ぐぬぬぬッ!
怒りで体温が上昇したような感じだ。
自称ポチャ体型の女性に騙されるのはこれで何度目だろうか? 少なくとも100回は越えているだろう。この怒りは彼女に向けてのものではなく、間抜けな自分自身に対してのものだ。
この時の時刻は21時30分だった。まだまだ出会える系サイトは過熱している時間帯なので、ここでごめんなさいしてもすぐに次の相手を見つけることができるだろう。
問題はどうやって断るかだ。このままスルーしても良かったのだが、できるだけそんな真似はしたくない。正々堂々と胸を張りながらごめんなさいするべきだ。
そんな事を考えていたら、サヤカちゃんらしき肉塊と目が合ってしまった。
スタスタスタ。
真っすぐこちらに向かってくる肉塊。否、スタスタなんて可愛いものじゃない。ドスンドスンと逞しい足音だった。
「あ、あのぉ。ショーイチさんですよね?」
「あ、え、う、うん」
先手を取られてしまい、思わずキョドってしまった。
綺麗な女性や可愛いコ相手ならいくらでもアドリブで対応できるのだが、残念な女性の場合は咄嗟に言葉が浮かんでこないのだ。
「わ、私みたいなので大丈夫ですか?」
いきなり本質を突いてきたサヤカちゃん。こうも下手に出てくるということは、しょっちゅう顔パスされているのかもしれない。
全ての女性に無償の愛を捧げている筆者だが、自分がいい女だと勘違いしている肉塊は対象外である。
その点、目の前のサヤカちゃんは己をわきまえているようだった。
なんて返答しようかと頭をフル回転させながら、彼女の顔を観察する。
オロっ? よく見たら、元SDN48の野呂佳代に似てるんじゃネ?
幸か不幸か、サヤカちゃんの顔は筆者の大好物であるタヌキ系だった。顔の周囲はそこまでデブといった感じではなく、ぎりぎり許容範囲と言えそうだ。
ま、今日は寒いし、肉布団として見ればなんとかイケそうかも?
回れ右して逃げ出したい気持ちを抑え込み、応じることにした。
「それは俺のセリフだよ。俺みたいなスケベそうな男で大丈夫?」
「えぇっ、そんな風に見えないです。優しそうで、す、素敵です」
キュン♪
我ながらなんてチョロい男なのだろう。褒められ慣れていない筆者は、社交辞令の褒め言葉であっても真に受けてしまう。そして、褒めてくれた相手に恋心を抱いてしまうのだ。
うん、うん。性格も良さそうだし、これならアリよりのアリだよな?
ますますその気になってしまった。
「と、とりあえず歩きながら話そうか?」
「はい」
「このままホテルに向かうってことでいいかな?」
「もちろんです。ショーイチさんにお任せします」
こうしてホテル街に向かって歩き始めることに。