「25歳まで恋愛禁止!」と語ったオスカー専務の言葉はAKB48にどう響くのか

 上戸彩・武井咲・剛力彩芽・米倉涼子など、約6,500人近いタレントが所属する芸能プロダクション最大手、オスカープロモーションの専務取締役・鈴木誠二氏のインタビューがビジネスジャーナルに掲載された。タレント育成などについて興味深い話がいくつも飛び出し、いわゆる一流事務所のタレント管理の内容の一部がわかる点で意義深い記事だが、中でも「(若手タレントの)恋愛禁止は当然必要」という専務の言葉が波紋を広げている。というのも、AKB48の相次ぐ熱愛スクープを受けて、秋元康氏がラジオ番組で「恋愛禁止はネタ」と、これまでの“ガチ路線”を全否定する構えを見せた直後であるため、アイドルファンたちがオスカーの動向にも注目しているのだ。

 鈴木氏はインタビュアーの「貴社には恋愛禁止のような規則はありますか?」という質問に対し、「もちろん必要です」と応えている。いわく、3~5万人の表に出るタレントがいる一方で、芸能人予備軍も100万人が控えている芸能界は生き馬の目を抜く世界。そこで「全員がトップを目指して、過酷ないす取りゲームをしている」からには、ファンだけでなく業界関係者や事務所スタッフの「このコを売ろう」という士気を下げないためにも、デビューから数年は恋愛を禁止し、芸能活動に真剣に取り組ませるのだという。具体的には、「20歳過ぎてからデビューした場合はデビュー後5年でいいけれど、10代でデビューした場合は、20歳過ぎてから5年、つまり25歳までは恋愛禁止」だそうである。その後、ある程度世間や現場関係者からも認められるような女優になったと判断されれば、恋愛解禁となるようだ。

 このルールについては、昨年27歳の誕生日に結婚した上戸彩もトーク番組で口にしたことがある。ただ、彼女は10代の頃からV6・森田剛との熱愛現場を何度も写真に撮られ、結婚秒読みとまで言われるなど「掟破り」をしていたように見えるが…。それでもやはり、こうしてタレントに規則を明示しておけば、ルール違反発覚時の対処もスムーズになるというもの。ただ、AKBの場合は複数の異なる芸能プロダクションにメンバーが分散しているため、一律にルールを提示できなくなってしまったという側面はある。

 しかし、AKBやオスカータレントだけでなく、「恋愛禁止条例」はほとんどすべての若手アイドル・タレントに課せられた暗黙の了解であるように思う。あえてそれを声高に喧伝してきたにもかかわらず、「ネタでした」で済ませようとするところが、AKB批判の源流にある。そもそも、わざわざ「恋愛せずに頑張っていますから応援してください!」とアピールすることは、AKBの当初のコンセプトに果たして合致するものだろうか。

 AKBというのは、まだ事務所に所属していないアイドルを夢見る少女たちを集めて、専用劇場で定期公演をしながら歌やダンスのスキルをあげつつ、芸能関係者にスカウトされるのを待つというコンセプトで始められている。このコンセプトに従えば、芸能事務所に所属したり、女優や歌手として一本立ちできるまでは恋愛は当然禁止すべきだろう。いざ獲得してみたら、スキャンダルの火種をいくつも抱えているようなタレントは、どの事務所も敬遠するからだ。
 
「それゆえ、研究生の段階でスキャンダルを起こしたメンバーは解雇、セレクション審査での落選など、厳しい対応が目立ちますね。メンバーたちはAKBのオーディションに合格すると、いったんAKSというAKB運営を行う総合人材会社に所属します。現在はSKE48、HKT48のメンバーも多くがAKS所属。芸能プロダクションではなく、あくまでもタレントの卵の一時預かり所であるAKSは、普通の芸能事務所のような手厚いマネジメント能力はないように思います。本来ならば新人の時点でマネジャーが手取り足取り指導するものですが…システム的にそれは無理でしょう」(業界関係者)
 
 さて、当初のコンセプトを考えれば、外部の芸能プロに引き抜かれて移籍した時点でAKBを卒業し、あとはその事務所のマネジメントで芸能界の荒波を泳いでいくことになるはずだが、気がつけばAKBは国民的アイドルグループとして予想以上の成功を収めてしまい、芸能界予備校どころか、芸能界の中心になってしまった。結果的に、事務所移籍の完了しているメンバーも卒業のタイミングを見失っている。先日放送された『ここがヘンだよAKB』(日本テレビ系)では、総監督の高橋みなみまでが「私はいつまでここにいるべきなのか…」という悩みを、泣きながら告白している。コンセプトは崩壊し、初期に掲げられていた「メンバーのスキルアップ優先のための恋愛禁止」は、「AKBブランドを維持するための恋愛禁止」に変遷、さらに一部の悪質なファンやアンチにとっては「気にくわないメンバーを叩くための口実作り」の道具にまで成り下がっている。

 この矛盾がクリアにならない限り、今後もメンバーの熱愛報道があるたびに場当たり的対応に追われ、その結果、しらじらしさに嫌気が差したファンが離れてしまうことが懸念される。
(文=潜水亭沈没)

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