エロ版”まんが道”!? 君はつかめるのか、エロマンガの真髄を! 金平守人『エロ漫の星』

eroai_bangai_main.jpgふざけたテンションだけど意外とガチなエロマンガ指南書。これを読めばエロマンガへの見方も変わるかもしれない問題作!

金平守人『エロ漫の星』

 さて、毎回エロマンガばかりを紹介してきたこのコーナーですが、今回は「エロマンガ版『まんが道』」とでも言うべき金平守人氏の「エロ漫の星」をご紹介します。内容は18禁ではなく一般向けです。

 38歳童貞、ペンネーム「クソ虫ゴロ太」がエロマンガ家を目指すこの漫画、上巻は「エロマンガを描くに当たって大切な技術」についての解説、下巻は「エロマンガ家になるためのリアルな戦い」の物語が描かれています。基本的にギャグタッチなのでゲラゲラ笑いながら読めるのですが、これがかなり良く調べられており、本気で役に立つ作りになっているからびっくりです。


 ……とは言ってもこの文章を読んでいる人で「俺はエロマンガ家になるんだ!」という人はそうそういないでしょう。中には「エロマンガじゃなくて漫画の描き方を解説したほうがいいんじゃないの?」「なんだかんだ言ってエロマンガでしょ?」「漫画より実写の方が」という人も多いでしょう。そうです、その通りです。あくまでもここで描かれているのは「エロマンガの描き方」であり、それに向かう人間の心です。ヌキたいのならばエロマンガや実写エロを見たほうが早いですし、漫画そのものの技術向上を目指すなら漫画実践書を読む方がプラスになるでしょう。

 しかし。この作品はそれを超越したエロマンガ愛に満ちています。「マンガ愛」じゃない、「エロマンガ愛」です! 

 上巻のコメディタッチなエロマンガ技術論は「いかにしてエロを表現するか」の本格的な話を極めて分かりやすく書いています。例えば「エロ漫画におけるチラリズムは興奮の加速装置」という話、ストレートにエロを見せるよりもじらすことで見えるという漫画の描き方を非常に丁寧に解説しています。また擬音に関しても「エロ音は耳で聞くんじゃない、チンポで聞くんだ!!」と叫び、擬音の画面構成について明快に解説しています。他にもおっぱいやマ○コの描き方、汁描写による効果、エロマンガに大切なDTP(童貞力)などなど。ふむう、こいつぁ奥が深いぞ?

 そして下巻。クソ虫ゴロ太がついにアシスタントとして実際の現場に入り、持ち込みをして掲載、そして連載に至るまでを描いていますが、これが熱い。バカな描写なのは上巻から変わらないけれども熱いんだ。

 普通の指南書であれば避けて通りたい話題にあえて突っ込んでいくのです。例えばトレス。雑誌やネットにおける自作自演。いわばエロマンガの裏の現場を、隠すこと無く描いてしまっているのです。

 連載時、驚いたものです。だって……いわばこれ、タブーの領域ですよ。誰もが触れずに、暗黙の了解で過ごして部分、出来れば触れたくない話です。そこを、地雷原を裸足で走るように描いていくのです。裏を知ることで、エロマンガにとって本当に大切なものを知ることができるから、と。

 あらゆるものを失った中、クソ虫ゴロ太は一体どこに向かうのか、果たして彼は本当にエロマンガ家になれるのか? そもそも人生をかけるほどエロマンガは大事なものなのか!?

 ジョークと「エロマンガ論」のバランスが絶妙で、かの伝説のハガキ職人三峯徹氏を何度もネタにしていたり、基本、気楽に読める作品です。しかしクライマックスに向けて命を燃やして一本のエロマンガを描き上げる姿を見終わった時、エロマンガの持つ熱い魂に気付かされるはずです。

 最後に、序文を引用します。

「この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係はないが、日本のどこかに、この作品の主人公と同じ星をみつめている人間は必ずいる!!」

 その手でつかめ、エロ漫の星!

(文=たまごまご/たまごまごごはん

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