そのふたつの愛を表現するために開けられた空洞を埋めるために。


マリの中で元カレを超えた存在になりたい。


 マリとキスしながら、付き合ってもいないのに僕はそんなことを思った。

 どれくらいの期間付き合っていたか分からないが、マリと元カレは恋人だった以上、たくさんの時間を一緒に過ごしているはずだ。マリの反応から察するに、セックスもたくさんしているのだろう。今日会ったばかりの僕が、そのふたりの積み重ねた歴史に敵うわけがない。

 それでも、元カレを自分で忘れてほしいと思ってしまう、この気持ちは一体なんなのだろうか。好きという気持ちではないはずだ。マリの中で自分が一番でありたいという欲望は、僕のどの感情から生まれてくるのだろうか。

 これまで僕はたくさんのセックスをしてきた。誰とどんなセックスをしたか、今でも鮮明に覚えている。

 今はその女性たちと連絡を取っていないが、もし仮に誘われたとしたら、僕はセックスをしてしまうだろう。それがものすごく賢者モードになった相手や、全く気持ちよくないセックスをした相手だとしても。なぜなら、時を経てもう一度セックスをしたいと思ってもらえるということは、僕にとってとても嬉しいことだから。

 体を重ねたということは、友達という関係よりも特別な関係だ。もしかしたら僕は、みんなの中で特別でありたいのかもしれない。1番でいたいのかもしれない。女性に気持ち良くなってもらいたいと思うのも、セックスの練習をしたのも、相手を想った行動ではなく、自分という存在を相手の中に残したいという欲望から生まれたのかもしれない。

 それならば、女性はどうなのだろうか。マリはいま、僕の中の1番の女になりたいと思っているのだろうか。考えてみたけれど、その可能性は1ミリもないだろう。マリにとってこのセックスは、元カレを失った喪失感を埋めるために他ならない。


「じゃあ、腰振るね」


 僕は顔を上げて、腰を振り始める。スタイルの良い女性が服をはだけさせながら、胸を露出しモノを入れられている。ものすごく興奮する光景だ。主張の強いマリの顔が快楽に歪んでいく。セックスをしているという光景が目に入り、僕の中の興奮もより高まっていく。


この光景をいつまでも覚えていたい。


 モノを突かれているマリを見ながら、僕は強くそう思った。マリの中で1番になりたいという欲望が存在すると同時に、もうマリには会えないだろうという冷静さも僕の中には存在している。だってマリは「今日だけならいいよ」と言ったのだから。


「マリ、気持ち良いよ」


 乱れた服が、腰の振る動きに合わせてさらに乱れていく。ニットとブラの間からひょっこり顔を出した胸も卑猥に揺れていた。僕はその胸を両手でもみながら、さらに腰の振るスピードを早めていく。


「あん…あっあん…」


 マリは横を向いて口を手の甲で押さえながら、そう喘ぎ声を漏らした。腰の打ち付ける音とマリの喘ぎ声がハーモニーを奏でている。心地よい。ずっと聞いていたい卑猥なメロディだ。


「あっあん…あっ…んあああっ」


 マリの呼吸が激しくなっていく。それにつられ僕の呼吸や腰の動きも早くなっていく。僕は胸を触っていた手をマリの腰に移動させ、がっつり掴み腰を振った。


「きゃあんああっ」


 マリの声のトーンが高くなっていく。アソコの中もどんどん締まってくる。圧力が強い。締め付けが強すぎでモノが飛び出てしまいそうだ。負けないように、腰を振ってモノを中へと突き刺していく。もう限界はすぐそこまできていた。


「き、気持ちいぃよぉ」


 元カレと比べてどうですか? 元カレよりも気持ち良いセックスができていますか? そんな問いかけをモノに込めて、マリの奥を攻めていく。


「もうダメ、ダメっ」


 マリが両手を上げて枕を強く握った。腰がどんどん浮いてくる。僕はマリの腰をしっかりと両手で持ち、腰を振り続けた。マリが反るたびに締め付けもさらに強くなる。もう限界だった。

