ネット投票に死角アリ!! 2ちゃんねるの「祭」10年史

2ch0128.jpg※画像は『2ちゃんねる』トップページより

 今月14日から「ドミノ・ピザ」で開催されていた、「イケメンドミノ25コンテスト」。ピザ屋で働いていたらホレちゃいそうなイケメンに投票してナンバーワンを決める、という趣旨で、2月6日まで投票が行われるはずだった。……が26日、このコンテストの中止が、サイト上でアナウンスされた。お察しの良い方は気づいていると思うが、その背景には、「2ちゃんねらー」による「組織票」の存在があった。

 2ちゃんねらーからの投票は、エントリーナンバー15の村嶋良太氏に集中。他の24名と比べて倍近い恰幅の村嶋氏こそ、「ミスター・ピザ」の名に相応しいと感じたネット住民が多数、ドミノ・ピザの公式サイトになだれこみ、投票を繰り返した。

 もとよりこの投票は、単なる「イケメン投票」ではない。その趣旨が、「この人が作ってくれたら、届けてくれたら、ドミノ・ピザがもっとおいしくなっちゃうかも♪」(ドミノ・ピザ公式サイトより)であることも考えれば、一番ピザが好きそうな村嶋氏に票が集中するのにも頷ける。
2ちゃんねらーらの努力により、村嶋氏は順調に票を伸ばしていたものの、情勢が変わったのが今月23日。何者かによって、エントリーナンバー 11の伊藤駿氏(イケメン)に、推計数十万票が投票される。2ちゃんねらーらも、対抗して村嶋氏への投票を続けるものの、出所の知れない伊藤票を前になすすべなくなってしまった。

 なんとも怪しい推移であるが、さらにこの後、投票用サーバー上のデータが破損したのか、各投票者の得票率が「88.88%」となる現象が発生。このことを受けて、前述のとおりドミノ・ピザは26日、コンテスト中止の知らせを掲載した。ネット上では、村嶋氏の上位入賞を快く思わないドミノ・ピザ側が介入し、「ハッキングされた」ことを表向きの理由としてコンテストを中止したのだと、まことしやかに囁かれている。

 では、この「ドミノ・ピザ祭」の問題点はどこにあったのか。少し長くなるが、過去10年間に2ちゃんねらーらが戦った「祭」のうち、ネット投票をその舞台とするものを、総ざらいで確認し、探ってみたい。

【2001年 田代祭】
 2001年12月、二度目の盗撮事件、そして覚せい剤使用の容疑で逮捕され、話題を振りまいていた田代まさし。そんな彼を、米国TIME誌の「パーソンオブザイヤー」にし、同誌の表紙にしようと2ちゃんねらーが「祭」を画策。日本からのこの組織票により、TIME誌のサイト管理者が何度削除しても、投票の第1位が「Masasi Tashiro」になってしまうという事態となった。結局のところこの投票結果は無視され、2001年の「パーソンオブザイヤー」には、同年に発生した米国同時多発テロで手腕を発揮した、ニューヨーク市のジュリアーニ市長が選出された。これが、2ちゃんねるにおける「祭」の発祥であるとされる。

 なお、このときに利用された連続投票用プログラムは、「田代砲」として有名である。現在では改良が加えられ、「メガ粒子田代砲 unlimited」や「トルネード田代砲改」、「超田代砲改 Ver.1.2 プチ改造大東亜共栄砲」などという亜種も登場している。ただし、これらの「兵器」は、投票用サーバーに過大な負荷をかける(「DDoS攻撃」に分類される)ことから、法律的にはグレーゾーンであり、同時に投票の主催者に、投票を無効とする口実を与えてしまうことから、現在では使用が自粛される傾向にある。

