韓国で始まった性犯罪者告知制度と世界各国の性犯罪者への対策

seihanzai0628.jpg※画像は『性犯罪被害にあうということ』/朝日新聞出版より

 韓国では今月21日、性犯罪者の告知制度が始まった。これは、性犯罪を犯した前科のある人物の情報(顔、名前など)を、性犯罪前歴者の居住区の近隣住民に告知するというものだ。告知の対象は未成年のいる世帯に限られているが、この類の情報はすぐに周囲に広まるだろうから、制限はあってないようなものだろう。このような制度を用いなければならないほど、韓国は「性犯罪の多い国」なのだろうか?

 1998年から2000年にかけて調査された、国別の犯罪統計(NATION MASTERより)のデータよると、世界で最もレイプ被害者の多い国は南アフリカだ。以下セーシェル、オーストラリアと続く。韓国はレイプの被害者数は世界で16位と、アメリカ(9位)やカナダ(5位)よりも下である。

 ただ、アジアのみで見てみると韓国が最も高い。その次がタイ(27位)、次いでマレーシア(37位)で、日本は54位だ。このように、世界的に見ると韓国の性犯罪が極めて多いとは言えないかもしれないが、アジアの中では断トツの1位である。韓国政府が性犯罪者の告知制度を採用したのも、外国に対してのこうしたイメージを払拭するためでもあるのではないだろうか。

 もっとも、性犯罪者の告知制度が制定されたのは韓国が初めてではない。たとえば、アメリカでは類似の制度が1994年から導入されている。その内容は州によって少しずつ異なるが、中には住居に性犯罪歴があることを示すしるしを掲げなければならなかったり、ホルモン治療を強制する州も存在する。

 また、犯罪者のデータはネット上で公開されており、誰でもアクセスすることができる。韓国よりも数段厳しい制度だが、もしかすると韓国も今後はアメリカのようになっていくのかもしれない。

 そして韓国では10年の6月にも、16歳未満の児童を狙った性犯罪者への強制的な薬事治療を行える法案が可決されている。薬事治療というと聞こえはいいが、簡単に言えば薬物を使った去勢である。ホルモン剤を投与することにより、性犯罪者の性欲を減退させるというものだ。

 これに類似した法案は他国にも存在する。たとえば、前出のデータでレイプ発生率世界29位のポーランドでは08年、国民の84%の賛成により、性犯罪者を強制的に去勢するよう刑法が改正されている。

 では、わが国ではどうだろうか。日本の場合、強姦罪による刑罰で最も一般的なものは3年以上の懲役である。窃盗罪などよりも短期で刑期を終えられる場合もあり、もちろん出所後のペナルティーもない。しかし、10年におけるレイプの再犯率は38.5%である。3人に1人以上が再びあやまちを犯すのだ。見過ごせない数字である。

 宮城県と大阪府では、性犯罪前歴者に対してGPS端末の所持を義務付ける条例が検討されている。これが可決されれば、日本で初めて性犯罪前歴者に対する出所後の対策がなされることとなる。

 ちなみに性犯罪前歴者に対しGPS端末の所持を義務付けている国は多い。アメリカでは半分以上の州で実施されており、イギリスやフランスなどのヨーロッパでも同様の制度がある。韓国でも、GPS端末を足輪にして性犯罪前歴者に装着することを義務化している。

 しかし、性犯罪者の告知や強制的な去勢、GPS所持の義務化は、性犯罪を減らすための効果的な制度であると同時に、「性犯罪者の人権を奪う」「二重刑罰だ」との非難の声も多い。

 それでも再犯率の高さや、性犯罪に巻き込まれた被害者やその家族の心情を考えると、今の刑罰のままでいいのだろうかという疑問も浮かんでくる。各国の対策やその結果を参考にし、日本でも性犯罪抑制のためのさらなる努力をしていくべきではないだろうか。
(文=高野夏)

『性犯罪研究』

 
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