【ニッポンの裏風俗】立ちんぼ

CYZODSC01775.jpg新大久保の立ちんぼ(2001年撮影)。当時『パッコン通り』と呼ばれた路地には白人がたまっていた。

 風俗が「神代の昔からある職業」と言われる所以、それこそが“立ちんぼ”の存在である。

 資本は、その身ひとつ。お金のため、行きずりの男に抱かれると腹をくくったら、盛り場の路地に立ち、スケベそうな男たちに物欲しげな視線を投げ掛けるだけ。セックスをするホテル代はもちろん客に出させる。他に必要なものがあるとすれば、胸を寄せて上げるブラくらいなものだ。

 立ちんぼとは、いわゆる『街娼』のこと。路地に立って直接客に声をかけ、セックスを商売にする風俗である。ルールのある風俗店ではないため、時間と内容は無制限。気に入った客とひと晩一緒にいようが10分で出ようが、フェラで抜こうが中出しさせようが、自分と客に文句がなければそれでかまわない。雨風がひどい晩には“出勤”しなくても誰にも怒られない。まさに、自由気ままな商売である。

 しかし、現実には彼女たちにも生活があり、家族を養っている女性も少なくない。毎晩コンスタントに同じ場所に立つことによって顧客を確保し、数をこなすためには回転を早める必要がある。

 ちなみに記者が経験した立ちんぼとの再短時間は、錦糸町の南米系と1万5,000円で正味20分であった(泣)。

 何の許可もスキルも必要ない自由な職業なので、人種も様々。10年ほど前は、南米や東欧と思われる白人女性が非常に多く、中国や東南アジアがそれに次いだ。

 しかし現在、白人はほとんど見られず、逆に増えているのが20代の日本人の女のコである。池袋駅北口付近や歌舞伎町のハイジア周辺、大阪の梅田地下街にある『泉の広場』には、援交目的で立つ女のコがあとを断たない。厳密には援交と立ちんぼは区別すべきとも思えるが、内容は寸分と違わない。

CYZODSC01297.jpg池袋の立ちんぼ(2001年撮影)。こんな派手なファッションの女のコが、ラブホの前で立っていたら、男なら誰でも目を奪われる。

 彼女たちの営業区域は、10年前に比べると非常に限られてきている。

 過去には東京の池袋北口や新大久保を始めとして、鴬谷、錦糸町、千葉の松戸、横浜の末吉町、名古屋の納屋橋、大阪の天王寺、京橋、広島の金山町、博多の春吉と、立ちんぼが集まる場所は少なくなかった。

 しかし、あまりに人数が増えすぎたのか取り締まりが強化され、壊滅もしくは激減して現在に至る、というのがどこの立ちんぼ街でも常識となっていた。

 ところが最近、復活の兆しのある場面に出くわした。旧ちょんの間街で有名な横浜黄金町の隣にある末吉町である。2004年にちょんの間が摘発されるとほぼ同時に立ちんぼの摘発も行われ、オカマをのぞいてほぼ壊滅していた。

 6月末、夜の末吉町を歩いてみると、あきらかにオカマではない女のコが複数路地に立っている。その数約20人。自称台湾人から中国語、韓国語を話す女性、国籍不明の白人と、人種も多様。女のコを遠巻きにウロウロする客と思われる男性もいて、これ以上増えると当局もだまっちゃいないと思える限界数であった。

CYZODSC00019.jpg末吉町の立ちんぼ(2002年撮影)。黄金町の対岸にある末吉町は白人立ちんぼの街となっていた。

 その逆に、一時は戻ったものの、再び衰退しているのが、名古屋の納屋橋である。

 「最も多い時期には200人はいた」(地元タクシー運転手)と言われるラブホ街には、2年程前には数人のグラマラスな金髪白人が戻っていたが、今年春に訪れた時には皆無。「今は週末でもほとんど見ない」(同)という。

「彼女たちは地回りに決められた営業区域があって、みかじめ料もとられているんです。だから、上がりとみかじめ料のバランス次第では、別の場所や別の業種に移ることもあるでしょう。日本人ならいろいろな手段があるけど、外人の場合、それも限定的ですけど」(名古屋の風俗ライター)

 自由で刹那的と思われる職業ですら様々な制約に縛られ、とても〝自由〟とは言いがたい現実がそこにある。立ちんぼが復活しない理由は、取り締まりの強化以外にそのあたりの理由があるのかもしれない。
(写真・文=松本雷太/著書『風俗体験ルポ やってみたら、こうだった<激安風俗>編』宝島社)

【ニッポンの裏風俗 バックナンバー】
第1回 昭和初期にトリップしたかのような街並み、大阪・飛田新地
第2回 顔見せが無くても人気の新地…大阪五大新地
第3回 政治に翻弄された沖縄風俗
第4回 四国裏風俗ルポ 香川・徳島・高知
第5回 四国裏風俗ルポ・松山
第6回 生駒新地
第7回 全国のポン引き地帯
第8回 本サロ、本ヘル
第9回 温泉コンパニオン
第10回 お手頃料金で遊べる温泉風俗
第11回 連れ出しスナック
第12回 アングラな風俗街として認知されてきた青線
第13回 アジアン風俗~二極分化する中国エステ~
第14回 一発屋旅館

men's Pick Up

人気コンテンツ関連トピック