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【メンズサイゾー事件簿】

「キミの精子を売ってくれ!」 大学構内でザーメン買い取りのチラシがまかれる


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*イメージ画像:『精子戦争 性行動の謎を解く』
著:ロビン・ベイカー/河出書房新社

 1987(昭和62)年4月27日のこと、名古屋大学教養学部各教室の机の上に、A4判大のチラシが1枚ずつ置かれていた。

 当時はまだ学生運動の名残が全国の各大学でくすぶっていることが多く、教室にアジビラなどがまかれることも珍しくなかった。ところが、そのチラシの内容は、学生運動とはまったく関係のないものだった。しかしある意味、それ以上に目を引く内容だった。

「精子求む! 1回1万円」

 チラシにはそのように書かれ、要するに男子学生に向けたザーメン買い取りの募集だった。詳細も記されており、それによれば、これは研究用の精子提供者を募集するもので、応募資格は「心身共に健康な方で週に1~2回来院できる方」となっていた。報酬として「1回につき1万円也」。つまり、射精1回が1万円のアルバイトになるというわけである。

 大学などの試験研究施設では、生殖機能その他の試験や研究でヒトの精子を使うことがしばしばある。余談だが、ロン・ハワード監督の映画『ライトスタッフ』でも、宇宙飛行士が検査のために「精子を提供せよ」と命じられ、施設内の男子トイレで絶叫しながら「採取」するコミカルな場面がある。

 では、そうした実験用の精子はどのように調達するかというと、たいていは学生や若手の研究者など身近なところに頼み込んで提供してもらうのだという。その採取の手法も「提供者に任せて」行われると聞く。筆者もある性機能関係の取材で某大学医学部を訪問した際、取材に応じてくれた研究者に掲載誌である男性誌を手渡したところ、その研究者がヌードグラビアをめくりながら「これは助かります。使えますよ」と礼を言われた覚えがある。聞けば、提供者の「便宜を図る」ために便利だということだった。用途は、推して知るべしだ。

 このチラシに、名古屋大学当局は「無断で、しかもかような内容のものを学内に配るとはゆゆしきこと」とかなり迷惑の様子だったらしい。

 さて、この精子募集チラシだが、名古屋市内にあるK産婦人科の院長が人工授精の際の検査用に集めるためまいたとのこと。「若く健康な大学生なら、さぞ質の良い精子がもらえるだろう」との考えからだったそうだ。ところが、ほんの軽い気持ちで配布したチラシが予想以上の騒ぎとなり、地元紙にまで報じられてしまったため、かなり恐縮した様子だったという。これに対して大学当局も、研究用であり悪意のあるものではないとわかったことで、困惑しながらも「すんだことですから」と、ことを荒立てることはなかったようだ。

 ところで、このアルバイトには「チラシを見た」と40名ほどが応募したらしい。そして、応募者はK産婦人科の院内に設けられた個室で、備えられていたヌード写真集やアダルト雑誌のサポートによって「精子を採取」して提供したとのことだ。

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「精子求む!」チラシ事件を伝える当時の記事(『アサヒ芸能』)

 ちなみに、かつては謎の多い裏バイトとして知られていたものに、新薬の治験がある。以前はあれこれと噂が多かったが、現在ではインターネットなどで参加者を募集しており、「裏」というイメージはほとんど払拭された。だが、それでも「精子提供者募集」といった類は見かけることはない。現在も健康な精子は、以前と同じように個人的なつてによって集められているのだろうか。
(文=橋本玉泉)

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