もうひとつのAKB48 「干され」の星たちが選んだ道

 グループの中心的存在だった前田敦子の卒業や、指原莉乃の彼氏発覚、合コン報道などのスキャンダル連発にも動じることなく、毎日のようにメディアに出ているAKB48。母体が大きくなるにつれて、メディア選抜でAKBの顔として活躍するメンバー以外の、いわゆる「干されメンバー」の活動が実を結びつつある。

 現在のAKBのシングル曲は、ただでさえ少ない20名前後の定員に、名古屋のSKE48や大阪のNMB48の中心メンバーも入れて選抜されている。何年も劇場公演などで頑張っているメンバーでも、ほとんど選出されたことがない者は少なくない。人気上位組が露出し続けているため、選抜もれメンバーは、ほとんどがテレビで歌うチャンスさえもらえないのが現状だ。それどころか、宮澤佐江や高城亜樹といった選抜常連だったメンバーを海外に留学させて枠を空けないと、次世代が育てられないという動脈硬化を起こしている。

 この現状は、特に干されている子にとっては危機的状況にも見えるが、実はそこまで大きなダメージというわけではないらしい。というのも、今でこそ「国民的アイドルグループ」扱いのAKBだが、元々、このグループは「会いに行けるアイドル」として、毎日劇場で公演しながら、自分のスキルを高め、夢を追うチャンスをつかむというコンセプトで始められた、いわば『プロジェクト』。特に古いメンバーには「一つの通過点」という認識を持つ者が多く、AKBをきっかけにして、自分の目標を達成するべく努力すればいいという空気を作っているという。

 そして、この動脈硬化状況に反比例する形で、個人活動が活性化してきたメンバーが、この「選抜に入れない」干されメンバーから出てきているのである。

 その代表例が、元チームKキャプテン秋元才加。歌唱力はAKBでも1位2位を争う実力者であり、バラエティでも高いスキルを発揮するAKB大ブレイクの功労者の一人だが、秋元康氏から「中高生をイメージするAKBのシングル曲ではもう選抜には選ばない」と通達され、総選挙でも20位で選抜入りはできなかった。しかしながら、舞台『ローマの休日』で「文学座」の荘田由紀とWキャストで主演、NHKのドラマでも主演を果たすなど、女優としての評価を地道に高めている。

 また、秋元とともに、ダンスヴォーカルユニットDiVAを結成している増田有華は、加入直後からずば抜けた歌唱力を持ち、ルックスも悪くもないにもかかわらず、ブレイク直前に選抜メンバーから外されてしまった干されの代名詞的存在。ところが、その間にさらに歌唱力を洗練させ、なおかつダンススキルや演技力まで磨き上げた結果、宮本亜門ミュージカル『ウィズ~オズの魔法使い~』の主演に抜擢されるに至った。宮本氏はもちろん、共演の森公美子や陣内孝則らにも大絶賛されている。

 研究生から正規メンバーへの昇格に2年半もかかり、後輩にも次々抜かれていった苦労人だった大家志津香は、じゃんけん大会以外は選抜経験が一度もないメンバーであるが、テレビのバラエティ番組での独特の存在感が評価され、AKBでも数少ないゴールデン番組のレギュラー枠を持っている。単独で民放のゴールデン番組に出ているのは『ほこ×たて』(フジテレビ系)の大島優子と『くりぃむクイズ ミラクル9』(テレビ朝日系)の大家のみだ。

 また、先日合コン騒動が伝えられた佐藤亜美菜は、第一回総選挙で選抜入りしながら、PVにほとんど映してもらえなかったという悲劇のヒロインであったが、ラジオ番組での安定感、下ネタもぶちかます親しみやすさで存在感を高め、さらに独特の声を生かして声優の仕事にも活躍の場を広げている。

 変わったところでは、3期生の田名部未来。アクション俳優が目標という、スレンダーな美形で、モデルになってもいい美女だが、選抜経験はじゃんけん選抜が1回だけという寂しさ。しかしながら、地元滋賀県で冠番組を持ち、交通安全ふるさと大使として地元に密着した活動で、しっかりと存在感を示している。

 AKBをアイドルユニットとしてみれば、落ち目だとか、メンバー間でも推されだ干されだといろいろな問題も出てくるかもしれないが、こうして「プロジェクト」として見れば、様々な可能性がまだまだ存在していることに気づくだろう。ただ、劇場でのチーム公演は2010年以降新しいプログラムを更新しておらず、公演そのものにマンネリ感が漂っていることは否めない。今後さらなる可能性を広げるためには、新公演のお披露目がマストだろう。

 元々、AKBというのは、アイドルの売り出しの常套手段だったテレビ露出を控え、劇場を中心にに、CSやネットなど、様々な非“マス”メディアから、火がついたグループであるということを忘れては楽しめないのかもしれない。
(文=潜水亭沈没)

men's Pick Up