【2002年 モー娘。オーディション祭】  
 当時人気絶頂にあったアイドルユニット「モーニング娘。」の第6期メンバーを選出する「モー娘。LOVEオーディション2002」の投票が、インターネットを利用して開催された。 かくして、サイト上には全候補者の写真が掲載されることとなったわけだが、中には、お世辞にもカワイイとは言えないような候補者も。目ざとい2ちゃんねらーはこれを見るや否や、「このブサイクをモー娘。メンバーにしようぜ!!」と、投票サイトに押しかける。 これを受けて、主催者側は投票システムを変更。主催者側によって選ばれた10名への投票という、有名無実のものになった。

 結局、第6期のメンバーに選ばれたのは、投票で6位の道重さゆみ、9位の田中れいな、そして投票には不参加だった亀井絵里の3人。投票の結果は完全に無視されたといっていいだろう。
なお、このオーディションでは、主催者側が、応募者より送られた顔写真をネットに掲載することを本人にあらかじめ伝えていなかったという話もある。「ブサイク」としてネットに晒されてしまった少女たちは、ずさんな運営体制の被害者だったといえるかもしれない。

【2003年 川詐欺祭】  
 オールスターのファン投票制度を悪用した「祭」が、2003年の「川詐欺祭」。当時中日で年俸2億を獲得していながら、右肩の痛みのためにほとんど登板のなかったピッチャー・川崎憲次郎を、オールスターのファン投票で無理矢理1位にして「晒し者にする」という趣旨だった。「川詐欺」というのは、2 年間で4億円を受け取っていながら、一軍での活躍はおろか、二軍での登板もほとんどなかった川崎を、「中日から4億円だましとった男」として揶揄したあだ名である。

 結果的に川崎は91万票を獲得し、人気投票1位になったが、「球宴は今シーズン、実績を残している選手が出る場所」として辞退を表明。規約では、人気投票で選出された選手の辞退は認められていないが、コミッショナー事務局は特例としてこれを認めた。

 川崎投手は翌04年に現役を引退。投票に及んだ中には、インターネットの「祭」とは関係なく、川崎のかつての勇姿を見たいために投票した純粋なファンも含まれているとされるが、ケガから登板が絶望的だった以上、彼らによる票も、川崎投手を必要以上に追い込んでしまっていたのではないかと思われる。

 なお、この「川詐欺祭」で2ちゃんねらーが目を付けたのは、すべての選手が対象となり、また1人1日5票まで投票が可能(家族名義も用いられた)という制度。これを受けて事務局は、04年以降のオールスター人気投票について、「指定された選手の中から1人を選び、投票する」形に改めた。この登録投票制は、この後に開催される多くの人気投票に採用されることになり、オールスターのみならず、ネットで開催されるあらゆる種の投票に影響を与えたと言える。

【2008年 ポケモン・コイル祭】  
 2008年6月、人気アニメシリーズ『ポケットモンスター』の映画最新作公開に先駆けて、「Yahooきっず」で行われたのがポケモン人気投票。あらかじめ投票する対象は指定されており、ポケモンの代名詞ともなっている「ピカチュウ」、そして映画に登場する「シェイミ」が上位に食い込む、一種の出来レースであると見なされていた。

 そこで2ちゃんねらーらは、地味キャラである「コイル」を1位にしようと画策。この「コイル」は、全キャラクター中での知名度は低いほうであるものの、ポケモンの元祖となる「ポケットモンスター 赤・緑」では、洞窟などに頻繁に出現するため、古くから同作に馴染みの深いプレイヤーには、懐かしさを感じさせるキャラクターである。

 「言われてみればカワイイかも」というデザインも手伝って、コイルに投票が集中。ほどなく「祭」には投票ツールも投入されて、コイルが爆発的に票を伸ばし始める。

 2ちゃんねらーの「兵器」に狂いが生じたことからピカチュウに投票が集中する場面もあったが、サイト側が「Yahoo!アカウント1つごとに1回の投票」という形に投票形式を改めると同時に、「祭」は収束。途中、なぜか得票数が表示されなくなるという不透明なことも起こり、結局1位はシェイミ、2 位にコイルという結果になった。

