「アイドル」はバンドが下に見て済む文化なのか? 「アーバンギャルドの病めるアイドル五番勝負!!!!!」レポ

MG_5654.jpg

 「トラウマテクノポップ」を標榜するアーバンギャルドが、7月に「アーバンギャルドの病めるアイドル五番勝負!!!!!」と題して、旬のアイドル5組と対バンするライヴを行った。対決に指名されて勝負を受けたのは、BiS、でんぱ組inc.、Negicco、バニラビーンズ、ぱすぽ☆(出演順)。ふだんはバンドとの対バンが多いアーバンギャルドが、アイドルばかりと対バンするというまさに異例の企画だ。

 この企画に対しては、インターネット上でも「アイドルブームに便乗していて嫌悪感しか覚えない」といった厳しい意見も出ていた。しかしアーバンギャルドは、先行した6月の「病めるアイドルを探せ!ツアー」の冒頭で新曲「病めるアイドル」を5人で踊りだし、演奏しないまま1曲でステージを退場して(いわゆる本編は『アンコール』扱いだった)、見る者に衝撃を与えていた。彼らもまたすでに「アイドル」を演じていたのだ。

 

 
 バンドはアイドルに押されている。そうした危機感を公然と表明し、アイドルとの対バンを繰り返したアーバンギャルド。企画がスタートする前日の7月2日にニコニコ本社から放送された「アーバンギャルドの病めるアイドル五番勝負!前夜祭」では筆者が司会を務めたが、直前にいきなりヲタ芸講座を任され、全世界に向けて「病めるアイドル」にヲタ芸を入れる大任を引き受けた。冷静に考えたら無茶苦茶である。ここまでして彼らは何を求めていたのだろうか。全5回の勝負を駆け足で紹介していきたい。

■7月3日渋谷STARLOUNGE
「第一話:BiS~ビョーキ・アイドル・研究会~ アーバンギャルド VS BiS」

 最初の対決は、3度目の対バンとなるBiS。本誌にもインタビュー(https://www.menscyzo.com/2012/07/post_4282.html)が3回掲載されてきたおなじみのグループだ。そして、最近はサウンド的に激しいロックへ鋭角化しており、今回の顔ぶれで音楽的にアーバンギャルドと一番距離がある不思議な関係になっている(しかしファン同士の親和性は高い)。言い換えるなら、異端のバンドと異端のアイドル同士だ。

 最近のBiSのライヴはダイヴが日常的に行われるほどハードなのでアーバンギャル(アーバンギャルドのファン)が逃げ惑わないか不安だったが、研究員(BiSのファン)の一部の自発的な配慮によって無事進行。コール、口上、MIX、ケチャ、リフトなど壮絶で、MCではプー・ルイが「こういう文化もあるんだなって見てください」とフォロー。「IDOL」ではBiSのユッフィー、ミッチェルもフロアにダイヴする盛り上がりの中で終了した。

 

 
 対してアーバンギャルドは、今回はバンド演奏からスタート。「病めるアイドルを探せ!ツアー」を経たせいか、アーバンギャルドのグッズの水玉フラッグだけではなく推しメンバーの色のサイリウムも見受けられた。アイドルを歌った「その少女、人形につき」を演奏したのは、批評と挑発であるかのようだ。

 そしてアンコールでは、アイドル仕様のアーバンギャルドが登場して「病めるアイドル」を披露(これは最終回まで続いた)。この楽曲になるとアーバンギャルもコールやMIXをする状況に。そしてBiSとのコラボは、アーバンギャルドの演奏で、セーラー服姿のBiSがおニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」をカヴァーするというものだった。「デートに誘われてバージンじゃつまらない」という歌詞を今歌えるアイドルは、BiSぐらいかもなぁ……と妙な感慨を味わうことに。

bis2.jpg

 終演後は両者の物販が開催されたが、BiSはセーラー服のまま物販をし、アーバンギャルドの浜崎容子はファンにビンタを行った。ビンタされた少なからぬファンが恍惚とした表情を浮かべており、禁断の快楽に目覚めてしまったのでは……という一抹の不安とともに初日は終了した。

■7月11日渋谷O-Crest
「第二話:キュンキュンキュン!でんぱ少女と水玉少女☆ アーバンギャルド VS でんぱ組.inc」

 2組目は、秋葉原のディアステージから生まれたでんぱ組inc。「でんぱれーどJAPAN」では、でんぱ組inc.とファンのハイタッチの際に壮絶な圧縮が発生。小沢健二のカヴァー「強い気持ち・強い愛」では、両手の指の間に可能なだけサイリウムを挟み、さらに口にもサイリウムをくわえたファンが背面ケチャの体制のままリフトされるなど、アクロバティックな姿が文字通り輝きを放っていた(緑の)。最後を締めくくったのは、かせきさいだぁプロデュースによる「くちづけキボンヌ」の心地良いAORテイスト。電波系にとどまらない音楽性の幅も彼女たちの強みだ。

 

 
 アーバンギャルドは、「ズッ友だよ…」「ここで騒ぐ」など、かなりどうでもいいことを書いた看板を手に、メジャーデビュー時のヘルメット姿で登場。名曲「ダブルバインド」も披露された。

 アンコールの「病めるアイドル」に新風を吹き込んだのは、でんぱ組inc.ファンによる推しジャンだ。コラボでは、でんぱ組inc.の夢眠ねむが渋谷系好きという話題から、フリッパーズ・ギターの「恋とマシンガン」をカヴァー。

denpa2.jpg

 終演後のアーバンギャルドはハイタッチ会を開催、同時に谷地村啓が誕生日を祝して彼の胸を揉める「パイタッチ会」も併催された。今揉めるアイドル……。

■7月16日渋谷CHELSEA HOTEL
「第三話:長ねぎに死す アーバンギャルド VS Negicco」

 3組目は、新潟のローカルアイドルの枠を超えて人気のNegicco。新潟から人身事故に巻き込まれながらも移動して、自前のマイクをもって登場した。

 この日はファンがネギ色サイリウム(上部が緑で下が白)を振っていた。MCでは「こんばんネギネギ~!」という挨拶の後、「こんなに女の子が多いライヴは珍しい」との発言も。「スウィート・ソウル・ネギィ-」「Summer Breeze」といった名曲群を披露した後、さらにわきおこったアンコールでは「圧倒的なスタイル」も歌い踊った。

 

 
 アーバンギャルドは、「ときめきに死す」のビデオ・クリップのように全員が髪を逆立てて登場。それを知らないと単に異常なバンドだが、とにかく気合いは感じさせる。ライヴはその「ときめきに死す」で始まり、「修正主義者」「四月戦争」といった古い楽曲も披露された。

 アンコールの「病めるアイドル」では、Negiccoのファンによりサビで「ホワホワ」という高い声が多めに。また、「うりゃほい!」という合いの手も多用されていた。Negiccoとのコラボで「歌詞にネギが出てくる曲」として披露されたのは、空手バカボンや筋肉少女帯で知られる「日本の米」。Negiccoが最前列の客の頭をネギで叩く光景が展開された。そして、再び演奏されたのが「圧倒なスタイル」。この楽曲が生演奏されたのは初めてのことだったという。恒例のラインダンスは、フロアはもちろん、ステージ上のアーバンギャルドとNegiccoも肩を組んで行っていた。

negicco1.jpg

 終演後のアーバンギャルドは「頭ナデナデ会」を開催。松永天馬が「どこの頭ですか!? 亀のほうですか!?」などと発言していたが、ここはスルーの方向で。

men's Pick Up