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コミケに行く前に予習しよう! コスプレの歴史 後編

コスプレ大衆化の一形態、メイド喫茶ブームの到来


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※イメージ画像 photo by SpirosK from flickr

前編はこちら)

 1980年代後半、コスプレの題材が多様化していく中で、メディアによって「オタク」と呼ばれ始めていたサブカルチャー愛好者たちを揺るがす一大事件が起こる。1989年の夏コミ直前に犯人が逮捕された、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件である。部屋に大量のビデオテープを積み上げた犯人がホラーマニアでロリコンのオタクと報道されたことをきっかけに、オタクの集まるコミケ会場にはマスコミの取材が殺到。見た目の分かりやすさから、露出が多かったり奇抜な衣装だったりするコスプレイヤーがオタクの象徴として、マスコミや世間の好奇の目に晒されることになった。この件が皮肉にもコミケの一般認知度を高め、オタクバッシングのさなかにもかかわらず90年夏コミ参加者は89年冬コミからほぼ倍増している。しかし同人ジャンル内部で、コスプレイヤーはただでさえ悪いオタクのイメージをさらに悪化させる戦犯と見なされた。

 加えて、90年には有害コミック規制問題が発生。91年2月には、摘発を受けた都内の書店で委託販売していた同人誌がわいせつ図画と見なされ、全国規模で同人誌が次々と摘発されていった。時を同じくして、89年冬コミ以降のコミケ会場となっていた幕張メッセからコミックマーケット準備会に対し、夏コミでの使用不許可が言い渡される。千葉県警にコミケで購入したとされる男性向けエロ同人誌が持ち込まれ、準備会と幕張メッセが事情聴取を受けたことを重く見たためと言われているが、存亡の危機に立たされたコミケは再び会場を晴海へ戻し、ひとつでもわいせつ図画と見なされる同人誌の頒布があれば即刻中止という厳しい条件のもと、サークルへの自主規制の呼びかけと当日の管理を徹底させてどうにか開催にこぎつけた。

 この出来事は、コミケでのコスプレにも影響を及ぼした。キャプテン翼から星矢、そして1989~90年にかけての『鎧伝サムライトルーパー』フィーバーに至る一連のやおい同人誌およびコスプレのブームのなかで、すでにアクセサリーや刀剣類などさまざまなアイテムが持ち込み禁止とされていたが、有害コミック規制問題は露出の自粛をもたらした。また、コミケ以外の同人誌即売会ではコスプレそのものを禁じるところが増加し、コスプレができる大規模なイベントはコミケだけ、しかもコスプレイヤーのマナーは低下する一方という「冬の時代」がしばらく続くこととなる。当時は『銀河英雄伝説』『機動警察パトレイバー』など制服系のコスプレを大人数で行うことが流行りだったが、後者も結果的に警察官・自衛官などの制服の着用制限につながった。

セーラームーンと格闘ゲームでコスプレ新時代到来

 1992年、世の中に『美少女戦士セーラームーン』ブームが訪れる。ほぼ同時に、『ストリートファイターII』の爆発的なヒットにより、90年代後半まで続く格闘ゲーム人気も到来した。この2つは同人ジャンルにも波及。前者は男性向けエロに久々に活気をもたらすと同時に、やおいブーム時代に顕著だった男女の棲み分けを崩し、女性同人作家が男性向けエロに参入するきっかけを作った。女性作家の参入は男性向けエロの絵柄センスを向上させ、さらに格ゲーブームは格闘ゲームのキャラクターデザイナーに影響された画力の向上をもたらす。男性向けではこの後数年で、同人作家の世代交代が急速に進んだとされる。

 そして両作品のコスプレイヤーも激増し、コスプレは冬の時代を脱した。1992年の冬コミには大勢のセーラー戦士、そして春麗(『ストリートファイターII』のキャラクター)が登場。このとき女性コスプレイヤーの参加登録数は男性の3倍以上にもなり、現在に至るまで女性優位の状況が固定することとなった。1994年の冬コミでは、コスプレ登録者数は各日で6000人を超えている。

