貴理子の“ドッキリ求婚”高視聴率も、タレントのプライベートで数字を取るバラエティに嫌悪感

20120806kiriisono.jpg※イメージ画像:「石井光三オフィス HP」、磯野貴理子プロフィール

 5日に放送された『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)の中で、ドッキリサプライズプロポーズを受けたとして話題の磯野貴理子。気になる番組の視聴率は14.6%と、五輪中継が猛威を振るう中、高い数字を記録した。もちろん、同時間帯の視聴率トップはフジテレビ系で放送されたオリンピック女子マラソンの22.5%だったが、高橋尚子が優勝したシドニー大会の40%以上という記録には程遠い結果。レース終盤には、ほとんど見所もなく、日本人選手の低迷がチャンネルを4に変えさせたことは想像に難くない。

 わざわざ記憶をさかのぼるまでもなく、先月放送された『27時間テレビ』(フジテレビ系)では、タカアンドトシのタカが番組内でプロポーズをして26.9%という瞬間最高視聴率をマークするなど、タレントのプライベートを切り売りする形が結果を残している近頃のテレビバラエティ。

 しかし、こうした風潮にネットユーザーらは大いに反発。「いちいちテレビで言うことか」「ネタ切れ」などと、タレントのプライベートを扱う番組に強い嫌悪感を示す。そして、そんなネットユーザーらと同様の反応を示しているのが、往年の名番組を手がけた元番組プロデューサーだ。

 6日発売の「週刊現代」(講談社)では、2012年の民放視聴率競争で躍進を遂げているテレビ朝日を特集。テレビ朝日の大逆転の秘密を、「リスクをとった」からと分析しつつ、それでも気の抜けない各局の視聴率競争がテレビ業界全体を活性化させるだろうと述べている。そんな記事の中で、『アメリカ横断ウルトラクイズ』(日本テレビ系)を立ち上げた伝説のテレビマン・佐藤孝吉氏は、近頃の芸人頼みのテレビバラエティに警鐘を鳴らしている。

 「数字を取りに行くことはパワーの源」と語る佐藤氏は、「最近のお笑い芸人は内輪話を繰り返しさらけ出しているだけ」と言い、「(視聴率)10%が目標なら、タレントに頼ればいい。でも20%は取れない」とタレント頼みのバラエティを一蹴。今の現場ディレクターは芸人との付き合い方が課題になっているが、そんなことで『本物』が作れるのか、と苦言を呈している。

 確かに佐藤氏の言葉は金言だ。記事にあるように、今のテレビバラエティに必要なのは、垂れ流されるタレントのプライベートなどではなくて、作り手の“志”と“サービス精神”だろう。とはいえ、前述したように、夏季オリンピックのメインイベントともいえる女子マラソン中継を相手に磯野貴理子のドッキリプロポーズは高視聴率をマークした。タカのプロポーズも、27時間テレビ中もっとも高い数字をたたき出した。もともとこの2人の好感度が高いということもあるだろが、それでも芸能人のドッキリプロポーズが、数字の取れる企画だというのは証明されてしまった。そのうち、アラサーグラドルの誰かが似たような企画を行うことだろう。

 今秋には、これまで不定期特番として放送されていたビートたけし司会の『北野演芸館』(TBS系)がレギュラー化するという。しかし、『お試しかっ!』(テレビ朝日系)や『ほこ×たて』(フジテレビ系)といった、企業とタイアップした番組が人気を博す今のテレビバラエティ。これら、“ワンアイデアで低予算”という共通項を持つ番組が全盛の時代に、(メジャータレントの場合は)通常の番組よりギャラがかさむと言われているネタ番組がどれだけ持ちこたえられるかは疑問だ。高いギャラを払っても思うような数字が稼げなければ1クールで打ち切りというのも十分に考えられる。

 その点、タレントがプライベートをさらすのに大きな費用はかからない。数字も取れて、費用も抑えられるという魅力に勝る「どうしてもやりたい番組」など、今のテレビマンにはあるのだろうか。そうした場であったはずの深夜帯では、ほとんど制作費のかからない通販番組が蔓延っているのが現状だ。しかしそんな状況も、出口の見えない経済不況とテレビ離れという問題から生まれた、予算と数字による板ばさみが原因ともいえる。今のテレビマンにとっては、タレントのプライベート暴露というのは渡りに船になっているというわけだ。そんなテレビバラエティ界では、今後もますますタレントのプライベートの切り売りは加速するに違いない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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