やはり「恥ずかしい。屈辱の極み」とのこと。
「コンプライアンス」という言葉が社会に浸透して久しいが、基本的な社会規範に従うことのできない会社人もまだまだ少なくないらしい。10月29日、富山新聞が「上司のセクハラ行為で精神的な苦痛を受けたとして、石川県内の20代女性が金沢市内の元勤務先の会社を提訴した」と報じている。
訴えた女性は、2008年の2月、上司である営業部長から勤務中に「恥やプライドを捨て職務に当たるために机に上がれ」と命じられ、他の男性社員3人とともにデスク上に上がらされた。そのうえ、彼女はスカート姿であるにもかかわらず、男性社員らと一緒に大声で、「コマネチ!」と叫びながら股を開くビートたけしのギャグをやらされたという。1度限りではない。30回以上、連発させられたそうだ。訴えが事実ならば、この上司は「コマネチ」のギャグを連投させることで社員たちのプライドをへし折って社畜化するつもりだったのだろうか。いささか信じがたい話である。
さらに原告側は、この営業部長から性行為を求めるような卑猥な言葉を掛けられたこともあると言い、のみならず事実無根の性的な噂を流布されたことにより精神的なダメージを被り、今年3月に退社したそうである。女性は慰謝料など約360万円の損害賠償を求めて金沢地裁に提訴したが、会社側は「事実に反する」として請求棄却を求め争う姿勢を示している。
どこからが事実に反するのか詳細はまだ明らかにはなっていないが、「セクシャルハラスメント」は非常にデリケートな問題。加害者はセクハラのつもりがなくとも、被害者にとってセクハラと受け取られることもあるだろう。だがいくらなんでも「コマネチをさせられた」ということは”女性側のカン違い”ではないだろう。ともに机上でコマネチを繰り出した男性社員をはじめ、周囲の人間は彼女のコマネチを目撃しているはずである。
「女性相手だからコマネチを強要してはいけない」ということではなく、たとえ男性相手でも「勤務中にコマネチを強要すること」はパワハラにあたるのではないか。コマネチによって、恥じらいの気持ちや余分なプライドが払拭されて職務に集中して取り組むことができ、営業成績が向上するとでも考えていたとしたら不思議な思い込みである。「コマネチ」は魔法の呪文ではないのだから。
(文=篠田ロック)
『上司は部下より先にパンツを脱げ! リクルートで学び、ベンチャーで試し、社長となって確立した99の仕事術』徳間書店
「パンツを脱ぐ」は多分比喩です