女性誌の広告といったら、豊胸手術を筆頭に、シミ消しや脂肪吸引など、美容整形の類いがほとんど。では、男性誌の広告はどうだろうか? 「もう1人で悩まないで」「オトコの悩み、遂に解決!」など、包茎矯正の広告が圧倒的多数かと思う(一部、早漏解決の広告もあり)。
包茎とは、説明するまでもなく、亀頭が包皮に覆われている状態を指す。一般的に、日本人男性は仮性包茎の人が多いといわれており、成人男性のうち60%は仮性包茎であるという説はあまりにも有名である。確かに、筆者が事前にアンケートをとったところ、35名中24名が「仮性包茎である」と告白。むろん、口頭のみの質問で、パンツを脱いでいただいて確認したわけではないのだが、わざわざ仮性包茎であるというウソをつく人はいないと思われるので、日本人に仮性包茎が多いという説は、あながち間違いではないようだ。念のため、仮性包茎の定義にも触れておこう。仮性包茎とは、平常時は亀頭が包皮に覆われているが、勃起すると自然と剥ける・もしくは手で剥くことが可能な状態を指す。ほとんどの男性が一般常識として把握している知識だが、意外にも、女性の中には仮性包茎がどのような状態かを理解していない人が多い。
「仮性包茎が、どのような状態を指すのかわからない」と女性側が言うのには、しかるべき理由がある。第一に、女性の体にはペニスが付いていないので、男性器の仕組みがイマイチ理解できないというのは、ごく当たり前のことだろう。「セックスの際に見ているではないか!」と思う人もいるかもしれないが、女性がペニスを見る機会というのは、勃起している場合がほとんどなので、平常時の包皮を被ったペニスにお目にかかるチャンスが滅多にないのだ。そして行為後は、女性は余韻に浸るタイプの人が多いので、萎んだペニスがどうなっているかを目ざとく確認することはほとんどない。また、仮性男性がそそくさとパンツをはいてしまったり毛布にくるまってしまうというケースもあるので、女性にとって「平常時のペニス」とは、秘密のベールに隠れた謎の物体であると言っても過言ではないだろう。
よって、仮性包茎であることを極端に気にする必要はない、という結論に達する。「仮性包茎は女性にモテない」「モテないどころか嫌われる」という一般論を見直す必要があるかもしれない。女性たちは、仮性包茎の定義を明確に把握しているわけではないのだから。もちろん、経験豊かな女性の中には、仮性包茎がなんたるかを理解している人もいる。経験豊かな女性でなくとも、行為の最中に何らかの原因でペニスが縮むハプニングに遭遇した女性は、「これが俗にいう仮性包茎か!」と気付くケースもあるだろう。問題はここからである。バレてしまった仮性包茎を、女性たちがどうとらえるか? 仮性男性にとっては非常に気になる部分であろう。
女性陣に聞いてみたところ、「何とも思わない」という意見が一番多かった。「平常時に包皮に覆われていたとしても、勃起時に剥けるのなら、セックスになんら支障はない」というのがその理由。匂いや恥垢に関しても、「清潔にしていれば気にならない」とのこと。仮性男性にとっては嬉しい回答結果である。
さらには、「何とも思わない」という域を超えて「むしろ仮性包茎が好きだ」という人も、ごく少数であるが存在する。「かわいいと思う」というスタンダードな意見から、「コンドームが外れにくい」という利便性重視派、はたまた「実は匂いフェチなので、仮性包茎のほうが好都合」というマニア性の高い意見も飛び出した。
しかし、どんなにメリットを聞かされても、「剥けていないよりは剥けていたほうが良い」ととらえる男性もいるだろう。だが海外では「ナチュラルペニス」といって、出生時に受けた包皮切除手術を、わざわざ復元する人もいるのだという。この背景には、20世紀後半に小児科学会から提出された、包皮切除を推奨しないというガイドラインが影響しているのだろう。そう考えると、日本の「ずるむけ至上主義」は、必ずしも正しいと言えないのではないだろうか。
そもそも、ずるむけだろうと仮性だろうと、セックススキルには何ら関係がない。ずるむけでもお粗末なセックスをする男性もいれば、仮性包茎でも極上のテクニックを持つ男性もいる。包皮の有無に踊らされ過ぎないようにしたいものだ。
とは言え、セックスとはカラダだけで行うものではなく、メンタル面も大いに関わってくる行為である。己の包皮が気になり、行為に集中できないという男性もいるだろう。そういった場合は、思いきって専門医を尋ねてみるのも選択肢のひとつとして大いにアリである。日本の包茎手術は、近年著しい発展を遂げているとのこと。セックスのたびに包皮に惑わされるよりも、ずるむけに生まれ変わり、本来の実力を存分に発揮していただきたいと願う。
(文=菊池 美佳子)