【女と男の隔たり】元カレが忘れられない女:前編

 メンズサイゾーの【エロ体験談】で、前人未到の賞金レース6連覇を達成した常連投稿者・隔たり。投稿すれば賞金ゲットというほどの人気を誇った彼のことは、エロ体験談愛読者の皆さんであればよく覚えていることだろう。

 今連載では、そんな隔たりが「エロ」と「セックス」について考える。痴的好奇心旺盛なエロ体験談王者は、何を語るのか――。

 

【女と男の隔たり】元カレが忘れられない女:前編の画像1
※イメージ画像:Getty Imagesより

 

今日だけなら、いいよ


 このカバンのブランドってなんだっけ。そう思ったとき、女の頬に涙が流れた。

 古い造りを誤魔化すようにリフォームされた、安いラブホテルの一室。壁はペンキが上塗りされてキレイになっているけれど、床や風呂にはまだ古さが残っている。まるでセックスをするためだけに整えられた部屋。その部屋の中で、女は泣いている。


「大丈夫?」


 そう問いかけてみたけれど、女は何も答えず、涙を流しながら鼻をすすっている。なんだか面倒臭くなり、ソファに座っている女の横に置いてあるカバンに再び目を向けた。いったいなんていう名前のブランドだっけ。

 その名前を知ったところで喜びも感動もないことはわかっているけれど、答えが出ない時の違和感はむず痒い。つまり、答えが知りたいのではなく、違和感を消したいがために頭を働かす。

 しかし、なかなか名前は出てこない。もう考えるのにも飽きてしまった。携帯で調べようにも、女が泣いているというこの状況で携帯をいじるのは申し訳ない。そういえば、この子の名前もなんだっけ、とふと思う。


マイ? マナ? メリ?


 2文字だったような曖昧な記憶はあるが、やはり思い出せない。間違える覚悟で呼んでみようかなと思うも、名前を間違えたら女は傷ついてしまうだろう。僕だって名前を間違えられるのは嫌だ。なので、とりあえず名前を呼ばずに時をやり過ごそうと決める。

 名前も思い出せない女とラブホテルにいる。幼い頃の自分には想像できなかった未来だ。

 いま隣で泣いている女と僕は、マッチングアプリで知り合った。

 そのアプリは本名ではなくニックネームでも登録できる。女のアプリ上の名前は「あ。」だった。画像も登録されておらず、今思えば、よく画像も設定されていない女とラブホにこぎつけたなと、我ながら感心する。


「…やっぱりつらくて…」


 女は唐突にそう声を漏らした。なんだか久しぶりに声を聞いたような気もする。どれくらいぶりに聞いたっけと気になり、部屋の時計を確認すると、針は18時を指していた。ホテルに入ったのが17時。そこから約45分後くらいに泣き始めた気がするから、声を聞いたのは15分ぶりということになる。


「そっか…つらいよね」


 刻々と退室時間が近づいているが、不思議と焦る気持ちは出てこなかった。2時間休憩じゃなくて3時間休憩にすればよかったなとは少し思うも、時間が延びたからといってセックスできるとは限らない。可能性は増えるだろうけど、女が泣き続けているこの状況からどうセックスに持っていけばいいか、思いつかない。

 女はアプリでの名前を「あ。」として、画像も設定していなかったが、メッセージの返信はいたって普通だった。

 丁寧な文体で返ってくるし、質問すればちゃんと解答してくれる。悪い子ではないんだろうな、というのが文章から伝わってきたので、僕はご飯に誘った。

 僕にとって、女の見た目なんかどうでもよかった。ちゃんと会話ができるかの方が重要だった。なんなら、セックスができれば会話すら関係ない。女からはすぐに「行きたいです」と返信がきた。

 待ち合わせ場所は渋谷だった。

 いつも渋谷で誰かと待ち合わせするときはハチ公前を利用していたが、「いかにも待ち合わせしてます感は嫌なんです」と女が言ったので、スクランブル交差点を渡ったところにあるスタバで待ち合わせをすることになった。

 女曰く、カフェでコーヒーを飲みながら人を待つのは「人を待つという行為が2番目になるから気が楽」と言うことらしい。

 僕はお金がもったいないと思ったので、スタバの上の階にあるツタヤで時間を潰して女を待った。

 「着きました」と連絡がきて、僕はエスカレーターで下へと降りスタバへ向かった。ここのスタバは狭いわりに人がものすごく多い。ごちゃごちゃしている。ある意味、さすが渋谷と言うべきか。

 女から「紺色のニットにスキニージーンズをはいています」という見た目の情報をもらっていたので、その服装の女を探した。

 すると、窓際の一番端っこの席にそれらしき人が座っていた。この混雑具合で、よく席を確保できたなと感心する。もしかしたらずっと前から、そこに座っていたのかもしれない。

 女はコーヒーを片手に携帯をいじっていた。横にはブランドと思われる少し高そうなカバンが置いてある。ブランド名は思い出せない。けれど、そのカバンがそれなりにいい値段のするものだということはわかった。

 携帯に夢中になっている女の顔は長い黒髪に隠れていた。紺のニット越しに胸の膨らみがわかる。おそらくDカップぐらいはあるだろう。スキニージーンズもピタッとしていて、足がものすごく細く見えた。モデルのようなキレイなお姉さんだ。急に鼓動が激しくなる。まさか、「あ。」という名前に設定している女が、まさかモデルのような雰囲気をしているとは思わなかった。少しウキウキした気分で、声をかける。

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