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<メンズサイゾー歴史探訪>

ヒット商品なのにまったく効かなかった伝説の精力剤!


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大阪朝日新聞/第17065 号、昭和4 年5 月21日発行より

 ダイエット商品と健康食品、それに精力剤、この3つには共通点がある。まず、何の効果もない製品が非常に多いこと。そして、効果がほとんどないものや意図的なインチキ商品であっても、爆発的に売れるヒット商品がしばしば現れるということである。また、商品や製品に限らず、「××健康法」といった類のものが大流行するのも、昔から変わっていない。何年か前に某テレビ番組が放送した健康法の多くがことごとくデタラメであったにもかかわらず、それが話題となり関連製品が売り上げを伸ばしたことをみても、いかに世の人々が「健康」という言葉に弱いかを物語っているだろう。

 「精力」という表現にも、同様に人を、特に男性を引きつける力があるようだ。そのため、効果のほどは不明な、というよりもまったく効かない「精力剤」が飛ぶように売れたというケースがいくつも見つかる。

 たとえば、戦前のヒット商品のひとつに「トッカピン」がある。現在でも同じ名称のドリンク剤が市販されているが、これはまったくの別物なので念のため。

 その戦前のトッカピンだが、販売を始めたのは避妊具を扱っていた丁字堂薬房。その経営者の菅波亀吉という男が、鎮静剤を主成分とした錠剤を精力剤として、「生殖器は元気精力の源泉」などというキャッチコピーで売り出した。

 その際、商品に「箔をつける」ために考えたのが、著名人の推薦だった。そこで菅波が目をつけたのは、陸軍一等軍医正で、退役後に東京で開業医をしていた医学博士の戸塚隆三郎氏であった。戸塚博士は菅波の依頼に、たいした効能もないが害にもならないと判断し、軽い気持ちで承諾した。

 それを受けて菅波は、「戸塚医学博士推奨」と銘打ち、商品名も博士の名をとって「トッカピン」と名づけて売り出した。広告には「飲んで夜効くトッカピン」といった、なかなか気の利いたキャッチコピーが添えられていた。

 やがて満州事変が起こると、軍部は「起てよ国民、守れよ満州」という標語を使うようになったが、これをもじって「起てよ国民、トッカピン」というコピーをつけたところ大当たり。「起てよ」という表現が精力剤のイメージにマッチしていたこともあり、たちまち話題となった。

 ところが、開発者でもなんでもないのに勝手に名前を借用された戸塚博士は大迷惑。古巣である軍部が「愚弄するのか」と激怒したという。そんな戸塚博士の困惑をよそに、トッカピンは飛ぶように売れた。そして、原価30銭のトッカピンを1円80銭で販売店に卸していたというから、菅波が大儲けしたことはほぼ間違いない。

 このほかにも昭和ひとケタの時代には、江戸時代からある「イモリの黒焼き」で大儲けした業者とか、「九竜虫」なるものがヒットして10年間で100万円、現在の価値に直すと十数億円を荒稼ぎしたという話が伝わっている。しかし、「効いた」というものは、ごくわずかでしかない。
(文=橋本玉泉)

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