【テリー・天野のメンズ的映画評 第4回】

仲里依紗のかわいさ全開!! アイドル映画の最高峰『時をかける少女』

tokikake_top.jpg『時をかける少女』オフィシャルサイトより

 『時をかける少女』といえば、1967年に筒井康隆の手により原作小説が発表されて以来、日本SF史上に燦然と輝くジュブナイル小説の傑作として長きにわたって愛され続けている名作。そして、その栄光を担ってきたのが、40年以上の歴史の中で数多く登場した映像化作品であることは想像に難くない。

 マスターテープの紛失により、現在では”幻の作品”と化しているNHK少年ドラマシリーズ『タイムトラベラー』(72年)を発端とし、数多くのクリエイターに影響を与えた大林宣彦監督による映画第一弾(85年)、そして一部アニメマニアの間で”知る人ぞ知る”存在であった細田守の名をメジャーに引き上げた06年のアニメ版など、これまで『時かけ』は5度のドラマ化、3度の映画化(アニメ版含む)が果たされている。また大林版の原田知世をはじめとし、南野陽子や内田有紀、安倍なつみといった顔ぶれが主演したことから、アイドル映画としてそちらのマニアからもアツい注目を浴びてきた。

 そんな『時かけ』が、今回4度目の映画化を果たしたのである。しかも主演は、06年のアニメ版でも声優として主役を務めた仲里依紗。同一作品において二度のヒロイン登板という快挙だ。

 仲里依紗はアニメ版でのブレイク以降、ドラマ『ハチワンダイバー』(フジテレビ系)での巨乳メイド棋士役で、惜しげもなく胸の谷間を見せて全国の男性視聴者を釘付けにし、映画『純喫茶磯辺』(08年)では父親役の宮迫博之との丁々発止のやりとりが話題を呼んだ。そして、昨年公開された太宰治原作の映画『パンドラの匣』でも、その飄々としたキャラクターで多くの支持を得ている。さらには今年公開の『ゼブラーマン2 ゼブラシティの逆襲』で、これまでの親しみ易いキャラを捨て、悪のヒロイン・ゼブラクイーン役として登場、主題歌も担当するなど、今後さらに活躍の場を広げそうな勢いを見せている。

tokikake_main.jpg今度は実写で全力疾走! (C)映画『時をかける少女』製作委員会2010


 筆者はアニメ版の公開当時、彼女にインタビューする機会に恵まれたが、屈託のない素直な女の子で、その素直さをいいことに大林版の有名な宣伝コピー、「いつも青春は、時をかける」を直接口にしてもらったのがいい思い出だ。

 さて、ヒロインとはいっても、今回彼女が演じるのは、原作の主役である芳山和子ではなく、一人娘の芳山あかり。アニメ版と同じく、筒井の原作をベースとした別の物語として描かれている。

 あかりは母・和子が勤める大学に合格し、充実した日々を送る高校生だ。しかし、合格発表の直後に和子が交通事故によって昏睡状態に陥ってしまう。そして彼女が意識を失う前に呟いた「過去に戻って、深町一夫に会わなくては……」のひと言を頼りに、母の研究所に忍び込んだあかりは、和子が開発したタイムリープの薬を発見し、彼女が目指していた1972年4月へと向かうことを決意する。

 しかし、あかりはミスによって、2年後の1974年2月に行き着いてしまう。仕方なく、偶然その場に居合わせた映画少年の大学生・涼太(中尾明慶)を丸め込み、彼の下宿を根城にして深町の行方を追う。そして女子高生時代の和子(石橋杏奈)や、現代では離れ離れになって暮らす父のゴテツ(青木崇高)との出会いを経て、遂に深町=ケン・ソゴル(石丸幹二)との対面を果たすのだ。

tokikake_sub.jpg映画少年・涼太を演じる中尾明慶もイイ味 (C)映画『時をかける少女』製作委員会2010

 このストーリーからうかがえるように、仲が演じるあかりは、彼女がアニメで演じた真琴と同じく、ちょっとおバカだけど明るく朗らかで、作品世界を全力疾走で駆け抜けるキャラクターとして描かれている。現代とは異なる時代のカルチャーギャップに戸惑いつつ、涼太との奇妙な同居生活を経て、母の夢を叶えようとする姿はひたすらコミカルに映る。

 ただ、涼太が自主製作映画を作っているという設定を活かし、劇中で撮られる映画を小道具として用いることが功を奏し、ノスタルジックな大林版以上に哀感漂う作品に仕上がっている。涼太が撮るアマチュア特撮映画を通じ、あかりと涼太、和子とゴテツの想いが交差し、その完成した作品が深い意味をもっていくところは、アマチュア作品で数多くの実績を積んできた谷口正晃監督ならではのこだわりだろう。

 また、深町や吾朗といったキャラクターのイメージは大林版に目配りし、リスペクトを伺わせるところもあるし、イマドキの女子高生から70年代サイケファッションまで着こなす、仲の抜群なスタイルも堪能できるなど、鑑賞眼の肥えた原作や映画版のファンも文句を言わせない多義的な『時かけ』になっている。先に『時かけ』がアイドル映画の側面を持っていると触れたが、そこのところの役割もキチンと果たしている。それこそプロモーションフィルムといっていいくらいの『仲里依紗映画』ぶりで、これを観てしまうと、以降の彼女に注目せざるを得なくなるだろう。次回作『ゼブラーマン2』ではセクシー&小悪魔系のゼブラクイーンを演じ、『時かけ』とは真逆のキャラクターを演じる彼女。今後の映画界を壮絶な勢いで「かけて」いく仲里依紗に、ちょっと目が離せなくなりそうだ。
(文=テリー天野)

◆『時をかける少女』
監督:谷口正晃
出演:仲 里依紗、中尾明慶、安田成美、石丸幹二、青木崇高、石橋杏奈、勝村政信
3月13日(土)より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネスイッチ銀座 ほか全国ロードショー
http://tokikake.jp/indexp.html

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