数年前に大ヒットしたアメリカのロックバンド、ファウンテインズ・オブ・ウェインの「STACY’S MOM(ステイシーズ・マム)」という歌をご存知だろうか。この歌のプロモーションビデオで、主人公の少年はスーパーモデルのレイチェル・ハンター扮する「同級生の母親」にちょっとエッチな憧れを抱き、彼女目当てにその同級生「ステイシー」宅に通いつめるのだ。この歌は、男性の「年上の女性」へのファンタジー(妄想)を的確に表現しているといえる。
ハル・ベリーやアンジェリーナ・ジョリーなど、超一流のハリウッド美人女優が次々と出産し母親となっている現在、アメリカにおける「ママ崇拝現象」は頂点を迎えている。
そしてその現象は、ポルノ業界までをも席巻しているという。
「MILF(ミルフ)」というのは比較的新しい造語で「Mothers I’d Like to Fuck(ヤッテみたいママさん)」の略である。もちろん、この「ママさん」はあくまで美人でセクシーな女性であり、疲れたオバサンは年上でもこのジャンルには入らないので念のため。
考えてもみてほしい。藤原紀香(38歳)も常盤貴子(37歳)も、高校生の子供がいても決しておかしくない年齢である。さらに、アムロも広末涼子も松嶋菜々子も、み~んなママなのだ! そう考えると、彼女たちが一般人とはかけ離れた容姿を持っているとしても、MILFが人気の理由が分かっていただけるだろう。
シュガーDVD社(アメリカのAVレンタル会社)によると、このMILFのジャンルに入るDVDレンタルが昨年の14位から今年は2位まで急上昇したという(1位は異人種間ジャンル)。
その中でも人気の女優はデミ・デリア(Demi Delia)とラクェル・ディバイン(Raquel Devine)の2人。「美しく品がある大人の女性」というタイプを期待していたが、アメリカのポルノに「品」というものは基本的に存在しないらしい。「人生に飽きて熟れた体を持て余し、ランデブーを求めるクーガー」という表現がぴったりである。
この「クーガー(アメリカン・ライオン)」という言葉だが、これは「自分よりずっと年下の男性を狙う」という大人の女性のことで、28歳年下の恋人がいるマドンナや、15歳年下のアシュトン・カッチャーと結婚したデミ・ムーアなどがいい例といえる。アメリカにおいては、ハリウッドのトレンドと認められた時点で、何事もタブーとは呼べなくなるのである(もちろん、未成年を狙うというのはもってのほかだが)。
米人男性は今、若くて可愛いが、人生経験も知識もないティーンの少女たちが溢れるポップ・カルチャーに食傷気味だ。そこには、妄想をかきたてる材料が存在しないからである。それに比べてMILFはどうだろう。
「シナリオは基本的にいつも同じよ。息子の友人たちが家に来て、私とセックスするの」
「marie claire」米版に掲載された記事の中で、デミ・デリアはこう言っている。
「私は41歳だけど、25歳くらいの男性ファンからメールが来るわ」
しかし、少なくともそこには普通のポルノには珍しい「ストーリー性」が存在するのだ。
女性誌に掲載されるほどの話題なのだから、当然この「MILF」は女性側からの注目も浴びているのだろう。そう、「年下の男性」「息子の友人」というのは、口に出すのははばかられるが、大人の女性のファンタジーでもあるのだ。ハリウッドであろうとアダルトであろうと、映画やビデオにおいての「妄想をかきたてるストーリー性」というのは、女性を興奮させることにおいて必要な要素なのである。
日本のAV業界でもこの「MILF」は、旬を過ぎたと言われそうな35歳以上の女優たちが再び活躍できる舞台となるかもしれない。
(文=相馬 佳)
熟女とは一味違うよ