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問われるは"表現物の権利"

どうなる電子書籍市場 "自炊"ストア誕生で著作権法が変わる?


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*イメージ画像:『デジタル時代の著作権』
著:野口祐子/筑摩書房刊

 iPadの発売とともに注目を集めるようになった電子書籍。しかし、Apple社が販売している電子書籍のラインナップには、世の男性諸君が望むような18禁の作品はない。そこでオススメするのが「自炊」。ここでの「自炊」とは自分で料理を作ることではなく、所持している書籍を裁断し、スキャナなどで読み込み、電子書籍を自作することを指す。

 行動力と資金がある人ならば、自分で機材をそろえて電子書籍を「自炊」することも可能だが、一般の人にはまだハードルが高いだろう。しかし、そのハードルを下げてくれるお店が1月21日から秋葉原でオープンする。その名も「自炊の森」。このお店では、電子書籍を「自炊」するために必要な裁断機やスキャナ、パソコンなどを完備しており、電子化したい書籍を持ち込むだけで誰でも簡単に「自炊」ができるようになっている。

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「自炊」は店舗内のこのような専用スペースで行う。

 昨年12月末に行われたプレオープンでは自分で持ち込んだ書籍を電子書籍化することができた。また、店内に陳列されていた少年コミックや青年コミック、18禁コミック、18禁同人誌なども「自炊」できたが、ネットを中心に「書籍を提供し、電子書籍化させるのは違法ではないか?」など、著作権保護の観点からの問題が指摘されていた。同人誌が著作権法の保護対象になりうるかどうかは議論の余地が残るものの、一般に流通している作品を著作権者の許可なく「自炊」用に提供し、対価を得ることを「私的複製」とみなすことにはかなりの無理がある。それでも自炊の森がプレオープンに至ったのは、問題が取り上げられるまでの間、「私的複製」に関する誤解があったからであることは間違いない。

「これは良くある誤解なのですが、私的複製をする為の条件としてオリジナルの本を自分で買う必要は無いのです。例えば、図書館内で設置されているコピー機を使って複製する行為も、友人から書籍を借りて複製する行為も法的に全く問題有りません。著作権法第30条に定得られている私的複製です」(同店公式Twitterのコメントより http://twitter.com/#!/jisuinomori)

 とはいえ、気軽に行える図書館内でのコピーも実際には厳密な規定がある。「資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの」という著作権法第31条の条文からも明らかなように、少なくとも自炊の森での「自炊」が法的に是認されるものではないだろう。

 こうした問題を踏まえてか、現在は「システム整備のため」プレオープンは終了している。自炊の森の広報担当者によれば、提起された問題点を是正したうえで、適法の範囲内での正式サービス開始に踏み切るとのことだ。そして、気になる正式オープン後のサービス内容は以下のようになる予定だ。

・お客様の本持込によるセルフ自炊サービスをメインサービスとして提供
・お客様がご自分で店内備え付けの裁断機を使うことも可能
・裁断後の本はお持ち帰り頂くか、もしくは無償で店側で引き取ることも可能
・引き取った本は「ブックアーカイブス」として店頭に展示・陳列し、店内で自由に閲覧可能

「基本的にスキャニング環境を提供することで対価を頂くことが主ですので、店内に置いてある本へのアクセスで対価を頂くシステムでは有りません。本の権利者への利益還元についても、版権者から連絡があれば個別に相談することも検討しています」(自炊の森の広報担当者)

 市販のCD-RやDVD-Rの場合は、音楽や映像コンテンツをコピーすることをあらかじめ見越して、著作権者に利益還元を行うための保証金が価格に含まれている。だが、市場がまだ確立していない電子書籍についてはそのような制度がない。「版権者から連絡があれば個別に相談する」という自炊の森の姿勢は、非常に紳士的な対応だといえる。というのも、ユーザーが自分で用意したマンガを電子書籍化する場所がどこであれ、それが適法であることは明らかであるにもかかわらず、法制度の穴をあえてかいくぐらないというのだから。

 しかし、大手出版社から自炊の森に対して、なんらかの圧力がかからないとも限らない。出版業界の人間なら著作権法に通じているかと言えばそうではなく、まったく無知な人も多いのだ(例えば、あるマンガ作品のコピーを本やサイトに無断掲載することが、法的に認められた「引用」の範囲内であっても、当然のように抗議がされるだろう)。また、作品を電子化することでインターネット上に流通しやすくなるという批判もあるようだが、それこそ法制度上の改善で対応すべき問題であり、自炊の森に抗議するのは筋違いの反応だといえる。

 電子書籍市場を生殺しにし続けている現状に一石を投じる試みとして、自炊の森の展開は今後も注視していく必要があるだろう。
(文=ホーリー)

【参考】
(私的使用のための複製)
著作権法第30条
第30条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一  公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

二  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

三  著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

2  私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

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