 この「コイル祭」は、現在のところ、2ちゃんねらーが「田代砲」などの投票ツールを本格的に利用したことが確実視される、最後の「祭」となっている。

【2010年 イナズマイレブン・五条祭】  
 子ども向けのアニメ・ゲームとして人気の「イナズマイレブン」シリーズ。サッカーをテーマにした同作には、腐女子好みのイケメン美少年が多数登場することから、「やおい」などを趣味の範疇とするオタク女性たちのファンが多いことでも知られている。

 そんな「イナズマイレブン」の映画化に際してインターネット上で行われたファン投票が、「爆熱キャラクター人気投票」。当初は、腐女子人気の高い美少年キャラの「吹雪士郎」や「豪炎寺修也」、同作の主役「円堂守」が上位にランクインしていた。

 そこに2ちゃんねらーらが目を付け、投票対象となるキャラクターの中でも一番地味な「五条勝」への投票を呼びかけると、瞬く間に投票数を集めた五条が首位に。一部の腐女子のヒステリックな反応が火に油を注ぎ、「五条祭」は、近年にない盛り上がりを見せた。 「祭」当初こそ、「cookie消去」という小技によって連続投票が可能だったものの、運営側の対処によってそれが不可能になって以降の2ちゃんねらーは、「一日一条」というスローガンのもと、原始的な人海戦術によって、五条勝への投票を続けていくことになる。

 投票中盤以降、主役の円堂守の票の動きが恣意的だったことから、運営側の不正も疑われたが、結果的に五条勝は1位に。同時に、腐女子には不人気の女性キャラクターも上位にランクインさせるなど、「五条祭」はかつてない成功(?)のうちに幕を閉じた。

 元々は「3位までのキャラクターを壁紙にする」という公約だったものの、「祭」を受けて主催者側は、第10位までのキャラクターの壁紙画像を作成。本来の「イナズマイレブン」ファンにも配慮するという妙策によって、「誰も損しない」解決が図られたのは画期的なことであった。  

 さて、これらの10年の主な「祭」をふまえた上で、今年一発目の「ドミノ・ピザ祭」に思うことは、主催者サイドの、あまりにもずさんな運営体制である。第一に、極めて個性的なエントリーナンバー15、村嶋良太氏をエントリーさせていることに問題の根がある。2ちゃんねらーにツッコまれる余地をあえて残したとしか思えない。2ちゃんねるをはじめとするネット上では、「ピザ」はすなわち「デブ」を意味する。それをハナから逆手に取るつもりだったとしか思えない(彼の存在がなければ、投票期間中のサイトへのアクセス数は、半分から4分の1未満だったと思われる)。宣材写真を撮影し、本人のコメントまで掲載している以上、村嶋氏がナンバーワンになる可能性も織り込み済みでいて当然のはず。にもかかわらず、発生した「祭」を受け止めきれなかったとしたら、懐の浅さ以外のなに物でもない。

 もし仮に、データの改変によって村嶋氏以外の候補者を1位にしてコンテストを終えたところで、村嶋氏が圧倒的な票を獲得していた経緯を知る者には、それが「運営側の不正」であることは一目瞭然になってしまう。このコンテストを、「村嶋氏の優勝」以外の結果で終了させるには、何らかのトラブルを理由に、コンテストそのものを中止するしかなかったのでは? と邪推されてもおかしくない。

 少しでもルールにスキがあれば、それを弄ぶのが、ネット住民の嗜み。だが、あくまでもルールにしたがってやっている以上、それを責めることは不可能だ。たとえばネット投票のように、多数決をしようというときに、「人海戦術は卑怯」というような理屈が通じるわけがない。かといって、厳格で面白みがない投票には、野次馬的なネットユーザーは寄り付かず、高い広告効果が得られないのも事実。そういった点では、ネット投票というのは、ニューメディアのもつ最も難しい部分を象徴しているともいえるだろう。
(文=タコ野パウル)

「祝2011年 SOD女子社員 新春初脱ぎ(恥)赤面祭
発射無制限SP

 
祭りはみんなで楽しく。

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