美咲かんなエッセイ:ふしだらな気持ち「恋愛弱者の恋」

 

 ずっと男子に興味津々だった一方、前回のエッセイでも触れたように男女交際というものに対する想像力が一切なく、実戦にはめっぽう弱かった。「好きだからって手を繋いで歩くことに何の意味があるの?」と本気で思っていたので、想像力がないというより恋愛に関してはもはやサイコパスの域だったのかもしれない。

 結婚を前提としない交際に意味はないと、偏見の塊のような考えを子供のころからもっていた。これには多少両親の影響もあるのだろうか。つまり勝手に憧れて勝手に一喜一憂するだけのオナニストだったのだ。

 この経験を恋と呼ぶならば私は恋愛経験豊富ということになるが、きっとそうではないのだろう。エアコンなし部屋の彼(ふしだらな気持ち「夏が来れば思い出す」参照)との交際がなければ、冗談抜きで恋愛未就学のままAV女優になっていたかもしれない。私の恋愛事情を知っている君たちの「その程度で経験者ぶりやがって」という声が聞こえてきそうだが、都合よく聞こえないふりをしておこう。

 恋というものは自分本位で悪くいえば無意味なものだ。だからこそ人それぞれの価値が違って、熱くて美しくもなるのだ。例えオナニープレイでも勝手に舞い上がったり落ち込んだりするのは、きっと立派な恋だ。比べるものではないが、似ているようで全く違う愛というものは重たくて苦しい。

 ジェンダーやパートナーのあり方、生き方も多様になってきてはいるが、それでもまだ生物学上の異性の恋人がいないと周囲に心配されたり、結婚していないとビジネスで認められづらかったりする一面もあるようだ。

 私のように恋をせずモテない人間は恋愛弱者と呼ばれることもある。仕事柄それではいけないのかもしれないが、そんなに「メスです!」という生き方をしなくても人生はそれなりに心地良いのだぞ。仕事を真面目にこなし、丁寧に暮らそうと思うと、メンタルや体力の分配をどうするか考えないと常にギリギリになってしまう。

 恋愛は芸の肥やしだともいうけれど、そんなにタフな人間ばかりではない。暮らしの中で幸せを見つけて生きたい人もいるのだ。たまに恋をしてないなんて損をしているとか、人間性が欠けているみたいなことを言われることもあるのだが、是非放っておいてご自身の恋に邁進していただきたい。

 あと最後にこれだけは言わせてほしい。「恋」と「性欲」は同じではない。重なる部分もあるとは思うが、完全に同じとしてしまうのは浅い。いや、これまた君たちの「深く知っているみたいな口ぶりをやめろ」という声が聞こえてきそうだが、都合よく聞こえないふりをしておこう。

美咲かんな

【美咲かんな】
生年月日:1994年7月3日
スリーサイズ:T158・B85・W58・H88(cm)
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 美しい花には棘がある――。誰もが備える多面性を表現したこの言葉。特に男を惑わす美女には危険な一面がある、という男の自戒的な意味を表しているわけだが…。勝手に舞い上がって棘が刺さってしまうのは男のせいとも言える。美女は美女で悩むことも多いのだ。AV女優・美咲かんなも悩み多き美女のようで…。美しくもどこか陰のある彼女が、素直な気持ちをふしだらに綴る。

 犬の散歩に出かけた際、近所にひまわりが咲いているのを見つけた。今年は花見もせず、季節というものに鈍感であったが、犬の散歩は昼から夜へと変わり、半袖短パンでも寒くはない。ニュース番組では夏日だとか梅雨入りだとか、そんな話をしている。気づけば夏至もすぐそこまできていたのだ。

 6月某日、私は第3回目のエッセイの内容をどうするか悩んでいた。連載が始まってひと月も経たないというのに、既にスランプ気味である。どうにか絞り出した文章を打っては消し打っては消し、思い悩んでいると突然テレビから「うどんは青春の味」という力強い言葉が聞こえてきた。

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