「じゃあ一緒に死にましょう…」園子温のアウトな上京物語

sonoson0823main.jpg※イメージ画像:『けもの道を笑って歩け』著:園子温/ぱる出版

 22日に放送された『アウト×デラックス』(フジテレビ系)に園子温(51)が出演した。園子温といえば、『愛のむきだし』や『ヒミズ』などの作品で知られる、日本映画界屈指の奇才。作風からしてアウトな雰囲気がにじみ出ている園だが、まさに期待通りのアウトっぷりを披露し、ネット上で話題を集めている。

 「R-1で優勝したい映画監督」として番組に登場した園。今年4月には、水道橋博士とユニットを組み、ライブ『ザ・水道橋 in 座・高円寺 vol.1』で芸人デビューを果たしているという。そんな園に対し、MCの矢部浩之やマツコ・デラックスは驚きを隠せないようだったが、園自身は飄々としたもの。「年末にはそれで忙しくなったらいいな…」と言い、「芸人から映画監督になる人は多いけど、映画監督から芸人になった人は1人もいない」「それを狙っている」と語っていた。

 さらに園は、「要はいろいろやりたい」と言い、「(今の立場を)全部チャラにして、それをすり替えられたらいいな」と今後について語る。そんな思いのためか、今年に入って園は芸人デビューしただけでなく、バンドや漫画でもデビューが決まっているという。新たに劇団まで旗揚げしたというから、そのバイタリティはすさまじいものがある。

 映画監督として大成しながら、芸人など他ジャンルでの活躍を目指す考えもアウトといえばアウトだろうが、その後、話された彼の上京物語は、まさに園ワールド全開のアウトなエピソードだった。

 愛知県に生まれた園は、17歳のとき、童貞を捨てるため家出をして東京を目指す。園は、「ギターでも持っていれば童貞を捨てられる」と思っていたらしい。そして、東京駅に降り立ったその夜、不思議なことに、園の言葉を借りれば「引き寄けの術」のようなものが発動し、ギターを持っているといきなり25歳くらいの女性に「この辺で24時間営業の喫茶店などありませんか?」と声をかけられたというのだ。

 突然の童貞喪失チャンスに興奮した園は、「あそこにホテルがありますけど…?」と女性を誘い、そのまま2人でチェックインする。「これが東京か」と感動したのも束の間、部屋に入るや、女性が鞄から巨大な植木バサミを取り出し、「じゃあ一緒に死にましょう」と言ってきたという。聞けば、その女性は、夫とケンカをして東京に出てきたばかりだという。そして、路上で出会った園に運命を感じ、「これも何かの縁だから」と心中を頼んできたらしい。

 しかし、さすがに死ぬのをためらった園は、女性に別の解決策を問い、「それなら一緒に田舎に帰って、私の母と3人で暮らして」と頼まれ、そのままそれを実行に移したという。まさに園の映画にもありそうなエピソード。実際、園自身も、この出来事については、映画『紀子の食卓』のテーマ“レンタル家族”の元となっていると語っていた。実体験が映画にフィードバックされることはよくあるということだった。

 17歳で童貞を捨てたいという思いから家出をした園。その後、映画監督を志した彼は、「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリを受賞するなどし、新進監督として期待されるも、1990年代に入ると映画の世界から身を引き、路上パフォーマンス集団「東京ガガガ」を主宰。その後、映画の世界に戻った彼は、インディーズ界で再び奇才ぶりを発揮し、2000年代に入ると、大手映画会社とも手を組み、話題作を連発した。また、近年ではテレビドラマの制作にも携わり、チーフ演出兼脚本家として関わった『みんな!エスパーだよ!』(テレビ東京系)は、深夜帯の放送にもかかわらず、大きな反響を呼んだ。

 これだけざっと振り返っても、常に新しいことに挑戦していることがわかる園。番組の中では、芸人を目指していると紹介されていたが、彼にとっては、それもひとつの挑戦なのだろう。今後、芸人やバンドマンとしてデビューした彼が、その後さらにどんな挑戦をするのかが今から楽しみだ。願わくば、誰もが度肝を抜かすような“アウトでデラックス”な挑戦が見てみたい。それも園子温という人間の作品そのものなのだろう。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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