ぐ、ぐぬぬっ…。
彼女の顔を視認した瞬間、背中に悪寒が走った。
黒縁の眼鏡をかけて登場したカヨちゃん。その眼鏡の向こう側にあったのは、ふたつの切れ込み…。
おいおい、遮光器土偶かよっ!!
ただ目が細いだけではなく、なんとも目つきが悪かった。あえて有名人に例えるのなら、元防衛大臣の石破氏だ。
なぁ、ショーイチ。たまには顔パスしたっていいんじゃね!? ここ何年も顔パスしてなかったけど、これは流石に無理筋じゃね!?
と、内なる悪魔ショーイチが語りかけてきた。
いやいや。ショーイチみたいにイケてないオッサンから顔パスされたら、彼女は深く傷ついてしまう。向こうから顔パスだと言い出さない限り、ここは応じてあげるしかないでしょ?
こちらは内なる天使ショーイチだ。
あぁぁぁ、いったいどうしたらいいのか。
生唾を何度も飲み込みながら、浅い呼吸を繰り返すばかりの筆者。
そうこうするうちに、カヨちゃんは目の前に立っていた。
「あ、あのぉ、サイトの人ですか?」
「うん。ショーイチだよ。カヨちゃんかな?」
「はいっ! そうです。良かったぁ、メールの印象通りですね」
「そ、そうかな?」
「はい。写真も貰っていたので、すぐに分かりました」
「そ、そうなんだ…」
ハキハキとした口調で明るく畳みかけてくるカヨちゃん。
愛嬌があると言えなくもないが、その口調とは裏腹に、彼女の目は微動だにしていなかった。
悪い夢でも見ているような気分になってしまう。
そんな筆者にお構いなしといった感じで会話を続けるカヨちゃん。
「今日は寒いなか、本当にありがとうございます」
「えっ、あっ、うん」
「もしかして待たせちゃいましたか?」
「い、いや。俺が早めに着いてただけだから」
「そうだったんですね。私ももう少し早く来ればよかったですね」
「そ、そんなことないよ」
そんな会話をしながらも、心の中では
顔パスしてくれ! 顔パスしてくれ! 顔パスしてくれぃ!!
と念じていた。しかし、残念ながらこちらの思いは通じなかった。どうやらカヨちゃんはテレパシー能力を持っていないようだ。
まっ、仕方あるまい。
いくら容姿に難があっても、マンコに貴賤はないはずだ。それが筆者の信条でもあるのだから、己を裏切るわけにもいかない。
彼女の容姿で無愛想だったら、速攻でクイックターンして人混みに紛れて去っていたところだ。しかし、懸命に語りかけてくるカヨちゃんに心が揺れ始めていた。
なぁに、室内を暗くすればいつも通りやれるはずだ!
そう己を納得させた。