いつもの定型文を送信して待つこと5分。あっさり返信が届いた。喜ぶべきところではあるが、特に驚きはしなかった。ライバルが複数いようとも、こちらには勝算があったからだ。
“5分後でも数時間後でも待ち合わせOK”と“私の写メを送ります”のふたつがポイントだ。このキーワードさえ相手に読んでもらえれば、9割以上の確率で返信してもらえる。
筆者が出会える系サイト遊びを始めた15、6年前、女性に返信してもらえる確率は3割にも満たなかった。その打率の悪さを改善するべく、長年時間をかけてファーストメールをブラッシュアップしていき、たどり着いたのが現在のこのカタチなのだ。
さっそく写メ付きのメールを送ると、とんとん拍子で約束は成立した。
待ち合わせ場所は、渋谷のハチ公前。約束の10分前に到着した筆者は、近くの喫煙所に向かい、まずは一服。
タバコが苦手な女性もいるので、あらかじめ吸い貯めしておくためだ。急ピッチで2本吸うと、ミント味のタブレットを口内でころがしながらハチ公前に移動した。
おぉっ! イイ女がいやがるなぁ…。
ハチ公前はたくさんの人でごった返していたが、人目をひく美人を見つけてしまった。
し、しまったぁ!!
出会える系サイト遊びで見知らぬ女性と待ち合わせする際、その直前にイイ女を視界に入れるのは避けなければならない。そのイメージが脳内に残っていると、約束の相手との落差にガッカリし、ヤル気が削がれるからだ。
ん? でも、待てよ。
その女性を遠くから観察すると、着ている洋服がリンちゃんから聞いていたものと一致していた。
ってことは、アレがリンちゃんかよっ!!
ひとまず、その女性と目が合わないよう、迂回しながらゆっくり近づき観察する。
顔は、モデルで女優の新木○子を少し崩した感じ。スタイルは中肉中背だった。
どうか…、どうか彼女がリンちゃんであれっ!!
三四郎の小宮のように心の中で叫びながら、彼女に近づいていく。そして、目があったところで軽く会釈してから声をかけた。