「狭いところでゴメンね」
「わぁ、綺麗にしてるんですね」
「狭いから掃除も簡単だしね」
「狭くなんかないですよ。私のアパートなんかよりずっと広いですよ」
「そうなんだ」
「あれ? 換気扇がつけっぱなしですよ」
「ほら、俺ってヘビースモーカーでしょ? 今日はR子ちゃんが来るから、朝からずっと換気扇を回してるんだ」
「フフフ。そういうところ、ショーちゃんらしいなぁ」
「えっ?」
「そんなところまで気が回る男性って少ないですよ」
「そ、そうかなぁ」
「エッチの時もすごく気を使ってくれるのが伝わるし…」
「そんなに褒めないでよ。照れくさくなっちゃうからさ」
「フフフ。照れてるショーちゃんも可愛いですよ」
ノリノリで褒め殺してくるR子ちゃん。お株を奪われてしまったようで、なんとも歯痒い。
それにしても、3年近くのブランクを感じさせない距離の詰め方には驚かされた。元から人懐っこい性格ではあったが、まるで先週もデートしたようなノリだった。
「とりあえず、コーヒーでも入れるから座ってよ」
「はい」
「あっ! その前に、洗面所を教えるね。俺が先に手洗いとうがいをするから、R子ちゃんも使ってね」
「はぁい」
彼女が洗面所を使っている間にコーヒーを入れる。普段は安いインスタントコーヒーを飲んでいるが、見栄を張ってペーパードリップコーヒーを用意していた。
「ねぇ、R子ちゃん。砂糖とミルクはどうする?」
「それじゃあ、ミルクだけお願いします」
「了解。そこに座って待っててね」
「ねぇ、ショーちゃん。このドアの向こうは何?」
「そっちは寝室だよ。覗いてもいいよ」
「フフフ。どうしよっかなぁ。やっぱり後にしておくね」
「どうして?」
「あとのお楽しみにしたいから」
「ハハハ。俺と同じで、好きな食べ物は最後にとっておくタイプだね」
「フフフ。そうですね」