「私は平沢唯ではない」

テクノポップの巨匠・平沢進、『けいおん!』の平沢唯と間違えられてtwitterでブレイク?

keion_hirasawa.jpg『放課後ティータイム』

 今年、一大ブームを巻き起こしたアニメ『けいおん!』。Blu-rayディスクは記録的な売り上げを達成し、年末に横浜アリーナでのライブイベントも決まり、パロディAVまで出現(「二次元オタクの30歳童貞男が『軽音部!』を見てみた」参照)するなど、人気の加熱ぶりは放映終了後もとどまるところを知らない。それと関連して、つい先日、twitterで呟かれたこんな台詞がインターネット上で大きな話題となっている。

「間違えてないか?私は平沢進だぞ。平沢唯じゃない。」

 台詞の主は、テクノポップの巨匠・平沢進。1979年にデビューし、80年代初頭のテクノポップブームの中でヒカシュー・プラスチックスとともに「テクノ御三家」と称されたニューウェーブバンド・P-MODELのリーダーである。P-MODEL活動休止中の1989年にはソロ活動を開始。独特の世界観で構築された楽曲の数々は現在に至るまで根強い人気を誇っている。

 その彼が、ソロデビュー20周年・P-MODELデビュー30周年を記念したイベント「凝集する過去 – 還弦主義8760時間」で旧作をリメイクすることになり、その過程を公開するためにtwitterアカウントを開設したのが今月1日のこと。もともとサブカル好きなファン層が多く、メジャーレーベルとの契約を終了させてインターネットでのmp3配信に先鞭をつけ、インターネットを通じて視聴者がライブ進行に干渉できる「インタラクティブ・ライブ」を展開するなどインターネットユーザとの親和性も高いことから、平沢の呟きは早速注目を集めた。

「なんでこんなこと赤の他人に教えなきゃなんないんだ?」
「既に31トラックを使用してしまったので整理しているが、皆様も人生を整理してください。」
「「あと1時間」とフェイントをかけておいて今から出かけるところに私の偉大さが見てとれる。」

 普段のイメージからは想像もつかない独特のユーモアが人気を呼び、followerの数は着実に増えていった。とうとう3000人を超えたところで、「たいしたこと書いてないのに3280人とはどういうことだ?おい。」と疑問を呟き始め、最終的に「間違えてないか?私は平沢進だぞ。平沢唯じゃない。」「マイナーで売ってるんだけど。」という一連のユニークな呟きが生まれたのである。

 ここだけ見ると、たまたま自分の名前によく似た『けいおん!』主人公・平沢唯を知っていたがゆえの自意識過剰と受け取るかもしれない。しかし、実は『けいおん!』主要キャラクターの苗字がP-MODELのメンバーからとられているらしいということは以前から話題になっていたのだ。平沢唯以外にも、ベース担当の秋山澪は秋山勝彦、ドラムの田井中律は田井中貞利、キーボードの琴吹紬はことぶき光、下級生でリズムギター担当の中野梓は中野照夫(現・中野テルヲ)……といった具合に。

 偶然にしてはできすぎており、ニコニコ動画ではこのことに気づいた人々が放映中から『けいおん!』の映像とP-MODELの楽曲を組み合わせたMAD動画を投稿。「けいおん!でP-MODELを知った人向けメドレー」なる動画も登場し、新たな平沢リスナーが増えつつあった。そういった経緯から、「平沢唯じゃない」発言は、自分たちがアニメでネタにされていることを知っていたのか、という驚きをもって迎えられたのである。

 この呟きが『けいおん!』ファンの目にも留まり、平沢のfollowerはうなぎのぼりに増え続け、現在1万人を突破。彼の公式サイトや「凝集する過去」特設サイトはたびたびサーバがダウンするほどで、平沢は「こっち見んなーーー!!!」「平沢進というのは『な~に~?この音楽、きもちわるい』とか、そういう類だから。かわいくないから」「どっと押し寄せるな!!!またサーバーが落ちてしまったぞ!!」などと困惑を表明。火に油を注ぐ結果となってしまっている。

 こうなったらいっそ、年末の横浜アリーナで「平沢唯」とのコラボレートが実現されないだろうか――というのは、さすがに痛すぎる妄想か。

(文=有村悠)

『TVアニメ「けいおん!」オフィシャル バンドやろーよ!!(バンドスコア付) 』

 
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