北口階段に向かって歩きながら、会話を続ける。
「今日は学校帰りなのかな?」
「いいえ。今日はバイトだったので、バイト終わりです」
「へぇ。そうなんだぁ。勉強とバイトの両立って大変でしょ?」
「ま、まぁ、なんとかやれています」
「偉いなぁ。俺も大学生の時に夜10時から朝8時までバイトしてたんだ」
「え? そんなにですか?」
「うん。車が買いたくて無茶なシフトを入れてたんだ」
「凄いじゃないですか!」
「でもね。朝8時まで働いてたら1限目に出る気力がなくって、単位を落としまくってたよ」
「分かります。1限目って辛いですよね」
「うん。それで結局留年して5年間も大学生やってたよ」
「フフ、そういう人、ゼミの先輩にもいますよ」
「マリエちゃんは単位とか大丈夫なの?」
「はい。私は週に1、2回くらいしかシフトを入れてないので」
「うん、うん。無理しないのが一番だよね」
相手が女子大生の場合、こちらの大学時代の話を振って学歴の差がないことをさりげなくアピールしておく。
高卒や中卒女性の前では決して持ち出さない話題なのだが、TPOで使い分けている形だ。
「あ! そういえば聞くのを忘れてたけど、俺みたいなので大丈夫そうかな?」
「え? なにがですか?」
「ほら、実物の俺って写メの何百倍もエロそうな顔してるでしょ? ヒいてないかな?」
「そんなことないですよぉ。とっても優しそうです♪」
「あ、ありがとう。優しいのだけは間違いないし、マリエちゃんの嫌がることは絶対にしないから安心してね」
「はい!」
ここでしばし沈黙。
このタイミングで、彼女の方から「ショーイチさんこそ、私で大丈夫ですか?」と切り出してくると思っていたからだ。
しかし、彼女のほうから言い出すことはなかった。
大学デビューしたであろうマリエちゃん。それが上手くいってるのか、少しばかり自信があるのかもしれない。
ま、サクっとハメる分には問題ないので、気を取り直して会話を続行する。
「それじゃあ、このままホテルに向かうってことでいいのかな?」
「はい。お任せします」