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※イメージ画像(参照記事より)

 格ゲーブームと次世代機の登場により、ゲーム雑誌はファミコンブーム以来の創刊ラッシュを迎えた。各ゲームメーカーは自社製品のアピールのために、キャンペーンガールとして女性コスプレイヤーを起用。ゲーム雑誌にも頻繁に掲載されるようになり、あくまで趣味の一環にすぎなかったコスプレは商業メディアに進出した。このことは、既存のアイドルが自身のアピールとしてコスプレを行うことと、コスプレ専門雑誌が創刊されて一般コスプレイヤーがグラビアアイドル並に扱われることという、現在につながる両極端の現象に発展していく。

 また94年、後にキャラクターグッズ専門店ゲーマーズの母体となるブロッコリーがコスプレ人気に目を付け、コスプレダンスパーティー・コスパを開催。翌年には一部スタッフが独立してコスプレ衣装専門店・コスパショップを創業し、衣装の手縫いが基本だったコスプレの大衆化に一役買うことになった。

ギャルゲーブームからメイド喫茶ブームへ

 更衣室に入ろうとする女性コスプレイヤーが長大な行列を形成して語り草となった1995年冬コミを終え、1996年からコミケは現在の東京国際展示場に会場を移す。折しも『新世紀エヴァンゲリオン』の大ブームの渦中であり、同人誌・コスプレ共に性別を超えてエヴァネタで溢れかえることとなる。コスプレ登録者数がピークに達した97年にはついに、コミケカタログ上でコスプレが表現行為として規定された。長い間、あくまで同人誌即売会であるコミケのおまけでしかなかったコスプレが公式に市民権を得たのである。この時期、サブカルチャー関連企業が物販やPRを行う企業ブースの運用が本格化したことも無関係ではないだろう。

 エヴァブームを経た90年代後半のコスプレシーンで主力となった題材は、ギャルゲーや美少女ゲームだった。社会現象にもなった『ときめきメモリアル』(94年)や、恋愛ストーリーを重視して広範な支持を得た『ToHeart』(97年)は多くの女性ユーザを獲得し、コミケでもこれらの作品を題材とする女性同人作家や女性コスプレイヤーが増加。セーラームーン以来続く、ボーダーレス化に拍車がかかった。

 さらに、ファミリーレストランを舞台にした美少女ゲーム『Piaキャロットへようこそ!!2』(97年)も、可愛さを追求した絵柄とウェイトレス服で女性人気を得る。当時、アンナミラーズやブロンズパロットといったコスチュームに特色のあるファミレスがサブカルチャー好きの注目を集めており、マンガやアニメにしばしば引用されると同時に、コスプレの題材としても登場していたこともヒットの背景にあるが、ゲームに登場する数種類のコスチュームでもっとも人気が高かったのは、メイド服を大胆にアレンジしたものだった。

 『Piaキャロットへようこそ!!2』のヒット前後から、ファミレスものやメイドものの美少女ゲームが増え始め、それはマンガ・アニメなどサブカルチャー全般に波及する。前述したToHeartで絶大な支持を集めたキャラクター・マルチは「メイドロボ」という位置づけであったし、ゲーマーズのマスコットキャラとして98年に誕生し、後に批評家・東浩紀によって萌え要素の集合体として語られることになるデ・ジ・キャラットもメイド服を着込んだ少女だった。そうしたメイド人気を受け、99年の冬コミではメイドのコスプレが急増。同年には制服系オンリー同人誌即売会・コスチュームカフェも始まっている。

