ウホっ! なかなか可愛いじゃないか!!
女優の黒木華を幼くしたような雰囲気で若々しい感じだ。とても20代後半には見えなかった。
思わぬ拾いものをした気分でテンションが急上昇。今にもスキップしそうな勢いで待ち合わせ場所に向かう。
新宿アルタ前で待っていると、ほぼ時間通りにナツミちゃんらしき女性がやって来た。
ムムっ!?
一目見て違和感に襲われる。サイトで公開していた写真と何かが違う!
髪型はムーミンの“ミイ”みたいなお団子ヘア。サイトの写真でも同じ髪型だったのだが、輪郭があまりにも違うことに気づいた。
顔がムニョーンと縦に引き伸ばされている感じで、髪型と相まって“茄子”のように見えてしまった。
ああ、アプリ詐欺だな、コレ。
以前は出会える系サイトにプリクラ加工された写真を掲載する女性が多かった。しかし、最近はアプリで加工した写真を掲載するのが当たり前になっている。
プリクラ加工と違って、アプリの加工は実に自然な感じで出来上がる。それゆえ、加工されたものか否かを見極めるのはとても難しい。
素の状態のナツミちゃんの顔も嫌いではなかった。だが、サイトで公開されていた顔写真のほうがもっと好きだったのでガッカリしてしまう。
ここでナツミちゃんと目が合ってしまった。こうなったら後には引けない。
優しそうな笑顔を取り繕いながら近づき、声をかける。
「こんばんは。ナツミちゃんだよね?」
「あ、はい」
「さっき約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします」
「じゃ、早速だけど向かおうか?」
必要最低限の挨拶だけを交わし、すぐにホテル街へ向かって歩き出す。
やはりどうしてもテンションが上がらない。あまりにも写真との落差が激しかったので、愚息もずっと縮こまったままだった。
歩きながら世間話するものの、あまり盛り上がらない。
こういう時は道化を演じてでも場を盛り上げるのがトコショー流だ。しかし、騙された感を拭いきれないのでその気力もなかった。
安めのラブホテルに入り、狭いエレベーターで部屋に向かう。
な、なぬっ! こ、この匂いは!?
エレベーターが狭かったためか、彼女の体臭が感じられた。
甘ったるい乳酸菌飲料を少しだけ発酵させたような匂いとでもいえばいいのだろうか?
その匂いを嗅いだ途端、10年間ずっと片思いしていたT子ちゃんを思い出してしまった。
T子ちゃんは独特な体臭を持っていた。性格が良くて誰とでも仲良くなるコだったので、表立ってその事でからかわれることはなかった。
だが、中学の頃になると男子の間でその「匂い」のキツさが話題になったりもしていた。筆者が彼女を思い出す際は、その独特な体臭もセットになっていたのだ。
本来なら眉をしかめてしまうようなその匂いが、大好きだったのである。
最後にT子ちゃんと会ったのは今から30年以上も前のこと。それ以来、この匂いを嗅いだことは一度もなかった。そのT子ちゃんと似たような匂いを発していたのがナツミちゃんなのだ。
部屋に入ったところで思い切って聞いてみた。
「凄くいい匂いがしてるんだけど、何か香水とかつけてるの?」
「い、いいえ。今日はほとんどつけてないです」
「それじゃあボディソープとかリンスの香りかな? さっきからナツミちゃんの匂いにうっとりしてたんだ」
「そ、そうなんですか?」
「うん。ナツミちゃんは体臭を褒められたことないかな?」
「な、ないです、ないです!」
「誤解しないでね。いい意味で言うんだけど、俺ナツミちゃんのような体臭が大好きなんだ」
「か、変わってますね」
「正直に言うと、俺の初恋の人と同じ匂いがしてるんだ。小学校の時から10年間くらいずっと好きだった女性と似た匂いだよ」
「た、体臭ですかぁ。今まで指摘されたことはないです」
たしかにT子ちゃんよりははるかに弱い体臭だ。T子ちゃんが100だとすると、目の前のナツミちゃんは30くらいなものだろう。
それでも懐かしくて大好きな匂いだった。最初は縮こまっていたチンコがギンギンになっている。