【現役セックスワーカーの素顔と本音】第2話

AV嬢発、デートクラブ経由の手コキ嬢・前編

5604192095_1c06791062.jpg※イメージ画像 photo by afunkydamsel from flickr

「田舎のほうが、娯楽が少ないから初エッチが早いんでしょ?」

 地方出身者なら、一度は言われたことがあるだろう。私事で恐縮だが、岩手県出身である筆者もしょっちゅう言われる言葉である。だが、地方出身者に聞いてみると、ほとんどの者が首を横に振る。B子(33歳)もそうだった。B子が生まれ育ったのは、東京から遠く離れた地方都市。新幹線を使っても3時間以上かかる距離である。

「田舎は、確かに娯楽は少ないかもしれない。でも、都会の中高生のほうが早熟な気がする。周囲にも、性体験があるコはほとんどいなかった」

 B子自身も、地元ではセックスはおろか、男女交際すら経験することなく、高校を卒業した。

 高校卒業後は、故郷を離れて都心の大学へ。最初の2年間は、高校時代と変わらず、彼氏が出来ることもなく、要するに処女のまま過ごす。都心の大学生=遊びまくっている、というイメージとは正反対の、講義をサボることもない真面目な大学生だった。そんなB子がようやくオトコのカラダを知ったのは二十歳の時。彼氏が出来たのかと思いきや、初体験の相手は、なんと「出会い系サイト」で知り合った男性だった。

 処女の女子大生が、いきなり出会い系サイトとは……、二十歳過ぎても処女であることに焦りを感じたのだろうか、はたまた小遣い稼ぎだろうか? B子に訊ねたところ、「友達が欲しくて出会い系を利用した」という、アンビリーバボーな答えが返ってきた。

「出会い系=カラダを求められる、とは夢にも思っていなかった。田舎から出てきて、周囲に友達が少なかったから、普通に友達を作ろうと思った」という。

 いやはや、地方出身の女子大生とは、こんなにもピュアなものなのか。相手には、行為前に処女であることをカミングアウトした。男性側も、まさか処女が出会い系サイトを利用しているとは夢にも思わなかったようで、「ビックリしていましたね」と、当時を思い出して朗らかに笑うB子。

 大学卒業後は、故郷には帰らず、東京で就職先を見つける。職種を聞いたところ、決してラクな腰掛けOL的な仕事内容ではなく、かなり忙しい業界のようだ。だが、真面目なB子は、その忙しさを苦と思うことはなかった。

「苦労は買ってでもするべきって思っていましたから」

 しかし、B子のその真面目さが凶と出てしまった。同期は、面倒な仕事・嫌な仕事を彼女に押しつけるようになっていく。確かに、苦労は買ってでもすべきとは思うけど……これは違うような気がする。損な役回りばかりさせられるのに、給与は同じ。そのことに段々疑問を感じるようになってきた。

 そういった、会社に対する腑に落ちない気持ちが沸くようになってきた頃、B子は街で声をかけられた。声をかけてきたのは、AVのスカウトマン

 「街頭でのスカウトを不審に思わなかったのか?」という問いに対しては、「不審っていうよりも、むしろ話をきちんと聞いてしまった」という。B子が育った地方都市には、街頭でのスカウトなど存在せず、キャッチセールスやナンパすらほとんどない。よって、「怪しい」という先入観がなかったようだ。「一生懸命話しているのだから、一生懸命聞かなきゃ」と思った。

 一生懸命聞いた話の内容が「AV出演」であることに、抵抗は持たなかったのだろうか。この点に関しては、「会社への不満が溜まっていた時期だったから、タイミングが合ったのかも」とのこと。どんなに頑張っても、テキトーに手を抜いている同期と同じ給料の会社よりも、頑張れば頑張ったぶんだけ稼げる……すなわち「認めてもらえる」という世界であることに魅力を感じた。B子は、AVへの出演を決意する。24歳だった。
(文=菊池 美佳子)

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