 『Piaキャロットへようこそ!!2』はもうひとつ、重要な副産物を残した。98年の東京キャラクターショーで、制作会社のF&Cは作中に登場するレストランを模した喫茶店を出店。ゲームのコスプレをしたウェイトレスが給仕し、大きな話題を呼んだ。いわゆるコスプレ喫茶の原点である。翌年には、秋葉原にあるゲーマーズスクエア店の一角にて「Pia キャロレストラン」が期間限定でオープンし、行列が絶えないほどの人気を集め、さらに2000年からは「カフェ・ド・コスパ」として常設運営を開始。01年にはウェイトレス服をメイド服に統一した「Cure Maid Cafe」に業態を転換する。秋葉原初となる、メイド喫茶の誕生だった。

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※イメージ画像(参照記事より)

 以後、怒濤のように訪れるメイド喫茶ブームは、コスプレの商業化の一形態であると同時に大衆化でもある。特定のサブカルチャー作品を題材としない制服、すなわち軍服や警官などのコスプレはコミケの初期から存在していたが、それらと同じく元ネタ作品を持たないながらも、この頃一般化した用語である「萌え」と結びついた「メイドさん」のコスプレは、コスプレ人気の果てに登場した新たな形態だった。

 なお、メイドさんと似たケースとして、アダルトビデオやイメクラなどの性風俗産業において特定のイメージを付されていた女子高生およびセーラー服が挙げられる。セーラー服やナース服、OLの事務服といった制服のコスプレは早い時期から性的な商品価値を帯びていたが、エヴァやときメモといったサブカルチャー界隈で、流行のコスチュームも「コスプレ風俗」としていち早く取り入れられていたのである。秋葉原のメイド喫茶やコスプレ店舗が時折風俗まがいのサービスを行っていたかどで摘発を受けるのは、コスプレや萌えの大衆化を語る上で象徴的な出来事といえる。

コスプレの浸透と拡散、そして......

 2000年代に入ってコスプレイベントが多数催されるようになり、コミケはコスプレイヤーにとって唯一の表現の場ではなくなった。依然として大きな流行は女性が担っており、『テニスの王子様』『機動戦士ガンダムSEED』『鋼の錬金術師』『コードギアス 反逆のルルーシュ』『銀魂』『ヘタリア』といった女性向け同人で人気の作品のコスプレが多い一方、エヴァやセーラームーン、果てはラムなど定番のコスプレも健在。最近は『涼宮ハルヒの憂鬱』やVOCALOID、東方シリーズなど男女を問わず人気を集めた作品も多い。コスプレの題材は多様化の一途をたどっていると言える。

 コスプレ雑誌は数誌が定期的に刊行されており、新作アニメやゲームをコスプレ衣装制作の観点からレビューするなど専門化が進んでいる。供給される作品にも、あらかじめコスプレのしやすさ・目立ちやすさを考慮したデザインが見受けられる。ブームを過ぎたメイド喫茶もまだまだ新規開店は続いており、秋葉原では数多くの店舗のメイドさんが、しのぎを削りつつチラシを配っている。

 その一方で、コミケではなくコスプレイベントから、あるいはニコニコ動画に投稿する「踊ってみた」動画のネタとしてコスプレデビューを飾る新規参入層も増えつつある。ネット上には自称・他称を問わずコスプレアイドルが乱立し、高校や大学の学園祭でも、メイド服やハルヒ、VOCALOIDなど、あるいはごく単純にセーラー服を着て女子高生のコスプレをした学生を見かけることは珍しくなくなった。コスプレはコア層が高度に産業化されるかたわら、裾野も着実に広がっているのだ。

 しかし、従来の文脈やマナーを知らない新規参入層がトラブルに巻き込まれることも多い。コミケではしばしば、原作どおりに露出度の高い無防備なコスチュームを身につけた若い女性コスプレイヤーがカメラに囲まれ、ローアングルから狙った盗撮まがいの写真がネット上に流布することも珍しくない。そのような事例が重なればさらなる表現規制を招きかねないことを自覚したうえで、コスプレイヤーも撮影者もマナーを守り、存分にコスプレを楽しんでいただきたいものである。

(文=有村悠)

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こんな既製品が流通するくらい、一般化してるってことなのかも

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