「それじゃあ、行こうか?」
「えっ?」
「ん? このままホテルに行くのは嫌なのかな?」
「そ、そんなことないです」
「それじゃあ、ついてきて」
「は、はい」
我ながらなんて分かりやすい態度なのだろう。
相手が可愛いコだったら、土下座する勢いで感謝の気持ちを全面に押し出し、会話を途切れさせてなるものかと頭脳をフル回転させる筆者。
しかし、今回の筆者は完全に別人のようだ。とはいえ、初対面のカヨちゃんにそんなことが分かるわけもない。
よしっ! 今日はクールな男を気取って“省エネモード”で射精という排泄行為を行うべ。
彼女の数歩先を歩きながら、そう覚悟を決めた。
その後、当たり障りのない世間話をしながらホテル街に到着。
いつもよりグレードの低いラブホテルにチェックインし、ふたりきりになった。
「カヨちゃんって、ああいうサイトでよく遊んでるの?」
「そ、そうですね。半年くらい前に登録して、何人かの人とやり取りしてました」
「そうなんだぁ。で、実際にこうして会うのは俺で何人目なの?」
「え、えっとぉ。ふ、ふたり目です」
「あれ? 意外と少ないんだね」
「は、はい…」
あっ! これはもしかして、相当顔パスされているのかも。
実際に会った人数を言い淀んだ彼女の反応を見て、そう気づいてしまった。
いくらクールを気取るつもりでも、相手の傷口に塩を塗り込むような真似はしたくない。ということで、慌てて話題を切り替えることにした。
「で、カヨちゃんはどんなエッチが好きなのかな?」
「す、好きなエッチですか?」
「うん。どうせなら、今日はカヨちゃんの好きなエッチになるようにしたいな」
「え、エエッ!? そんなこと言われたの初めてです」
「そうなの? でも、どうせ楽しむなら遠慮なんてしても意味がないでしょ?」
「そ、そうですね」
「だから、正直に教えてほしいな。痛いのと汚いの以外だったら、なんでも大丈夫だからさ」
「フフフ。私も痛いのや汚いのは苦手です」
「うん、うん」
「今だけでいいので、本当の恋人みたいなエッチがしたいです」
「了解! ラブラブエッチなら俺も大好きだよ。今日は世界で一番大好きなコとエッチするつもりになるね」
「あ、ありがとうございます」
ほっ。
密かに安堵のため息を漏らす筆者。もしも、
脇の下や足の指やアナルを舐めてくれと言われていたら、ブチ切れていたかもしれない。
相手が好みの女性だったら、言われるまでもなく全身を舐めまわすことだろう。だが、
カヨちゃんは断じて違う! 断じて違うのだから!!