10分ほど経ったころ、リオナちゃんから返信が届いた。そこから数通ほどメールをやり取りし、さっくり約束が成立した。
待ち合わせ場所は、池袋駅地下構内にある定番の待ち合わせスポット“イケフクロウ”の前。どんな女性が来るのかワクワクしながら待っていると、ほぼ時間通りにリオナちゃんらしき女性を発見した。
リオナちゃんは、女性芸人の“いとうあさこ”に似た感じのちょいポチャ体型だった。顔のほうはかなり地味で、翌日には記憶に残っていないくらい薄い印象だった。
まっ、可もなく不可もなしといった感じかな? 自分の不細工さを棚に上げつつ、ゆっくり彼女に近づき声をかけた。
「こんばんは、リオナちゃんかな?」
「あっ、はい」
「【イククル】で約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「は、はい。こ、こちらこそ、お、お願いします」
かなり緊張している様子のリオナちゃん。目はキョロキョロと泳いでいて、浮足立っている感じだ。
彼女は人妻なので、無理もないことだ。こんな人混みでは、知り合いに目撃されてもおかしくないだろう。
そう察した筆者は、必要以上に彼女に近づくことを避け、ちょっとよそよそしい口調で話しかけた。
「ここだと人が多いから、少し歩きながら話そうか?」
「は、はい」
こうして、イケフクロウ前から北口の出口階段に向かって歩き始め、人通りが少なくなったことを確認して少しだけ距離を詰め、小声で話しかけた。
「俺みたいなので大丈夫?」
「え?」
「もし嫌だったら、ここで断ってもらっていいんだからね」
「そ、そんなぁ…」
「大丈夫だよ。そのくらいのことで怒ったりしないから、無理しないでね」
「ぜ、全然平気です」
「本当に? ありがとう。じゃあ、このままホテルに向かうってことでいいかな?」
「は、はい」
地上に出て、ホテル街に向かって歩き始める。どこに人目があるか分からないので、リオナちゃんと一定の距離を保ち先導した。