フィリピーナのつぶやき 第7回

フィリピーナの“ケチ”の概念とは? セックスでも買い物においても日本とは違う…

ketifilipina0522fla.jpg※イメージ画像 photo by topbarr from flickr

 「クリポッ(ト)」は(ケチ)という意味だ。

安いところへしか、食べに行かなかったら(ケチ)。
安いものしか、買い与えなかったら(ケチ)。
どこへも遊びに行かなければ(ケチ)。
もちろん、お小遣いをあげなかったら(ケチ)。
となる。

 その理由は問わない。行きたい、買いたい、お金が欲しいという自分の要求が満たされなければ、その相手が(ケチ)になるわけだ。

 倹約家とケチは違うという。倹約して貯蓄するのと、金があっても出さない違いだというが、大して変わりはしないだろう。何か目的があって貯金をするのは、また別問題だ。目的が、自分に必要なものなのか、または欲望のためなのかでも違ってくるだろう。

 屁理屈をこねても仕方がない。ピーナの話だ。

 ピーナに倹約家はいない。ケチも少ない。なぜか? 貯めるだけの余剰金がない。あれば使ってしまう。人に奢って、いい気分になる。というのが、金に対する考え方だ。

 中流以上、そして上流のピーナは違う。ケチだ。クリスマスなどに施しをしたりして、満足するような見栄っ張りが多い。心は小さいのに、見た目は金持ちで偉そうなのが、虚栄心を飾って心地いいようだ。

 ここでごく一般的な、一般庶民のピーナの話を。

 B氏という、30代の独身日本人男性がいた。ボランティア活動でフィリピンに来てから、フィリピンが好きになり就業ビザで住んでいる。仕事は、日系企業に現地採用されている一般職員だ。活動家で、子供を集めてスポーツ教室を開いたり、自分でもサッカーチームを作って楽しんだりしていた。

 健康な男であるから、当然女も欲しくなる。どこで知り合ったかピーナの彼女がいた。とても愛らしく健康的な20代の女性だ。まあ、日本でもどこにでもいる普通のカップルである。

 付き合いだした頃、B氏は「クリポット」を散々言われたらしい。

食事に行って、デザートにアイスクリームをつけなければ(ケチ)。
スターバックスで、コーヒーだけでケーキが無ければ(ケチ)。
ガソリンが高くなったとき、もったいないからと遠出のドライブをしなかったら(ケチ)。
彼女の親戚の子に、お小遣いを上げるのを忘れたら(ケチ)。

 その他諸々。B氏は結構頭にきていたらしい。でも彼女は、安い給料なのに、お金を出すことに対して、深く考えない遣い方をしていた。それがB氏には不思議だったらしい。「ケチ」と言われても、彼女は金を出すし、何回も奢ってもらったり、プレゼントを貰っている。裕福な家庭の育ちなのかなと思ったらしい。

 事実、ピーナにしては常識もマナーもわきまえていて、控えめな日本的女性である。おしゃべりではなく、よく気が付いてB氏を立てる。“わたしがわたしが”と、正面にでしゃばり出てくるピーナとは違う。そういうピーナが多いので、彼女は、俺の目にもいい女に映っていた。

 ところが、田舎にある彼女の実家は貧乏であったと、数ヵ月後にB氏に聞いた。彼女の休みと、自分の休みを利用して行って来たらしいのだが、両親の他にお兄さん夫婦とその子供3人、お婆さんと妹と弟が一人ずつ。そしてなぜか、叔父さんの家族が5人一緒に暮らしていたという。

 電気はあっても家電は無い。水道は通じていても井戸水を使う。途中でお土産に買っていったピザとハンバーガーに、大きな眼を開いて喜びを表していた姿にびっくりしてしまったという。

 ボランティア活動で、ストリートチルドレンやスモーキーマウンテンに暮らす人々を見知っていても、自分の彼女の家が貧しいとは思わなかったのだろう。

 帰ってきてからB氏は、家電や家具を買ってあげようと、彼女に提案して拒否されたという。その理由は、生活が壊れて大人数の家族のコミュニケーションも上手くいかなくなる、ということらしい。

 遊びに行ったときに5000ペソ(約12,000円)ぐらい上げればいいんだという。それは(ケチ)じゃないのかと言ったら、違うとはっきり言い返してきたらしい。必要ではないからだという。必要なのは、その時に皆を楽しませることが出来るかどうかだ。だから、洗濯機よりもピザ。炊飯器よりもアイスクリームなんだよ、と。

 B氏はフィリピンをもうひとつ勉強したと言っていた。その彼女が、夜になっても「ケチ」と言うんだ、と笑って話してくれた。彼女がその気になって言い寄ってきたときに、疲れてるから明日と答えたら、「ケチ」と言われたというのだ。

 「それも(ケチ)なんですかね」と多くを語らず笑っていたが、想像はつく。彼女が言っていたように、その時を楽しませることが出来なかったのだから(ケチ)だ。という理屈だ。

 ピーナは、素直に自然にあっけらかんと、性行為を要求してくる。もちろん、心も身体も慣れ親んだ間柄になってからである(一回やっただけでも要求してくる奴はいるが…)が。

「やろうよ」
「ええっ…」
「クリポット」
・・・・・
「そこ、舐めて!」
「ええっ…」
「クリポット」
となるわけだ。

 俺にも経験があるからわかる。

 透けたブラウスを着て、ホットパンツから美脚を晒しだしていたら、見て褒めてあげねば(ケチ)になる(自然に。セクハラにならないように…)。

 行為中にお尻を突き出してきたら、バックから挿入してやる。脚を開いて濡れた亀裂を目の前に持ってきたら、舐め上げてやる。 動きに合わせて何を求めて、何を楽しもうとしているかを判ってあげて、やってやる。でなければ、(ケチ)になってしまう。

 彼女たちは違うと言うかもしれないが、行動から察する心理は語っている。セックスでも、買い物でも。

 セックスで(クリポット)な男は、普段でも(クリポット)と思われてしまうかもしれない。セックスで楽しませてくれなければ、何をやっても楽しませてくれないと思うわけだ。

 だからかな、(ケチ)と思われたくないピーナは、楽しませてくれる。
(文=ことぶき太郎)

men's Pick Up