2011勝手にお笑い芸人ヒットランキング

 今月発売された「日経エンタテインメント!No.178」(日経BP社)が今年のヒット番付を特集している。見事1位に輝いたのは、驚異的なCDセールスを連発しネットやテレビなど幅広く活躍するAKB48で、2位には、近頃”出過ぎ”が心配される天才子役・芦田愛菜が続き、3位には何かと物議をかもしたK-POPが選出されたていた。【セールス】【新規性・ブレイク度】【社会影響度】という3項目を基準に選んだという「日経エンタ」の「2011ヒット番付トップ50」は、同誌独自の鋭い感覚で時代を切り取った年末の風物詩として毎年興味深く拝読している。そこで、今記事では、同誌にならい2011年にヒットした芸人をランキングしたい。もちろん「日経エンタ」同様に、「メンズサイゾーが選ぶ」という建前だ。

 「日経エンタ」でも記事にされているが、2011年のバラエティーはどこか元気がなかった。同誌によれば、今年のバラエティー番組で平均視聴率15%を超えた数は4分の1に減少したという。そのトップは『行列のできる法律事務所』(日本テレビ系)で平均15.7%。続く2位は『ザ! 世界仰天ニュース』(日本テレビ系)の15.0%。わずかこの2番組だけが、平均15%という壁を越えたことになる。なぜここに年間平均視聴率20%を軽く超える『笑点』(日本テレビ系)が入らないのかはわからないが、そのお化け番組を度外視してもバラエティー全体の視聴率が低迷しているのは数字が示しているといえる。

 しかし、いくらテレビバラエティーに元気がないとはいえ、その中で活躍するタレントには当然ながら「2011大ヒット」といえる芸人もいる。その筆頭なのが、先日「年間テレビ出演回数」でトップを獲得した有吉弘行だろう。

 地上波テレビの出演回数499回。有吉はほぼ1日に1.4回ほどテレビに出ている計算になる。なぜ彼がここまでテレビに出るのか、その分析については、先日当メンズサイゾーに寄稿した「有吉化する関西芸人」(https://www.menscyzo.com/2011/12/post_3294.html)という記事を読んでもらいたい。読むのが面倒くさいという読者のために、一言で結論を述べると、今の有吉の笑いが最先端にあるということだ。つまり彼が出演すると、その番組の笑いが流行の先端になる。だから彼はヒットし、これだけテレビに呼ばれたのだ。

 そんな有吉に続いてヒットした芸人といえばナインティナインだろう。特に、ソロで初となる冠番組を始めた岡村隆史のはちきれんばかりの活躍は目を見張るものがあった。昨年の療養後、カメラの前でテンションを異様に高め張り上げる声には一種の悲壮感が漂っていた。しかし、今年に入りその悲壮感は消え、誰よりも大きな彼の声には、芸人の道を一心に歩くことを決意したようにうかがえる。時に激しくネットユーザーを非難する岡村だが、そういった言動も一種の覚悟から生まれるものなのだろう。そして、その覚悟が今年の彼の活躍を支えたといえる。

 その岡村と同世代といえる中堅ベテラン勢もまた今年ヒットした芸人として挙げられるだろう。特にさまぁ~ずはレギュラー本数19本を数える活躍ぶり。中でも『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京系)は、ゴールデンタイムに進出するなど、今や彼らの代名詞となるヒット番組となった。もちろん、彼らは今年ブレイクというわけではないが、冒頭に紹介した「日経エンタ」の「2011好きな芸人ランキング」では初のトップ10入りを果たし、しかもいきなりの2位という結果は、彼らの人気が不動のものになったことを示しているといえるだろう。また彼ら同様に、くりぃむしちゅ~やネプチューンといった中堅ベテラン勢が、2000年代のネタブームから台頭してきた若手を抑えて、ことごとく番組を継続させたという点は、静かなヒットだったといっていいだろう。
 
 そんな若手の中で、磐石の態勢を整えた関東の若手芸人もヒットしたといえる。特に昨年に引き続きテレビ出演回数でトップ10入りを果たしたオードリーと女芸人の代名詞的存在になった柳原可奈子の活躍は、今年に入ってより当たり前の存在になった印象がある。加えて『ピカルの定理』(フジテレビ系)のレギュラーに抜擢された渡辺直美もヒットした関東の若手芸人といえる。

 若手の活躍では関東勢が一歩リードという2011年だったが、その若手から頭一つ抜け出した存在となると、やはり吉本勢が強かった。特に、タカアンドトシ・ブラックマヨネーズ・チュートリアルという3組は、この世代でいち早く”若手”というカテゴリーから卒業した未来の大御所候補といえるだろう。2011年は、この3組がそれぞれその立場を確立した年といえる。抜群の好感度と安定感で国民的芸人に上り詰めた印象すらあるタカトシに、キー局のゴールデンタイムで冠番組を持ったブラマヨももはや若手とは言いがたい。チュートリアルの福田充徳は病気に泣いたが、フジテレビやNHKでキャスター業をこなす徳井義実は俳優としても確かな力を示し、芸人としての幅を広げた年だった。

 バラエティー全体を見渡せば関東芸人の活躍が目立った2011年。ここ数年の吉本の若手の勢いを考えると意外な結果といえるかもしれない。だが、この現象の裏には3.11の震災が強く影響しているように思われる。「日経エンタ」の記事では、震災の影響でバラエティーが低落傾向にあると指摘しているが、まさにそれが近年見られていた吉本の関西出身の若手の勢いをそいだといえる。つまり、震災後の視聴者は、なにがなんでも売れてやるとアピールするアクの強い刺激的な笑いより、さまぁ~ずのようなユルい笑いを求めたのではないか。安心して見ることのできるベテラン勢の活躍はまさにそれを反映しているといえる。震災の傷跡はまだまだ癒える気配がない。来年以降も、癒しを求めている視聴者が見たいバラエティーは刺激よりもほのぼのという感覚になるだろう。

(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

『第2図書係補佐』著:又吉直樹/幻冬舎

 
作家デビューがもっとも待たれる芸人・又吉の、本に対する愛情!! 

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