「こんばんは、U子ちゃん」
「こ、こんばんは」
「今日はありがとうね。こうして来てもらえてすっごく嬉しいよ」
「こ、こちらこそ、ありがとうございます」
「仕事が終わってから直接来たんでしょ。疲れていない?」
「だ、大丈夫です」
「ここじゃちょっと話しにくいから、少し移動しようか」
「は、はい」
アルタの横の階段を降り、地下街に誘導。ラブホテル街に向かいながら会話を続けた。
「実際の俺を見て、ビックリしていない?」
「えっ?」
「想像していたより何百倍もスケベそうな顔をしてるでしょ?」
「そ、そんなことないです」
「ダメだよ、そんなんじゃ。こういう顔こそスケベなんだから、気を付けないと騙されちゃうよ」
「えっ?」
「あっ! もちろん俺は騙したり、嘘をついたりしないから安心してね」
「は、はい」
「本当に大丈夫?」
「も、もちろんです」
「それじゃあ、このままホテルに行くってことでいいかな?」
「は、はい。よろしくお願いします」
緊張が解けていないのかU子ちゃんの肩は強張っていて、見ていて痛々しいくらいだった。
「やっぱり緊張しちゃうよね」
「は、はい」
「でも安心して。俺たちは何ひとつ悪いことしてないんだから」
「えっ?」
「ほら、お互い独身だし、彼氏彼女もいないわけでしょ?」
「は、はい」
「だから、正々堂々、誰にも迷惑をかけずにデートできるんだからさ」
「そ、そうですね」
「それにしても、本当にU子ちゃんって可愛いね。もらっていた写真以上だから、すっごく驚いちゃったよ」
「そ、そんなことないです」
「いやいやいや。さっきも言ったけど、今日は絶対に嘘をつかないから、俺の言うことは100パーセント信じてほしいな」
「わ、わかりました」
「ちなみに、職場から新宿まではどのくらいだったの?」
「だいたい40分くらいです」
「そんなに近いの? たしか職場って神奈川だよね?」
「新宿なら乗り換えなしで来れるので…」
「そうかぁ。それなら良かったよ」
「ショーイチさんは新宿にお住まいなんですよね?」
「うん。でも端っこのほうだから、ここに来るにはバスで20分くらいかかるんだ」
「へぇ。そうなんですか」
「仕事が終わったばかりで疲れていない?」
「そ、それは平気です」
「メールをもらったのが一昨日だったから、心の準備は大丈夫なのかな?」
「だ、大丈夫です!」
「それじゃあ、手をつないでもいいかな?」
「あ、あの…。腕を組んでもいいですか?」
「えっ、いいの? そっちのほうがずっと嬉しいな」
「そ、それじゃあ」
そう言うと、U子ちゃんは筆者の左腕に手をまわしてきた。
こんな若くて可愛いコと腕を組んで歩けるだなんて!
脳内麻薬がドピュドピュと分泌され、あっという間に多幸感に包まれる。
思わず、このままラブホテルに向かうのではなく、歌舞伎町を1時間くらい練り歩いて優越感に浸りたくなってしまった。