「こんにちは、ナオちゃんだよね?」
「あ、はい。ショーイチさんですよね?」
「う、うん。今日はよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
明るい声でハキハキと答えるナオちゃん。物怖じしているような様子は全くなく、人懐っこい笑顔が印象的だ。
「ね、念のために聞くけど、俺みたいなオッサンで本当に大丈夫?」
「はい♪ もちろんですよ」
こちらの問いに対し、間髪入れずに答えてくれるナオちゃん。どうやら年上の男性がタイプというのは本当みたいだ。
「じゃ、じゃあ、このままホテルに行くってことでいいかな?」
「はい。よろしくお願いします」
こうしてホテル街に向かって歩き始める。
それにしても本当に可愛い。こんなコがひとりで繁華街を歩いていたら、数メートル進む度にナンパされてもおかしくないだろう。
それがまたどうして出会える系サイトなんかで相手を探していたのか不思議に思えた。
「ナオちゃんは今学生なんだよね?」
「はい。一応4年制の大学に入ったばかりです」
「じゃあオンラインで講義を受けてる最中なのかな?」
「そうですね。まだあんまり学校に行けてないです」
「タイミングが悪かったよね。こんな状況じゃサークル活動とかもできなさそうだよね」
「元々サークル活動とかには興味ないんです」
「それはどうして?」
「同じくらいの年齢の男の人が苦手なんです。なんか怖くて、できれば接点を持ちたくないって感じです」
「へぇ。まぁ、なんとなく分かるよ。ナオちゃんくらいの年齢の男って本当に子供っぽいよね」
「分かってもらえます? 相手にしても疲れるだけなので、本当に嫌なんです」
「それで年上の男性がタイプって書いてたんだ?」
「はい」
「年齢差があっても平気なんだ?」
「そうですねぇ。さすがに40代以上の人とは話が合わないっていう感じだから、10コ上くらいが理想ですね」
「そ、そうなんだぁ。じゃあ、俺はぎりぎりセーフだったんだね」
「え?」
「ほ、ほら、俺は39歳だから、ナオちゃんと11歳年齢が離れてるでしょ」
「そういえばそうでしたね。でも、ショーイチさん若く見えるからあまり違和感ないですよ」
「そ、それなら良かったよ」
い、言えない。本当は今年52歳になるオッサンだと、口が裂けても言うわけにはいかない。
出会える系サイトで遊ぶ際、不意に干支を尋ねられてもすぐに即答できるように、実年齢マイナス12歳で通している筆者。
子供の頃は自分の童顔が好きになれなかったが、今ではこんな顔に産んでくれた両親にただただ感謝するばかりだ。
しかし、あまり年齢の話をしているといつボロが出るか分かったものではない。当たり障りのない会話に切り替えることにしたのである。
そして、いつもよりグレードの高いラブホテルにチェックイン。部屋でふたりきりになったところで、もう少し突っ込んだ話題を振ってみることにした。