 

「い、いくよっ」


 このまま宙に浮いてしまいそうなほど浮き上がったマリの腰。その中にあるアソコの奥をめがけて、僕は白い液体を大量に放った。

 マリの腰は一度ブルンと震え、そのままドスンとベッドの上へと落ちた。


「はぁはぁはぁはぁ」


 マリは呼吸を荒くしたままその体勢でしばらく動かなかった。僕はゆっくりとモノを抜いてゴムを処理し、何気なく時間を確認した。


「あっ」


 僕は急いで寝転がっているマリの肩をトントンと叩く。


「マリ、もう時間だ。出れそう?」


 セックスの余韻で倒れているマリを急かすのは申し訳なかったが、性欲を放出した今、余計なお金は払いたくないという現実的な欲しか僕の中には残っていなかった。セックスをするために延長した。だからセックスが終わった今、もうここにいる用はない。


「そうなんだ…ちょっと待ってて…」


 マリは起き上がって服装を整えはじめた。胸をブラにしまい、まくられたニットをおろす。


「パンティは大丈夫?」

「そうだね…もういいや」


 マリは横にずらされたグショグショのパンティを元の位置に戻し、その上からズボンを履いた。


「ちょっと変な感じするけど…まあ、大丈夫」


 そうして僕らはラブホを出た。もちろん延長料金は僕が払った。


「あのさ」


 駅に向かう途中、僕はマリにそう声をかけた。こちらを振り返ったマリの顔は、やはり僕が苦手の主張の強い顔だった。


「なに?」


 また会えるかな、そう聞こうとして言葉を飲み込む。セックスが終わって軽い賢者モードになっていた。もう一度、あのセックスをしたいとは思うが、マリという女性ともう一度会いたいとはなかなか思えなかった。


「その…そのバックのブランド名、なんだっけ?」

「あぁ、これ。これね、ルイヴィトンだよ」


 そうかルイヴィトンか。わずかに心の中にあったモヤモヤが解かれた。思い出せない違和感から解放され、心が少し晴れやかになった。


「そっか。教えてくれてありがとう。そしたらさ…」


 わからなかった違和感が解放されて少し気分が良くなったので、僕はもう一度「また会えるかな?」と聞くために、マリに呼びかけた。

 しかし、マリは無意識だろうが、僕の言葉を塞ぐようにこう言った。


「これね、彼氏に買ってもらったの」


 マリは今日会った中で一番の笑顔を見せた。その眩しい笑顔に、僕の中にわずかに残った性欲はゆっくりと鎮火する焚き火の炎のようにスーッと静かに消えていった。

 違う男とセックスしたって、マリの中の大好きな元カレは消えない。マリの周りにはセックスしただけでは消えないほどの元カレとの思い出が、たくさんこびりついている。

 それでもマリは、元カレとヨリを戻せないと知っている。だからこそ、僕とセックスしたのかもしれない。自分がまだ元カレが好きだということ、それでも戻れないということ。その現実を受け入れていたからこそ、涙を流し、そしてセックスをしたのかもしれない。

 だから、けっきょく僕はマリの中の元カレに勝てないだろう。

 

「あのさ、マリ」


 いつかマリは僕のことを忘れてしまうだろう。


「今日のマリとのセックス」


 それでも。


「最高だったよ」


 それでも僕はきっと、マリのことを覚えている。


「ありがとう」


 ラブホテルの中で元カレを想い涙を流したマリ。その横でルイヴィトンの名前が思い出せなかった僕。そんなふたりがセックスをしたという事実。

 そんな事実を抱えながら、これからも2度と交わることないであろう、マリと僕の日常は進んでいく。

(文=隔たり)

 このカバンのブランドってなんだっけ。そう思ったとき、女の頬に涙が流れた。古い造りを誤魔化すようにリフォームされた、安いラブホテルの一室。壁はペンキが上塗りされてキレイになっているけれど、床や風呂にはまだ古さが残っている。まるでセックスをするためだけに整えられた部屋。その部屋の中で、女は泣いている。

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