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女性のポルノ中毒が蔓延するアメリカ

51i6f0-2ozL._SS500_.jpg*イメージ画像:『現代ポルノ伝 先天性淫婦』 監督:鈴木則文

<アメリカ発>

 セックスに興味があるのは男も女も同じこと。しかしそんな興味が中毒症状になり、日常生活に支障をきたしてきたら、やはりそれは何らかの治療が必要だろう。AVやインターネットポルノ中毒、と聞けば、普通は誰もが男性の問題だ、とまずは思うはず。しかし、7月11日付のThe Washington Timesインターネット版によると、アメリカで行われたアンケートで、なんとアンケートを受けた女性のうち17%が、自分がポルノ中毒であることを認めているという。17%といえば、6人に1人以上の数字である。認めているだけでその数だから、実際はもっと多いことも考えられるだろう。2008年の調査によれば、アメリカではアダルトサイトの訪問者の約3人に1人が女性であるそうだ。

 女性のポルノ中毒者数が増加した理由として、インターネットの急速な普及、そしてアダルトサイトの進化がまず挙げられる。ポルノという云わば女性にとっておおっぴらに「興味がある」と言えない禁断の世界が、マウスをクリックするだけで手軽に見ることが出来るのである。
  
 女性がポルノを観始めるきっかけとしては、彼氏や夫が持っていたAVを観た、あるいは彼らが共通のコンピューターで開いていたアダルト向けサイトが偶然画面に出てきてしまった、あるいは、検索エンジンでリサーチをしていたら、突然そんなサイトに行ってしまった、ということも考えられる。マンネリ、あるいはストイックな毎日を過ごしている女性の目の前にそんな刺激的な画像が出てきたら、一瞬でも憑かれたように見入ってしまうのは人間として自然な行動といえるだろう。それがそこで終わるか、あるいは中毒症状と進化していくかは、その女性の性的なニーズによるのかもしれない。女性が実際の恋愛や性生活に満足していれば、インターネットのポルノに満足感を求める必要はあまりないと思われる。

 インターネットでポルノなんて見ているのは、昼間家にいる主婦だけだろう、などと思うのは大間違い。06年のインターネット・フィルター・レビューによるアンケートでは、13%の女性たちが会社でポルノサイトを見たことがあると告白している。おまけに、大学生を対象に行われたセックスのアンケートでは、女子も含む調査対象の学生の87%がインターネットを使ったヴァーチャル・セックスの体験者だという結果が出ている。

 まあ、ポルノを観ることが悪いとは言えない。それが現実の性生活でスパイスとなっている場合も多いにあるからである。しかし、ボストンにあるウィーロック大学のメアリー・アン・レイデン教授はこう言っている。

「ポルノを観れば観るほど、女性は『同意のないセックス(つまりレイプ)』の被害者になり得る場合が多い。そして、男性の場合は早い年齢からポルノを観始めるほど、同意のないセックスの加害者になりやすい」 

 つまり、ポルノやヴァーチャルの世界は一種のファンタジー(幻想)であり、日常ではない。中毒症状というものは、いわばそのファンタジーと日常の区別が薄れてくる、またはなくなる状態をいうのではないだろうか。そして、そんなファンタジーの世界にどっぷり漬かる男女は自分または相手を、温かい血が通い、精神的にも肉体的にも痛みを感じる生身の人間として扱わなくなる危険性がある、とレイデン教授は言いたいのではないだろうか。

 特に、ポルノ業界が驚異的な数字の利益を上げているかと思えば、その反面で宗教的なタブーも多いアメリカ。抑えつけられたセックスへの興味がひねくれた形で出てくる危険性も多いこの国には、精神的にも肉体的にも、意外と淋しい女性たちが多いのかもしれない。
(文=相馬 佳)
 

『1冊で知る ポルノ』著:デビー・ネイサン/原書房

 
解説は松沢呉一氏!

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