「こんにちは。リンちゃんかな?」
「あっ、はい。そうです」
「さっきサイトで約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「はいっ! こちらこそお願いします」
ハキハキとした口調のリンちゃん。緊張している様子は一切なく、こういった遊びに慣れているように思えた。
「すごい人混みだけど、すぐにリンちゃんだって分かったよ」
「え?」
「大勢の中でオーラを放っていたからね」
「お、オーラですか?」
「うん。芸能人みたいにパワー溢れるオーラが見えたよ」
「なんですか、それ?」
「凛とした佇まいが目立っていて、目が釘付けになったんだ」
「そんな風に言われたことないですよぉ」
「いやいや目立つって。今日はここに来るまでに何人に声をかけられた?」
「えっ?」
「この人混みだったら、10歩ごとにナンパされたんじゃない?」
「それはないですって」
「そうかなぁ。俺がスカウトとかだったら、絶対に声をかけるけどなぁ」
「もう、褒め過ぎですよ」
「褒めてなんかいないよ。俺は正直者のショーちゃんって言われてるくらいなんだからさ」
「フフフ。面白い人ですね、ショーイチさんって」
「まっ、こんな感じの俺だけど平気かな?」
「もちろんですよ」
「それじゃあ、行こうか?」
こうして、ハチ公前から道玄坂を上ってホテル街へと向かうことになった。
それにしても本当にいい女だ。横目でチラチラ見ながら、浮かれ気分のロックンローラー状態になってしまう筆者。
だが、彼女を観察している時、ちょっとした違和感を覚えた。それは彼女の指先のネイルだ。
それはピンクとゴールドで彩られた派手なネイルで、水商売系の女性を思わせるケバケバしさだった。美形のリンちゃんには似合っていたものの、とても現役の女子大生には見えなかった。
そこでちょっとカマをかけてみることにした。
「学校は今年の3月で卒業なんだよね?」
「はい。その予定です」
「もう就職は決まってるの?」
「地元の会社に決まりました」
「それは良かったね。地元って遠いの?」
「千葉なんでそんなに遠くはないですね」
「そうなんだぁ。千葉なら渋谷とか新宿にも来やすいだろうから、遠いって感じはしないね」
「はい。でも、今みたいに気軽には遊べなくなりそうです」
「だろうね。社会人1年目だといろいろ気疲れしそうだよね」
「そうですね。ちょっと憂鬱です…」
どうやら本物の女子大生のようだ。社会人になることに不安を感じ、学生最後の時間で遊びまくっているコは少なくないのだ。