アップアップガールズ(仮)、聖地・中野へ帰還


 中でも最大のチャンスを掴んだのは、プロデューサーつんく♂の評価も高かった佐保であった。2008年末、同期の和田彩花、前田憂佳、福田花音と共に、アニメ主題歌を歌うユニット「しゅごキャラエッグ」のメンバーに抜擢され、メジャーデビューを飾ったのだ。オリコン10位以内にランクインする成功を収め、フィーチャーされる機会も増えたものの、一番光に近い場所にいたが故に悲劇のヒロインになることをまだ当時の彼女は知らなかった。

 他の三人より年少で人見知りな彼女は、当時は全く自信が持てなかったという。不安は悪い形で的中する。翌春つんく♂がプロデュースを担当するハロープロジェクトの4人組新ユニット「スマイレージ」が結成されるも、佐保だけが外され別メンバーが選ばれるという屈辱を味わうこととなったのである。

 しかし後輩メンバーを交えた第二期「しゅごきゃらエッグ!」さらにはハロープロジェクト内でも屈指の人気メンバー夏焼雅(Berryz工房)、鈴木愛理(℃-ute)との特別ユニット「あぁ!」に抜擢されるなど、佐保には再び栄光への道を駆け上っていくかに見えた、しかし…。

 2010年夏ハロプロエッグに激震が走る。それまで幅広い年齢層のメンバーを受けいれていた研修システムの大幅な変更を行い、高校生以上のメンバーおよび実力の無いメンバーは、ほぼ強制的に脱退させるというものだった。実質的に1期メンバーで残ることとなったのは佐保だけだった。

 涙に包まれたエッグの秋公演が終わり、同期の仲間を失った佐保は、翌2011年1月2日中野サンプラザのステージに立った。

 『Hello! Project 2011 WINTER~歓迎新鮮まつり~』と題されたコンサートは、約4年ぶりにモーニング娘。に新メンバーか加入することもあり、例年以上の祝祭ムードに包まれていた。さらにステージにつんく♂が登場し、オーディションを勝ち抜いた3名に加えて、ハロプロエッグから特別に1名を追加するとの発表で、場内はさらに異様な熱を帯びていった。後にモーニング娘。入りを自ら勝ち取った工藤遥を始めエッグメンバーの中には自分が選ばれるのではと思っていたものも多かった。そして1期でただひとりサバイブしていた佐保も、そう考えて当然だった。

 だが、彼女に与えられたのは、6年もの間青春のすべてを、ハロープロジェクトメンバーに昇格するため注いだ見返りとしてはあまりにも酷なものだった。

「譜久村降りておいで」

 つんく♂のアナウンスの後、想像せぬサプライズに呆然とした表情で前に歩み出たのは、後にサブリーダーとなる譜久村聖だった。譜久村は第二期「しゅごキャラエッグ」のメンバーであり、佐保にとっては近しい後輩だった。

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